伝説の魔物を連れた最強テイマーは外れスキル持ち!?~私だけ好感度が表示される鑑定で、みんなから好かれてます〜

空野進

1

 私はどんな職業になるのだろう……?

 普通の職業で良いんだけど、できればあまり危険のない職業が良いな。



 私、カエデは自身の職業を決める儀式である鑑定の儀を受けるために、他の子ども達同様に神殿の列に並んでいた。


 この世界では十五歳になると自身の力を見る鑑定の儀に挑むことが決まっていた。

 そこでほぼ全ての人が鑑定の能力を得ることができる。


 そして、自身に鑑定を使ってみて、その結果によって職業が決められていた。



 うぅ……、もし鑑定をもらえなかったらどうしよう……。



 過去に鑑定の能力を得ることができずに、別のスキルを得た外れスキル持ち……という人もいたらしい。

 もちろん、まともな職業に就くこともできずに、周りの人から嫌われて一生を過ごしたと伝えられている。



 せめて鑑定だけでも……。変な職業に当たったとしても鑑定だけはください……。



 必死に心の中で祈りを捧げていた。



 あと、魔物使いテイマーもやめて……。とても私にできる気がしないから――。



 魔物を仲間にしないとまともに戦えない職業である魔物使いテイマー

 一体も魔物を仲間にすることができない人も多く、不遇職として扱われる代表であった。



 不遇職と外れスキル、その二つだけはやめて欲しい。



 必死に祈りながら自分の順番を待っていた。



 そもそも鑑定によって表示されるのは主に三つだった。

【能力】【職業】あとは、【詳細】である。



【能力】は文字通り、自分の現在の能力を表すものである。筋力や体力、魔力など……。


【職業】は当人が最も向いている職業を表示してくれる。

 これで勇者や聖女などが表示されようものなら国を挙げて大騒ぎとなること、間違いなかった。

 ただ、これはあくまでも職業の適性なので複数表示される人もいる。


 そして、最後は【詳細】。

 これは魔力を使い、対象の情報を読み取る能力である。

 物や魔物限定で人や所有物は読み取ることができないが。



 万能すぎる能力ではあるものの、鑑定の儀を受けたものなら誰でも得ることができる能力なのでこのことを深く考えるものはいなかった。



 そして、ついに私の出番となる。



「次、カエデ!」

「は、はいっ」



 神官長に名前を呼ばれた私は緊張から、ぎこちない動きで前へと進む。



「魔法陣の上へ」

「はいっ!」



 金色に光る魔法陣の上に立つと、その瞬間に光りはより鮮やかに輝きを増す。

 今まで以上に明るく光る魔法陣の反応に私は目を丸くしていた。



 何が起きてるの? こんなこと他の人だと起こらなかったのに……。



 魔法陣の外に出るわけにもいかず、動揺してしまう。

 しかし、魔法陣の光も次第に弱くなっていく。

 そして、完全に消え去ったときに神官長が話してくる。



「これで鑑定の儀は終わりになります。実際に鑑定を使って、自分の能力と職業を答えてください」



 神官長の言葉を聞いた後、鑑定を使ってみる。




【ラウゴ・ユーグリッヒ】

好感度:♥♡♡♡♡

好きなもの:酒

嫌いなもの:鋭い人




 な、なにこれ? 好感度?



 目の前に現れたハートの記号を見て、首を傾げた。



「どうかしましたか? 表示された結果をそのまま言ってくれたらいいのですよ」

「えっと……、『ラウゴ・ユーグリッヒ』という名前と色の付いたハートが一つ、後は色のついてないハートが四つ、あとは酒? ですね」

「……何を言ってるのですか? そんな表示が――」



 神官長が訝しんだ表情を見せてくる。



「で、でも、確かにそのように書かれています」

「それに私の名前をどこで知ったのですか?」

「神官長の……名前?」



 首を傾げてみせると、神官長は不思議そうな顔をする。



「……そうですね。他に何か書かれてる言葉はありませんか?」

「えっと、好感度……と、好きなものと嫌いなものが書かれてます」

「なるほど……。つまり理由はわかりませんが、あなたには好感度の鑑定結果が表示されているのですね。……これではさすがに仕事を紹介するわけにはいかないです」



 この国では鑑定の結果を元に、仕事の斡旋をしている。

 それがないってことは、私無職!?



