第27話 北京
隕石落下付近にいた船。
周りの景色に溶け込み、視認されにくくなっている。
光学迷彩の高度なもののようだ。
2隻の船で地球の調査に来たらしい。
お互いの船で連絡を取りながら、テキパキ仕事をこなしていく。
半日もしないうちに状況がわかってきた。
結果は最悪だった。
2隻の船は、太平洋上に集まりお互いの情報を照らし合わせ、頭を抱えていた。
「どうだった、そちらは?」
「こちらは最悪だ」
「そうか、こちらも同じだ」
半透明の生命体は言う。
「まさか5種族もが、この遊びに参加していたのか」
「そのようだな。 連邦議会は激怒するだろう」
「仕方ないな。 我々も正直に報告しなければならない」
「で、この星に来ている種族に警告は送ったのか?」
「あぁ、先程送った。 早急に実験を中止して、連邦議会に出頭するようにと」
「なるほど、ご苦労だったな。 我々も早速連邦議会に報告しなければな」
「そうだな。 後は指示に従おう」
半透明の生命体はお互いにうなずくと、仕事をこなしていく。
◇◇
<中国チベット国境付近>
本国から派遣されていた司令部があった場所に生存者はいないようだ。
50万人規模で派遣されていたはずだった。
半数以上が沈黙している。
司令部のあった場所にいた司令官が銃を持ち、意思もなく歩いている。
本国に帰れば、上級幹部に抜擢される内示をいただいていた。
誰もが戦場から帰れば出世を考えていたようだ。
派遣された後方部隊。
「前線とは連絡が取れないのか?」
「はい、全くつながりません」
仮の連絡所は騒がしくなってきた。
「全くどういうことだ。 たかだか小さな村を襲撃していたはずだぞ。 それが本格的な部隊を派遣して、その報告すら上がってこないとは・・」
「し、司令。 この映像を見て下さい」
連絡員がそういうと、途中で途切れるが前線の映像が流れた。
・・・・
・・
その映像を見たものは言葉を失う。
「え、映画じゃないのか・・」
誰ともなくつぶやいた。
我が同胞兵士が銃を発砲する。
ロケットランチャーも発射している。
爆発も確認できた。
だがなんだこれは?
その中から、手足のちぎれた人が歩いて来る。
銃を持っているものは乱射している。
駆けてくるものもいる。
頭半分無くなっていた人が迫って来て、映像が途絶えた。
連絡所内はしばらく静かになった。
「い、いったい何が起こっているんだ?」
司令は指示を与えることすらできなかった。
◇
<前線部隊地域>
黄色い服を纏った僧侶。
もはや僧侶と呼べるかどうか怪しい。
ほぼ骨の形に皮が張り付いている感じだ。
その僧侶の横で、白い光を纏った人らしきものが立っている。
その人物が僧侶を見つめ、言葉をかける。
「なるほど・・限界を超えましたか。 ご苦労様でした。 我々は帰らなければなりません。 装置を返してもらえますかな?」
静かに尋ねる。
僧侶は答えない。
答えることができないのかもしれない。
「・・・あぁ・・うぅ・・」
ただ
白い光を纏った人は言う。
「もはや意思まで失わせてしまいましたか。 申し訳ありません。 これはお返しいただきますね」
そう言うと、僧侶の首から黒く光る数珠を取り上げた。
白い光を纏った人は軽く一礼をして消えていく。
黄色い服を纏った僧侶は、そのまま動かずに本当のミイラになったのだろうか。
僧侶の身体から、黒い霧のようなものが立ち昇ると、僧侶は動かなくなった。
同時に戦場で今まで動いていた
現場で応対していた生きている兵士は、突然動かなくなった兵士に驚く。
だが、普通なら動かないはずのものが動いていたのがおかしいのだが、何だか変な感じがする。
「お、おい。 動かなくなったぞ・・」
「あぁ、そうようだな」
「お前、ちょっと確かめてみろよ」
「い、嫌だよ。 お前がやれよ」
「俺だって嫌だ。 とにかく、周りも確認してみよう・・」
現場の兵士たちは周囲を確認し出した。
たまに生きているもの同士での銃撃戦が始まったりと、混乱はあったがだんだんと落ち着いて来る。
結果、50万人派遣されていた兵士のうち30万人以上が死傷。
精神的に不安定になったものは多数出現。
その後、本国でも今回の力ずくの攻略を見直す結果となる。
世界各国からもかなりの避難を受け、今後の在り方を再考せざるを得ないようだ。
中国がそういったことを行うのはまだ先の話だ。
チベットとの武力衝突は沈静化しつつあった。
しかし、今度は北京付近でテロ発生というニュースが流れる。
◇◇
<北京付近のテロ現場>
何の予兆もなくショッピングビルが爆発した。
何かを標的とした感じではない。
しばらくすると、赤い警告灯を回しながら警察車両などが集まって来る。
装甲車も何台か派遣されている。
警察官は車両から降りて、爆発のあった辺りを警戒していた。
装甲車の上部に座って周りを見渡している人もいる。
その装甲車に乗った人の身体がいきなり真っ二つに割れた。
!!
そのまま装甲車の内部から炎が上がり、爆発する。
近くにいた装甲車に乗っていた兵士たちが驚いているようだ。
警察官の動きも騒がしくなる。
今度は警察官がバタバタと倒れる。
その倒れた近くに、赤い光る棒を持った人が立っていた。
金色の髪をなびかせて、ゆっくりと装甲車の方を見る。
そして静かにつぶやく。
「あなたたち、不浄なものですね。 人の自由を力で奪っている」
そういうと、またパッと消える。
男が消えると、死体が増え、車両がきれいに切断されたりする。
装甲車などもハッチを閉めて移動しようとするが、これもきれいに切断される。
その映像は世界に配信されていた。
北京付近でテロ発生の一報を受けた、各国のメディアが殺到していたのだ。
まさか、こんなタイミングで事件が起こるとは・・メディア関係者は思っていた。
公安当局も普段ならメディアを威嚇したり、排除するのだが、それどころではない。
本当にバタバタと仲間が死ぬ。
相手が見えない。
気が付いたらやられているという状況が続いている。
◇◇
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