第7話 凱旋パレードへ
三鷹駅南口を大破させたフランキー・バオバオは、激突の衝撃で宇宙船からクッキーとおせんべいを握りしめたまま井の頭公園に吹き飛ばされ、園内にある「小熊の森」辺りで頭から地面に埋まっていた。
全国、いや全世界の期待を一身に背負い月の探索を行なってきたバオバオである。実際は何も出来なかったのだが、マスコミがそんなもん黙ってはいない。米国のCNNも特別クルーを井の頭公園に派遣していたし、国連事務総長も会いに来るという。そんなことも知らずにバオバオは地面に埋まっていた。
「体が埋まっちゃったぞ。しかも臭いぞ。ここはどこだ。深大寺か」
バオバオはかなり深く埋まっているようで、足をバタバタしてみたが、なかなか自力では出られそうもない。公園内はいまだ掃除が行なわれておらず、先日のクソは乾燥し、地面三郎が特別なお薬でも飲んだり、吸ったり、打ったりしていたのだろうか、アスファルトのように固まっていた。これではバオバオも固まって自力では脱出できない。
モグラのはったんは足をバタバタし続けているバオバオの近くに立って、しばらくその様子を眺めていたが、口を開いた。
「今後の予定だけど、聞こえてる? 先ず凱旋パレードね。その後、記者会見をして・・・」
「助けてよ、抜いてよ」
地面の下から微かにこもったバオバオの声が聞こえる。
はったんは手間のかかる奴だと思ったがパレードの時間も迫っているので、バオバオを地面から引っこ抜くことにした。大型のクレーンにロープを付け、それをバオバオの足に結びつけて勢いよく引っ張った。これを何度か繰り返しているうちにバオバオは少しずつ地面からその体を現わした。
「何てことしてくれたんだ! 埋まっちゃったじゃないか」
クレーンに吊されながら、空中でバオバオは叫んでいる。やはりクソまみれにもなっているようだ。ポロポロと落ちてくる。しかしことは急を要する。凱旋パレードに行かなければならないのだ。すっかり姿を現わしたバオバオはクレーンに吊されたまま、用意されていたオープンカーに上手いこと放り込まれた。
「取り敢えず行ってらっしゃい。話しはあとね」
はったんたちはオープンカーに乗せられたクソまみれのバオバオに告げた。
飾り付けられたオープンカーが走り出すと同時にアナウンサーはマイクでがなり立てた。
「市民の皆さま、本日は月の探索を終え、地球に帰還したフランキー・バオバオさんが、地元の皆さまにご挨拶に参りました! 只今より中央通り商店街にて、凱旋パレードを行ないます。ぜひ東は吉祥寺から西は三鷹まで、全国津々浦々の皆さまこぞってご参加下さい!」
バオバオはやはりクソまみれのままクッキーとおせんべいを握りしめ、オープンカーから、それはそれは大きく手を振っていた。
(つづく)
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