第21話(第1章最終話) そして新たな物語へ
「今年も彼女出来なかった……」
大学2年生の夏休み当日、俺は自室で項垂れていた。男友達は居るのだが、彼女がまったく出来ない。すべては去年の俺がやらかしたからだ。
ちょっと大学で悪質な霊に取りつかれてた生徒を救ったのだが、どうもそれをとある女子生徒に見られていたのだ。
歩く広告塔のあだ名を持つその女にオカルトマニアという噂を流され、女子生徒がまったく寄り付かなくなった。
これはいかんと俺は男友達と対策を練ることにした。
するととある男友達が言ったのだ。『俺、金髪にすればモテる気がする!』と。
金髪になるだけでモテるはずがない。
だが、今思えば当時の俺たちは彼女が欲しい一心でおかしくなっていたのだろう。
俺は髪を金髪にしてしまった。結果は惨敗である。
どう見ても不良にしか見えないらしく、怯えられる始末だった。
しかも髪の色を変えたことで、今度はチャラい奴だと勘違いされたのだ。
すぐに黒く染め直したが、俺はしばらく立ち直れなかった。
変な噂が立つ前に出来た男友達がいなかったら俺は大学を止めていたかもしれない。
「夏の予定どうすっかな」
俺はため息をついてカレンダーを眺める。
またバイト三昧するか? その時だった。
何となくつけっぱなしにしていたTVが砂嵐に切り替わったのだ。
……なんだ? TV画面はしばらくそのままだったが、急にノイズが走ると人の姿が現れた。あれ? これって心霊現象か?
俺は一瞬身構えたが、すぐに警戒を解く。
なぜならテレビから飛び出したのは見知った顔だったからだ。
そこに居たのは貞代と奈々と佳代の三人だった。
『あ、お久しぶりです~。一年くらいですかね?』
『童貞のお兄ちゃん、元気してたなの?』
貞代は笑顔を浮かべると、俺に挨拶をする。
奈々は俺に抱きつき、佳代は俺の前に来ると頭を下げてきた。
こいつらだいぶ明るくなったな。
とりあえず、この三人がどうしてここにいるのか聞いてみるか。
「おい、お前ら一体何があったんだ?」
『おおっと! 時間がないんです! 玲也さん、私の姪っ子を助けて下さい!』
姪っ子? 誰だそれ? 不審に思って言ると奈々がスマホを見せて来る。そこには貞代を若くしたような美しい少女が写っていた。少しだけ影があるがそこらのアイドルよりも美しい。俺はスマホを受け取りながら尋ねる。
「彼女が貞代の姪なのか? 」
貞代は嬉しそうな表情で大きく首を縦に振る。
『ええ、可愛いでしょう? 私の姉の娘なんです。久しぶりに里返りしたら故郷がカルト教団の住処になってて。私の可愛い姪っ子が三日後の儀式で教祖に食われてしまうんです! もちろん性的に』
貞代の言葉に俺は驚く。性的な意味で食われるだと!?
穏やかじゃねえな。
『助けてください! あの子は私にとって大切な家族なんです。あんなペテン師の豚野郎に蹂躙されるなんて考えただけでも悪霊になりそうです』
貞代は悲痛な声で俺に訴えかけて来た。
もちろん助けるつもりだけど、なんかまた大変なことになりそうだな。
『お願いします。私の姪っ子、助けてくれたらあなたの嫁になってもいいって言ってるんですよ!?』
「……え?」
貞代は俺の肩を掴むと、必死の形相で頼み込んでくる。
だが俺の頭にはあるキーワードしか入ってこなかった。
嫁になってもいい……だと? そんな美味しい話があるはずが……。
『姪っ子ちゃんの許可とってあるの。このクソみたいな状況から助けてくれたら恋人になるって』
「え、マジで?」
『マジなの』
俺は貞代の姪っ子の画像をもう一度見る。確かに可愛らしい子だ。こんな子が俺の恋人になったら最高だろう。
この子が俺の彼女に? そう思った瞬間、やる気がムンムン湧いてきた。
「よっしゃ! 俺に任せろ! 絶対その子を助けるからな!」
俺が力強く宣言すると、貞代たちは笑顔でハイタッチを決める。
『ありがとうございます! じゃあ早速行きましょう!』
「ああ、案内しろ!」
カルト教団がなんぼのもんだ、俺が拳で全て解決してやる!
神社生まれを舐めるなよっ!
俺はまだ見ぬ恋人を求めて立ち上がると、貞代たちと共に部屋を飛び出した。
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