「そ、そんな……。困ります。それだとこれからどうしたらいいのですか?」

「そうですね……。お任せできる仕事といえば、自由業の冒険者くらいですが、それも職業がないと……。そうです! カエデ、あなたは魔物使いテイマーを名乗ってください。魔物使いテイマーを選ぶ人が少なかったのでちょうどよかったです」



 神官長は名案と言いたげに手元の紙に記載していく。



「ま、待ってください! わ、私、魔物と戦うなんてできないです……」



 私は同年代の中だと、少し小柄な体型の少女だった。

 もちろん魔物と戦ったことはなく、自身の力はかなり弱い。魔法も簡単な生活魔法くらいなら使うことができるが、それも魔物を倒すレベルではない。



魔物使いテイマーは魔物を倒す必要がありませんよ。魔物と交友関係を結んで、力を借りるという職業になります。まぁ、交友を結ぶ方法は戦うこと……とも言われていますが」

「――失敗したら殺されますよね?」

「……テイマーとしてこれから頑張ってくださいね。では次、カリナ!」



 私の質問を聞かなかったふりをして神官長が次の人を呼んでしまう。



 もうこれ以上話すことはない、ってことだよね。これからどうしたらいいんだろう……。



 まさか鑑定を得ることができずに別の力を得てしまう【外れスキル】を得た上で、不遇職である【魔物使いテイマー】になってしまうなんて思っていなかった私は肩を落としながら神殿を後にした。




◇◇◇




 鑑定の儀のあとは見習いとして住み込みで働くのが基本である。

 しかし、冒険者には泊まる場所などなかった。

 元々野宿も多い仕事なので、そういった意味合いもあって、固定の住居がないのかも知れない。


 ただ、私は今まで野宿をしたことがないし、できる自信もなかった。

 だからこそ、宿を確保する必要がある。



 そのためにはまずはお金を稼がないと……、ということで傷薬やちょっとした食料になるだろうとお菓子を鞄に詰めて、冒険者ギルドへとやってきた。



 自分の職業に納得できないはみ出し者の集まりである冒険者ギルド。

 当然ながら実力がものをいう世界で、依頼を達成できないと収入を得ることもできない。


 ただ、魔物使いテイマーである私ができるのはギルドの依頼しかない。



「できる限り簡単な依頼を選ぼう……」



 恐る恐るギルドの中へと入る。

 むさ苦しい熱気と酒の香り、騒がしい声が響き渡るギルドホール。



 しかし、私が入ると騒がしかったギルドが静まりかえり、冒険者の視線が向く。



 その雰囲気で自分が歓迎されていないことを理解し、鑑定で確認する。



 ……みんな好感度が低い――。

 やっぱり私のように戦えない子は求められてないのかな?



 少し居心地が悪くなる。

 すると、目の前に強面の冒険者が一人、立ち塞がる。



【ブライト・ラザクアッティ】

好感度:♥♥♡♡♡

好きなもの:子ども

嫌いなもの:強い人



 しっかりと鑑定結果が表示されていたのだが、その好きなものを見て目を疑ってしまう。



 えっと……この人、子ども好きなの……?



「おうおう、ここはガキの来るところじゃねーぞ! 早く家に帰りな!」



 好きなものを見たあとだと、この人が自分の好きな子供にそんなことを言うはずがないことはわかる。



 ……って、私は子どもじゃないよ!?

 ま、まぁ、この人から見たらまだまだ若いけど……。

 それよりも今の言葉……。ただ怒っているだけには見えないよね。むしろ、こんなところに来たらダメだと注意喚起してくれているのかも――。




「心配してくれてありがとうございます。でも、私にできる仕事はここしかなくて――」

「お前のようなクソ雑魚スライムにできる仕事なんてねーよ!」

「くそざこ……」



 思わず顔をしかめていた。

 しかし、その時に表示されている鑑定結果に変化が起こる。



【ブライト・ラザクアッティ】

好感度:♥♥♥♡♡

好きなもの:子ども

嫌いなもの:強い人



 あれっ? 好感度が上がってる?

