第2話 三鷹横断ウルトラ・クイズ事件

 極悪銀河団を一躍有名にした出来事があった。それ以来、西は三鷹から東は吉祥寺まで、ほぼ日本全国の住民が不安な日々を送っていた。

 ひとはその出来事を「三鷹横断ウルトラ・クイズ事件」と呼んだ。


「調布に行きたいかー、小金井にたどり着きたいかー」

 第三八回「三鷹横断ウルトラ・クイズ」は、例年どおり盛況に開幕した。今回の商品は、第三八回を記念して、住民たちが憧れて止まない「西東京ディズニーランド」の招待券と梅干し十キロである。


 予選会から多くの市民が参加し、勝ち抜いた精鋭十人での本戦が始まっていた。

「正解は、玉川上水です!」

 第三問目の正解が発表されたすぐ後のことであった。突然、会場にネズミに似た姿で、白と黒の服装に身を包んだ集団が押し寄せ、出場者のみならず司会者、応援の人々までも手当たり次第に捕まえては、次々にす巻にし井の頭池に投げ込んだのである。


 会場のパニックは生中継で全国津々浦々にライブ放送された。国連をはじめ国際社会もこぞってこの暴挙を批難したことは当然である。


 すぐさま捜査が開始され、数日後の警察の発表ではじめて「極悪銀河団」という言葉が世間に知られることになった。

 しかしこの犯行集団の名称が「極悪銀河団」という可能性が高いというだけで、その実体などはまったく明らかにされることはなかった。


 この出来事とは別に目前に迫る地球規模の危機「もっこ」に関する国際会議「もっこ25」が予定されており、その準備のために「もっこ諜報部」が様々な調査を行なっていた。

 その過程で諜報部は、ある重要な情報を得たのである。「もっこ」と繋がる者の中に白と黒の服装で、す巻の達者な者が含まれているという内容であった。そしてその親玉がニッキーと呼ばれるネズミのような生き物であるということであった。

 この情報は、すぐにモグラのはったんに報告された。



(続く)

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