031「どっかで見たことがある気がする-1」

「ねぇ、あの子すごく可愛くない?あんな服何処に売ってるんだろ??」


……。


「おや、可愛らしいお嬢さんだね。買い物かい?この街は治安はいいけど危ない所がない訳じゃないから気を付けるんだよ」


…………。


「あ、あの。もしかして貴族様でしょうか?当店では貴族様に満足いただけるような商品は…」


………………。


「一目惚れしました!俺と結婚して下さい!!!」


………………………。


「ママー、あのおねーさんすっごいかわいいーよー」


…………………………………。


もう、やだ。


何なんだろうか?何故にこんなことになっているのだろうか。


化粧をしたがるレーラさんから逃げ出して、着替えの服を買う為に街に出てみたらこれだよ。


俺だってことがバレないのは確かにありがたい、女装趣味があるみたいに言われるのはとてつもなく嫌だし。


それでも、割と常連になってる店の人とかから全くバレないのはどうなの?さっき突然プロポーズしてきた野郎なんて同じ孤児院出身で冒険者の先輩だよ??


何年も一緒に住んでた人にもバレないってそれはそれで悲しくなる。


まぁ、いいや…………服は買えたしレーラさんの店に戻るか。


ため息しか出ない。


服の入った袋を抱えて大通りから脇道に入る。


さっきからこっちをちらちら見てくる視線がうざいし、ここまでバレてないから大丈夫だと思うけど万が一にも俺だとバレたくない。


たしかに、ゴスロリ風の服はこの街だと珍しいと思うけど、そんなにちらちら見てこなくてもいいと思うんだけど。


夜になるまではレーラさんがかけた固定の魔法は効果が消えないし、店で大人しくしていよう。


店なら本も沢山あるし、調合の練習も出来るし。時間を潰す方法はいくらでもある。


そう思っていたんだけど……何、あれ?


俺の前方にはフードを被った女の子2人組を囲む見るからに粗野な感じの男たち5人組。


ナンパというには雰囲気が険悪だし、女の子たちは男どもから逃げるように身を寄せ合っているので……まぁそういうことなんだろう。


これはあれか、テンプレでよくあるやつかな?襲われそうになってる女の子を助けたらチョロインでハーレムルートに突入するみたいな。


……………面倒事は嫌だから戻るか。


現実は助けたらチョロイン展開になるほど甘くはないし、俺は異世界無双チート野郎でもないので助けてはあげたいけど助けられる保証はない。


怪我とかしたくないしね。


来た道を振り返る、いくら裏道とはいえ人の通りが全くない訳じゃないのによくやるよ。


ここから一番近い衛兵の詰め所ってどこだったかな?間に合うかわからないけど、せめて通報だけはしておこう。


「おい、待て!」


…………………なんで呼び止めるかな?素直に立ち去ろうと思ったのに。


「お、こいつも結構な上玉じゃねーか」


「だな、まだまだガキだが高く売れそうだ」


男のうち2人が俺の前に回り込んで来てぎゃーぎゃー騒ぎだした。


高く売れそうって、この街でまだ人身売買とかやってる奴いたの?外から流れて来たのかな??


他の街は知らないけど、この街は冒険者ギルドのギルドマスターが人身売買が大嫌いだから領主と共同で撲滅運動みたいなことやってたはずだけど。


レーラさんもギルドから頼まれて人身売買組織のアジトに突入して暴れて来たとか前に言ってたし。


「最近はいい商品に巡り会えなかったからこの街に来て正解だったな、いきなり上玉を3人も見つけられるとは」


「まったくだな」


ガハハハッと笑いあう男ども。やっぱり外からの流れ者だったのか。


どうしよ?これ素直に逃がしてくれなさそうだよね。


ちらっと女の子達を見ると男どもの言葉を聞いて震えているのか、さっきよりも身を寄せ合ってる。


んー、これどうしようかな。


買い物に行くだけだったし、この服装じゃ隠せなかったから武器とか持ってないし。


男達の実力がわからないから戦って勝てるかと言われたら不明だし。


まぁ、こんな人目がありそうな場所で堂々と誘拐しようとしてそれを話しちゃうような連中だから少なくても頭は悪そう。


向こうの3人も体格はいいけど、ニヤニヤしながらこっちの2人の話を聞いてるから同じく頭は悪そう。


素手と魔法だけだと、俺くっそ雑魚なんだけど?


レーラさんや冒険者の先輩達に戦い方を教えて貰ってるとはいえ、所詮俺は子供の体格だし。


俺の方に来てる男2人を相手にしてる間に向こうの3人が女の子達を人質にするとかやりそうだけど、それは別にいいか。


見たことも話したこともない他人だし、人質にされて怪我とかしても俺には関係ないし。


魔力はあるし、ユニークスキルを使った対人戦闘の実践訓練にしよう。


予想以上に強かったらさっさと逃げればいいし。


「よし、お前もこっちに来い」


対人戦で大事なのは、自重しないこと。


確実に殺すか、容赦なく潰す。


じゃないと、こっちが危ないから中途半端は絶対に駄目ってレーラさんが言ってた。


接続アクセス……炎を駆けろ」


ニヤニヤしながら俺を捕まえようと伸ばしてくる腕を指輪から変化させた刀で斬り飛ばす。


「…………え?」


おぉ、呆然としてる。


まぁ、男からすれば何も持ってなかったはずのゴスロリ少女がいきなり刃物持ってたらそりゃビビるよね。


腕を斬り飛ばすオマケ付きだし。


しかし、やっぱ綺麗に斬れるなぁーちょっと感動。


それじゃ、呆然としてるうちに数を減らそう。









体格差もあるし、人数差もあるから素直に襲われたら負けそうだし……ユニークスキルは魔力の消費が多いからね。

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