 もしかして、私だと危険だからわざと厳しいことを言って注意してくれてるのかも――。



「ありがとうございます。私なら大丈夫です。……多分」



 頭を下げてお礼を言うと、ブライトが困ったような表情を見せる。



「い、いや、わかってくれるならいいんだ。気をつけてくれ」



 軽く頭を掻いたあと、ブライトは元の席へと戻っていった。




◇◇◇




 そのまままっすぐギルドの受付へと移動する。

 すると、受付の女性が心配そうな表情を向けてくる。



「あの……大丈夫でしたか?」

「はい、優しい方でしたので」

「優しい……ですか? いえ、それより本日はどのようなご用でいらっしゃいましたか?」

「えっと、初めてなんですけど、初心者でも簡単にできる依頼ってありますか?」

「それなら今はスライム討伐の依頼がありますね。これが一番簡単な依頼だと思いますよ」

「あっ、えっと……、討伐の依頼しかないのですか?」



 もっと簡単な雑用みたいな仕事でよかったのだけど……。



 思わず乾いた笑みを浮かべる。



「そうですね。ギルドに寄せられる依頼の多くは討伐系のものになります。やはり、ギルドに登録される方が戦闘職メインになってしまいますので」

「わ、わかりました。その依頼、受けさせてもらいます」

「かしこまりました。では、依頼の受領と冒険者登録も済ませてしまいますね」



 女性が紙を差し出してくる。

 そこには【名前】【能力値】【職業】という記載欄があった。



「えっと、私は能力値が――」

「大丈夫ですよ。そこは任意となっております。最悪お名前だけでも構いません」



 それは助かった。



 自分の能力値が分からないので、女性の言葉を聞いてホッとため息を吐く。

 そして、名前と職業だけ書くと女性へと紙を返す。



魔物使いテイマーの方でしたか。それなら討伐依頼は魔物を仲間にしていただくのでも構いませんよ。ただ、魔物の好感度を上げる必要がありますので、普通に倒すより難しいと思いますが――」



 あっ、そうなんだ……。

 まぁ、普通に戦っても倒せる自信はないけど……。

 それならまだ魔物を仲間にするほうが可能性はありそう。

 好感度を上げたら良いみたいだから、私の鑑定で調べていけば……うん、できる気がしてきた。



 グッと両手を握りしめて気合いを入れる。



「わかりました。頑張って魔物を仲間にしてきますね」

「よろしくお願いします。では、こちらがスライムの依頼書になります。スライムは町を出てすぐの草むらに出る弱い魔物ですが、気をつけてくださいね。あと、山の中には入らないでください。あの山は強大なドラゴンが生息しておりますので――」

「はい、ありがとうございます」



 私は頭を下げると依頼書を受け取る。

 そして、依頼書を詳しく確認しておく。



【スライムの討伐依頼】

 町近辺に現れたスライムを一体討伐してください。

 報酬:小銀貨一枚



 小銀貨一枚だと宿代にはならないかな。

 安いところでも小銀貨五枚はかかる。


 ただ、小銀貨一枚あれば馬小屋や倉庫のような場所に泊めてもらうことくらいならできる。

 うまく仲間にできるなら野宿だけはしなくていいみたい。



 改めて気合いを入れ直すとギルドを出て行った。



◇◇◇




 町の外へ出てくると周りを見渡していた。


 整えられた街道とそこから少し外れたところに広がる草むら。

 所々に木が生えており、遠目に山脈も見受けられる。



「どこにいるのかな?」



 直接戦わなくても仲間にすれば良い……と分かってから、私は少し心が晴れていた



「好感度が分かるから、仲間にしやすいもんね。これから私にもチャンスがあるかも――」




 足取り軽く草むらの中を歩く。

 すると、かなり背の高い草が揺れる音が聞こえる。



 ……ガサゴソっ。



 もしかして、スライムかな?



