033「どっかで見たことがある気がする-3」

さて、どうしようか?


「貴族様でしたか、気づかずに申し訳ございませんでした。これまでの無礼な態度をお許しください」


とりあえず、謝っておこう。


この2人は大丈夫だと思うけど、貴族なんて特別な階級の連中の地雷が何なのかわからないし。


「あまり畏まらないでください、わたくしも彼女も貴族とはいえ義務を果たしていない子供に過ぎませんし。貴方はわたくし達の命の恩人ですので」


「そう、気にしないで」


んー、2人ともそう言ってくれるけど。君らがよくても、君らの親とかが許さない可能性もあるんだよ?


まぁ、いまはゴスロリだし俺だってバレないきゃ大丈夫か。


「そうですか、わかりました。それで、どうして御二方は護衛も付けずにこのような場所に?」


そっちのが気になる。


「それは、ですね……」


「………………」


そんな困った顔されても、俺が困るんだけど。


あー、何となくわかった。これ、親とか護衛とかに内緒で勝手に出て来たってやつだろ。


「もしかして、ご家族や護衛の方に何も言わずに街に出て来たとかですか?」


「……………」


「……………」


当たったっぽい。


「どうして、わかったのですか?」


シャリスティア様が聞いて来るけど、普通わかるでしょ。


「貴族様のご息女様が護衛もなしに街を出歩いていたこと、衛兵の詰め所に行くことを拒否されたことから考えますとそんな理由かなと思いまして」


まぁ、割とテンプレだしね。


「しかし、この男達も知らなかったとはいえ貴族様のご息女を誘拐しようとしたのですよ?衛兵の詰め所に行けば正体が知られ、無断で出て来たことが知られてしまうのを嫌がるのはわかりますが、流石に見逃すことは出来ませんよ?」


というか、見逃したことがバレたら相当面倒なことになるので避けたい。


街の治安の為にも人身売買をするような連中は死んでないなら捕まって欲しい。


「ですが……その」


「行かなきゃいけない所があるの」


そう言われてもなー。


「あの、どうにかなりませんでしょうか?今日中に行かなくてはならない場所がありまして」


「おねがい」


何それ、面倒なんだけど。


「……………………わかりました。手だてを考えましょう」


あー、くっそ面倒だなこれ。


「ちなみに、どちらまで行かれるのか差支えがなければ聞いてもよろしいでしょうか?」


危ない所に行くとかだったら衛兵の詰め所に連行しよう。


「はい、それは大丈夫ですよ。レーラ様というエルフ族の女性の方が営んでいる薬屋を探していまして」


「その途中で襲われた」


………………………………………………いま、なんと言ったこの2人は。


「あの、もしかして薬屋の場所をご存知なのですか?」


「知ってるの?」


やばい、顔に出てたっぽい。


どうしよう、めっちゃ否定したいけど誤魔化す手段あるか?


知らないと答える……いや、いまの俺の態度からしてここで誤魔化すのは相当辛いし、この2人がこの後レーラさんの店にいって「ゴスロリ少女に助けられました」とか言われたら色々面倒。


というか、俺も店に行かないとこの格好じゃ孤児院に帰れないし。後から店に戻ったとこにばったり遭遇とかになったらもっと面倒だよな。


知っているけどこの男たちの処理がしたいから案内は出来ないと答える……あれ?そういや衛兵の詰め所に行ったら俺が女装してるのバレたりしない?


通報するだけなら誤魔化せたかもだけど、この状況で俺一人で行ったら絶対に細かく聞かれるよな。


保護者の呼び出しとか身分証の提示とかそういう事態になったらどうしようもないぞ。


…………………仕方ないか。


「…………知ってますよ」


こう答えるしかないよなー。


「本当ですか!よろしければ案内して頂けますか?」


「おねがい」


まぁ、そうなるよねー。


しかし、リアリス様?だっけ。ながもんみたいに一言二言しか喋らないね。髪の長さも表情があんま変わらないのも何か似てる。


それなら、髪の色的に竜が友達のサマンサなファッションブランドみたいな名前した娘のが近いかな?眼鏡はしてないけど。


さて、そうなると……まぁ、これしかないか。


男共をギタギタにする前に放り投げた服の入った袋を回収してと。


「失礼ですが、御二方は走るのは得意でしょうか?」


俺の言葉に不思議そうな顔をしてるけど、まぁいきなりそんなこと聞かれたそうなるよね。


「えっと、一応運動はしてますので走れなくはないかと」


「わたしも」


まぁ、貴族様の自己申告だからあてにはならんけど。それは知らん。


「では……申し訳ありませんが少しだけ今から走って頂きますのでご容赦下さい。先頭は自分が走りますので付いて来てください、レーラさんの店までご案内します」


あぁ、そうだ。


「それから、人目に触れるかも知れませんのでフードは被っていた方がよろしいかと」


ちゃんと注意しておこう、この2人の青い髪は目立つから俺が誘拐してるみたいに見られたら困る。


2人は微妙に戸惑いながらもフードを被ったのを確認してと、すまんね……ちゃんと説明するのが面倒なんだ。


手のひらに魔力を通し、空気を集めて圧縮したら上空にぶん投げて解き放つ。


爆音が辺りに広がる……やっぱ便利だなーこれ。


光も集められてらスタングレネードみたいになりそうだけど、音だけでも十分に使えるわ。


でかい音が鳴れば、ガレくんもガノくんも飛び出すしね。


今度、また魔物相手に使ってみよう。


あ、2人ともびっくりしてる。


「では、行きましょう」


2人に声をかけ走り出す。俺が走り出したのを見て2人は慌てて追いかけてくる。


「な、何ですかあれは!?」


「耳が痛い」


気にしないでよ、あれなら様子を見に衛兵が寄って来ると思ったんだから。


「後ほど説明致しますので、人が来る前にここから去りましょう」


まぁ、覚えてたら説明するよ。


それほど早いペースで走ってはいないので、2人もちゃんとついて来れてるっぽい。


このペースで走れるなら、レーラさんの店まですぐに着きそうかな。






しかし、スカートって本当に走りにくいのね。

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