第20話 支配された屋敷の中

 あたし達は屋敷に突入する。中にもモンスターがいてRPGのシンボルエンカウントのザコのように徘徊していた。

 だが、これはゲームではなく現実。しかも場所があたしの屋敷だ。


「人の家を勝手にダンジョンにして。招かれざる者には出てってもらうわよ」


 あたし達はすぐに掃討を開始しようと武器を構える。

 ホールの上から飛びかかってきたモンスターをあたしは聖剣で一刀両断。それで相手もあたし達を敵と認識したようだ。

 怪物達がぎらつく爪や牙を向けてくる。やる気があって結構な事だ。こっちも容赦なくやる気を出すことが出来る。

 でも、場所が場所だ。あたしは分かっていると思うが仲間の二人に注意を促しておいた。


「屋敷を破壊するような派手な技は使わないでよ。パパとママがショックを受けちゃうから」

「フン、家の者がそう言うのでは仕方ないな」

「お姉ちゃんがそう言うなら」


 二人とも武器を持ち変えた。こいつら分かってなかった。言っておいて良かった。

 さあ、戦闘だ。あたしが注意している間にも敵が包囲してきていた。近くの奴から掛かってくる。

 剣を振り上げて襲ってくるリザードマンを天馬が棒で叩きのめし、至近距離からの雷撃の呪符でとどめを刺す。

 集団で掛かってこようとするオークに美月が鎖を振り回してから投げつけて相手の足を封じ、ステッキで電撃を流し込んだ。

 順調に敵の数が減っていく。

 あたしは宙を飛んでくる蝙蝠のような悪魔を聖剣で斬って捨てた。

 倒したモンスターが消滅していく。異世界で力を失ったモンスターは自分の世界に還っていくようだ。

 この辺りの魔物はあらかた片付いた。


「初めて見る妖ばかりだったな。いや、お前の言葉で言えばモンスターだったか」

「もう妖でいいよ」


 相手の呼び名がどうあれ、あたしの屋敷を乗っ取ろうとする良からぬ害虫には違いない。やる事も変わらない。

 もしかしたら昔から現れている妖というのも正体は異世界のモンスターなのかもしれない。

 あたしには分からないけど。分かっているのは倒さなければならない存在だということだ。それで十分だった。


「お姉ちゃん、これからどこへ行くの?」

「お前の屋敷だ。お前が決めろ」

「そうね……」


 これから向かう場所を美月と天馬が訊いてきて、あたしは少し考える。

 セラに聞いた話ではボスを倒さなければ事件の原因は解決しないはずだ。ここがダンジョン化しているのかは知らないが、これほど大掛かりに来ているんだもの。ボスがどこかにいそうな気がする。

 ならばザコは無視してボスに一直線に進むべきだ。ここはあたしの屋敷だ。出来れば不必要に戦って荒らしまわりたくはなかった。

 だが、自慢ではないがあたしの家は結構広い。どこにボスがいるか分からない。あまり虱潰しには探したくないのだが。

 あたしが考えていると天馬が口を出してきた。


「まずはボスを倒しに行くんだな」

「そうだけど。何であたしの考えてる事が分かったの?」

「お姉ちゃん、口に出てたよ」

「やだ、恥ずかし」

「顔に出てたぞ」

「うわっ、恥ずかし」


 あたしは慌てて口に続いて顔を押えるがもう遅い。馬鹿らしくなって手を下ろした。

 天馬はため息を吐いてから気配を探った。


「向こうの方から強い妖気を感じるな」

「さすが陰陽師、頼りになる」

「お前でも気配を感じる事ぐらいは出来るだろう?」

「そうなんだけど。自分の家だからかな、上手く感じれない」

「ここにはお前に近い気が多すぎるのかもな。ともかく行くぞ」

「うん」


 別に天馬の選んだ道を断る理由はない。あたし達は彼の察知したそっちの方角へと向かっていった。



 階段を昇らず、廊下を先に進んでいく。ボスだからといって最上階にいるわけではないようだ。

 天馬のおかげで無駄足を踏まずに済んだ。

 彼は気配を探るのに集中しているので、途中で現れるモンスターはあたしが聖剣で斬り伏せていった。

 背後からいきなり来た奴を美月の吹き矢が射抜く。眠り薬が仕込まれていたようでモンスターはおねむについた。あたしがきっちり聖剣で止めを刺しておく。

 やがて辿り着いた。


「ここだな」

「ここか」


 そう言って天馬が足を止めた場所は屋敷の食堂の前だった。 

 両親や神様やセラと一緒にここで楽しく食事していた頃を思いだす。この大切な場所を占拠するなんて許せない。


「行くよ」

「ああ」

「準備はOK」


 もう戦う用意は出来ている。あたし達は扉を開けて中へと踏み込んでいった。

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