 音のした方へと近づいていくと、そこにいたのはスライムではなく、巨大なドラゴンが横たわっていた。



 な、なんでこんなところにドラゴンが!?



 思わず驚きのあまり後ずさってしまう。



 えっと、ドラゴンの生息する場所は山の方だよね?

 私、まだまだ山までは距離があるはずなのに――。



 青ざめながら、逃げる隙がないかじっくりドラゴンを観察する。


 ドラゴンはすでに傷だらけで、どうやら誰かに襲われて逃げてきたみたいだった。

 そして、かろうじて動いているのを見るとまだ生きていることがわかる。



 今なら逃げられる。に、逃げないと……。



 回れ右をしようとし、その状態で動きを止める。



 ……私は魔物使いテイマーだから魔物の好感度を上げて仲間にしないといけない。

 少し怖いけど――、最初はもっと簡単な魔物で良いのに――。



 そんなことを思いながらドラゴンが動けない隙に鑑定を行う。



【白龍王、ラティナ】

好感度:♡♡♡♡♡

好きなもの:傷の治療をしてくれるもの

嫌いなもの:魔王



 好感度に色がついていない……。

 魔物相手だと一から好感度を上げないといけないのかな?


 好きなものは……傷の治療をしてくれるもの?

 傷薬なら一つ、鞄の中にあるけど魔物にも使えるのかな?



 少し不思議に思いながら震える足を押さえながら、ドラゴンに近づいていく。

 すると、私に気づいたドラゴンがゆっくり体を起こす。



『人間、それ以上近づくなら殺すぞ!』



 既に瀕死の状態なのに凄まれると、体が硬直してしまう。

 直接脳に語りかけてくる感じだが、ドラゴンはどうやら人の言葉が分かるようだった。



「その……、傷薬を使いますか?」



 そっとドラゴンに傷薬を差し出す。

 しかし、ドラゴンは訝しんで傷薬を取ろうとしなかった。



『……何を企んでいる?』

「えっと、その傷を放っておけなくて――」

『……それだけか?』

「あとは私に力を貸してくれないかなって……。って、これは無理にとは言わないけど――」



 慌てて自分の言葉を訂正する。

 しかし、そんな私を見てドラゴンは思わず笑みをこぼしていた。



『面白い。面白いぞ、人間。私に対してそのようなことを言ってくる奴がいるとは。分かった、遠慮なく傷薬を使わせてもらうぞ』

「あっ、自分で塗れないよね? 私が塗ろうか?」

『うむ、よろしく頼む』



 時間を掛けてドラゴンの傷ができた部分に傷薬を塗っていった。




◇◇◇




「はい、これでおしまい。傷はまだ痛む?」

『いや、だいぶ良くなったぞ』

「それは良かった……」



 ドラゴンに向けて笑みを浮かべる。

 すると、ドラゴンは複雑そうな表情を浮かべていた。



『本当に助かった。このお礼は必ずさせてもらう』

「そ、それなら私の仲間に――」

『私にはまだすることがある。それが終わったら――』

「そう……なんだ。もし良かったら私が手伝おうか?」

『いや、私一人で十分だ。ではさらばだ、また会おう』



 ドラゴンはパッと羽を広げると改めてその大きさに驚かされる。

 そして、去って行く前に数値が変化しているか、鑑定で確かめる。



【白龍王、ラティナ】

好感度:♥♥♥♥♡

好きなもの:カエデ

嫌いなもの:魔王



 仲間にならなかった理由は好感度がまだ足りなかったからかな?

 でも、この好感度アイテム、私になってるんだけど?


 つまり、私が側にいたら好感度が上がるってことだよね?


