第17話 祭壇の写真
「なんか葛森が死んだみたいだけど……何か関わってるか?」
俺は留置場で葛森が変死したというニュースを聞いて振り返った。視線を向けると貞代たちは吞気にゲームで遊んでいた。もちろん俺が稼いだ金で買ったゲームだ。
お前らにも関係ある話なんだからもっと関心もてっつーの。
渋々と言った様子でゲームを中断した貞代たちはとんでもないと言った顔つきで俺を見つめる。
「いや、私達ではないですよ。そんな力持ってない事くらいしってるでしょ?」
まぁ確かに。では一体誰が? 服部さんの知り合い曰く、葛森は獣に食い荒らされたような死に様だったらしい。
葛森の死体は死因確認のために解剖された。
死因は出血多量によるショック死。なんと咬み傷は全て人のものらしい。
遺体は損傷が激しく、原型をとどめていないそうだ。
こりゃぁメディアが騒がしくなるだろうな。
留置所に獣がいるわけもない。そう思った矢先、俺はある可能性に思い至った。力のある悪霊による襲撃だ。しかし、貞代の話によるとマンション地下を彷徨っていた自我のない霊たちは全員成仏したとのこと。
元々呪いの祭壇の力で囚われていただけだったみたいだしな、彼女らに葛森を殺すのは無理だろう。
そうなると別の誰かが葛森に恨みを持っていて犯行に及んだと考えるのが妥当だろう。そう考えていると貞代がおずおずと手を挙げた。
「あのぅ、たぶんやったのって地下にあった祭壇そのものかと。ずっと様子がおかしかったので」
「そうなのか?」
俺が尋ねると、奈々や佳代もコクリと首を縦に振る。
葛森があれだけの邪念を纏っていたってことは相当強力な呪いのはず。
そこで俺には思い当たることがあった。
強い呪いであればあるほど代償や失敗した時のリスクも跳ね上がる。
なるほど、さては代償を払い損ねたな? 念のため確認しておくか。
「なぁ、奈々ってスマホ持ってたよな?」
『持ってるけどなんなの? まさか女湯を盗撮してこいとか? そんなこと言われても奈々は絶対に協力しないの』
「誰がそんなこと頼むかっつーの。そうじゃなくて祭壇の撮影とかしてないのか?」
『それならバッチリ撮影してるの。これなの』
そう言って奈々はスマホ画面を俺に見せてきた。
そこには、人骨で組まれた祭壇が映っている。これ見たことあるぞ。
たしか実家の除霊について行ったとき、土着の山神を信仰してる村で見たな。
たしか悪運で守られる術式だったか? でもあれは生贄に捧げた動物の骨で組む者だったはず。それに祭壇の組み方が杜撰だ。
これじゃ中途半端な結果しか来ない上に、下手したら呪いの反動が来るぞ。
しかも祭壇の様子を見るに、葛森はちゃんとした手順を踏み、儀式を行っている様子がないし、手入れも行っていないとみた。葛森がどんな邪神を信仰していたか分からんが、これじゃ生贄が遅れただけで怒り狂うタイプの奴じゃないか?
おそらく葛森は呪いの祭壇の代償で殺されたのだろう。
とりあえず今度実家に戻った時に聞いてみるか。俺は祭壇の画像を証拠としてスマホの保存した
「とりま、例の祭壇には近づくなよ?」
『いや、あんなのに好き好んで近づきませんよ』
『あれ……近づくだけで……気分最悪……』
『あれマジでファックなの』
思い出すだけで嫌なのか、貞代たちがげんなりとした表情を見せる。
この様子なら祭壇に魅入られてることもなさそうだ。
これで一件落着だな。俺はゲームに興じる貞代たちに背を向けて、夕飯のメニューを作り始める。
一時間後、貞代たちが俺のゲームデータを削除していたことに気づいた俺は貞代たちに久しぶりにアイアンクローを決めることになった。
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