 このドラゴンの復讐が終わったら仲間になってくれそう。

 強そうな魔物だし、これからの冒険者生活の力になってくれるよね。



 ドラゴンが去って行くのを見守った後、私は再びスライム探しを始めていた。




◇◇◇




 探し始めてからしばらく経つと柔らかそうな球体スライムが目の前に飛び出してきた。



「わっ、で、出た!」



 探していたとはいえ、突然現れたので驚いて怯んでしまう。

 その間にスライムが突っ込んできて、思わず目を閉じてしまう。



 ぷにっ……。



 柔らかい衝撃が襲ってくる。



 ……あれっ? 痛くない?



 どうやらスライムの柔らかい体を利用した体当たりは痛くもないようだった。



「こ、これなら……」



 その隙を突いて鑑定を行う。



【スライム】

好感度:♡♡♡♡♡

好きなもの:果物

嫌いなもの:塩



 お腹すいてるのかな?



 近くを見渡して果物ができている木を見つける。



「ちょっと待ってて。お腹すいてるんだよね?」



 ぷにぷに体当たりしてくるスライムに、なるべく警戒させないように笑みを見せながら優しく言う。


 すると、スライムは体を傾けて体当たりをやめてくれたので、果物を取るために木に登っていく。


 そして、数個果物を掴み取るとそのまま木から下りて、スライムに差し出す。



 目の前に置かれた果物と私の顔を見て、スライムは動きを止めていた。



「食べていいよ。君のために取ってきたんだよ」



 改めて笑みを見せるとスライムは嬉しそうに置かれた果物を食べ始めていた。



【スライム】

好感度:♥♡♡♡♡

好きなもの:水

嫌いなもの:塩



 一気に食べすぎたのか、少しむせるスライム。



「これ、水筒だよ」



 スライムに向けて水を差し出す。

 すると勢いよくそれを飲んで、ホッとしていた。



【スライム】

好感度:♥♥♥♡♡

好きなもの:遊ぶこと

嫌いなもの:塩



 次は遊んで欲しいみたいだった。



 ……食後の運動かな?

 どんな風に遊んだらいいのだろう?

 木の棒でも投げたら取ってきてくれるのかな?



 側に落ちていた木の棒を試しに放り投げてみる。


 すると、スライムは嬉しそうにそれを追いかけていく。

 そして、木の棒を頭の上に載せて嬉しそうに戻ってくる。


 それを日が沈み始めるまで続けていたらスライムの好感度が最大まで上がっていた。


 スライムの鑑定結果を見て私も思わず笑みがこぼれてしまう。



【スライム】

好感度:♥♥♥♥♥(MAX)

好きなもの:カエデ

嫌いなもの:塩



 これで好感度はマックスだよね?

 好きなものは私になってるし……。


 でも、ここからどうやって仲間にするのだろう?



 じっと見つめてくるスライムを眺めながら、首を傾げていた。



「えっと、私の仲間になってくれる?」



 その言葉を聞いたスライムは嬉しそうに私の周りを飛び跳ねていた。



 やっぱり仲間にするには好感度のハートを全部色つきにしないと駄目みたいだね。

 でも、このやり方なら私でも冒険者を続けていけそうかも。



◇◇◇




 無事にスライムをテイムし終えると疑問が浮かんでくる。



「スライムって、町へ連れて帰ってよかったのかな?」



 テイムしてあるとはいえ、魔物には違いない。

 さすがに町へ連れていくと問題がありそう。



 少し考えているとスライムが顔を覗き込んでくる。


 スライムを抱き上げると考えるのを一旦やめることにする。



「冒険者ギルドへ行ったらわかるかな?」



 スライムを持ったまま街の方へと戻っていく。




◇◇◇




 町へ入るには本当にスライムがテイムされているのか色々と確かめられた。

 そして、問題がないことを確かめられると町の中へと入ることができた。


 魔物が暴れた場合、その罪は魔物使いテイマーにかかってくることになる。



「町の中では大人しくしててね」



 一応スライムに注意だけはしておく。


 分かっているかどうかは分からないけど、スライムは笑みを返してくれる。

 その姿を見て安心した後に冒険者ギルドへ向かう。




◇◇◇




 冒険者ギルドに入るとその瞬間に殺気に襲われる。

 ただ、私が持っているスライムと分かるとすぐにその殺気を引っ込めてくれる。



 い、一体何があったの?



 震える体を奮い立たせて、なんとか受付へと向かう。

 すると、受付の女性が苦笑を浮かべていた。



「あははっ、災難でしたね。でも、冒険者の方も悪気があったわけじゃないんですよ」

「そ、それじゃあどうして?」

「魔物をテイムできる人なんてほとんどいませんからね。何万匹と戦って一匹できるかどうか、ですから。だから、いきなり魔物が襲いかかってきたように見えたんですよ」

「……魔物使いテイマーの方って少ないんですか? 確かに好感度を上げるのは大変ですけど……」

「魔物を仲間にするのは本当に命がけになりますからね。一匹も仲間にできない魔物使いテイマーの方も数多くいますよ。少なくともこのギルドには一人も所属している人はいませんね。だから本当に魔物を連れてるテイマーさんが来てくれたのでありがたいです」



 そこまで人がいないんだ……。

 だから神官長が私に勧めてきたんだろうな。

 でも、スライムだけでも驚かれるんだ……。

 もしドラゴンを仲間にして連れてきてたらどうなってたんだろう。



 私は乾いた笑みを浮かべるしかできなかった。



「それよりも魔物の討伐依頼ですけど――」

「では、依頼書を出していただけますか?」



 私は鞄の中からスライムの依頼書を取り出す。



「確認させていただきました。では、こちらが報酬になります」



 女性から小銀貨一枚を受け取る。

 あとは倉庫を貸してくれる人を探さないと……。


 そんなことを思っていると、慌ててギルドに入ってくる冒険者がいた。



「た、大変だ!! ドラゴンが……。それも伝説級の白龍王が攻めてきたぞ!!」



 その言葉を聞いて、ギルド内は慌ただしい雰囲気に包まれる。



「ど、ドラゴンが!?」

「逃げないと殺されるぞ!」

「Sランク冒険者を呼べ!」



 悲鳴や怒声が飛び交う中、私だけはそのドラゴンの名前に疑問を浮かべていた。



 白龍王って、たしか私が助けたドラゴンも同じ名前だったよね?

 それならどうしてこの町を襲ってきたの?

 もしかして、言っていた用事が終わって私の仲間になりに来てくれたのかな?



「そのドラゴンって、どこに出たのですか?」

「なんだ、このガキは? 今はそれどころじゃないんだ。あっちに行ってろ!」



 手で軽く追い払われる。



「わ、私も冒険者ですよ。こうやって魔物も仲間にできるんですから――」



 スライムを掲げてみせる。

 すると、男性は呆れた表情を浮かべていた。



「そんなスライムとは訳が違う。ドラゴンだぞ、ドラゴン!」

「わかっていますよ」



 笑みを浮かべながら返すと男性はため息を吐く。



「はぁ……。まぁ、お前も冒険者だから情報は渡してやる。東の山脈から向かってきている。もうまもなく到着するはずだ。だからさっさと逃げろよ!」

「ありがとうございます。早速行ってみますね!」

「だから行くなって言ってるだろう!!」



 男性の静止も聞かずにドラゴンが向かってきているという東の入り口へと向かう。

 逃げ惑う町の人たちが邪魔で向かうまでに少し時間がかかってしまったが――。


 そして、たどり着いたときにはすでに町の人たちとドラゴンが睨み合っていた。

 そのドラゴンを鑑定してみる。



【白龍王、ラティナ】

好感度:♥♥♥♥♡

好きなもの:カエデ

嫌いなもの:魔王



 やっぱりあのときに傷を治したドラゴンだった。



「ちょ、ちょっと待ってください。その子は私の――」

「危ないぞ、嬢ちゃん。早く離れるんだ!」

「いえ、私は大丈夫です! それよりもその子は私がテイムした魔物なんです!!」



 どうしてもドラゴンの側に寄れなかったので、思わずその場で叫んでしまった。

 すると、私を止めていた人がため息を吐く。



「そんなはずないだろう。テイムした魔物は通常の鑑定では、能力を調べることができない。これは直接人を鑑定できないのと同じで、その人の所有物と見なされるからだ。しかし、あいつはまだステータス表記が出ているぞ!」

「なら見ていてください」



 改めて私はドラゴンの前に移動する。

 すると、脳裏にドラゴンの念話が聞こえてくる。



『何をしにきた?』

「もちろん仲間になってもらいに来た」

『私は用があるといっただろう?』

「もちろんそれも手伝うよ。でも、町は襲ったらダメ!」

『そうか……。もう町の近くだったか。それは悪かった。ただ、私も襲うつもりで来たわけではない。私に傷を付けたあやつが襲ってくるからだ』

「あやつ……?」

『やつに仕返しをしなくては龍族の王としてメンツが立たないからな』

「その人は一体――?」

『あぁ、そやつはもちろん魔王だ!』



 ドラゴンがその言葉を告げた瞬間に周囲にとんでもない高密度の魔力が襲いかかる。

 そして、ゆっくりと小柄な少女が近づいてくる。

 ただ、不敵に浮かべる笑みとドラゴンや冒険者達を前にしても余裕すらみせているその様子に尋常じゃない力を感じる。



【魔王ミリス】

好感度:♡♡♡♡♡

好きなもの:甘いもの

嫌いなもの:子供扱いされること



 えっと、確かに魔王様だけど、甘いものが好きなの?

 ……本当なのかな?

 でも、このまま何もしなかったらこのドラゴンも町も壊されるよね? 相手が魔王なんだから。それならできることをしないと――。



 鞄の中から閉まっていたお菓子を取り出すと魔王に近づく。

 後ろから必死にドラゴンが止めてくるのが聞こえる。



『やめろ、カエデ! そやつの力は本物だぞ!!』

「くくくっ、なんだ、そなたは? そなたが妾の相手をしてくれるのか?」

「えっと、このお菓子、食べる?」



 その言葉に周りの空気が固まる。


 ……こうやって見てみると確かに不審者が子供にお菓子をあげているみたいだもんね。



「ち、違うよ。私は決して怪しいものじゃなくて――」

「……ふふふっ、そうか。妾も舐められたものじゃな。お主のような雑魚にこのようなことをされるとは――」

『カエデ、その魔王は私より能力が上なんだぞ! お前に相手ができるはずが――』



 あれっ? ドラゴンには私の能力が見えてる? 魔王にも見えてるみたいだし、そういった能力もあるのかな。



「えっと、私のような雑魚なら魔王様だと気にもしなくて良いよね? それよりも下々の者が献上品を差し出しているのに王ともあろうお方がそれを受け取らなくて良いのですか?」

「う、うぐっ……、確かにそれはあるな。……仕方あるまい。主の献上品、しかと受け取らせてもらうぞ」



 魔王は私からお菓子を受け取ると嫌々それを口に運んでいた。

 そう見えるようにしていただけで、実際は必死に笑みをみせるのを堪えているのだろうと予測できる。


 でも、周りの人には私がわざわざ魔王に嫌いなものを渡しているように見えているんだろうな……。



「うっ……、こ、この菓子は誰が作ったものだ?」

「えっと、私が家で作って持ってきたものだけど……」

「なるほどな。わかった、今日はそなたに免じて、このくらいにしておいてやろう。ドラゴンの小娘よ。そなたも助かったな」

『わ、私はまだ戦える……』

「やめておけ。そんな満身創痍で妾の相手が務まるとでも思ってるのか?」

『ぐっ……』

「それよりもそなた……カエデというのだな。さすが伝説の魔物使いテイマーだ。そなたの相手をするのは妾では骨が折れる。今日のところは退かせてもらうぞ」

「えっ?」



 なんか勝手に伝説の魔物使いテイマー扱いされてるし……。

 それに、周りの人たちが私を見て怯えてるんだけど……。



【魔王ミリス】

好感度:♥♥♡♡♡

好きなもの:甘いもの

嫌いなもの:子供扱いされること



 あっ、少し好感度が上がってる。

 もしかして、私と戦いたくないから退いてくれるのかな?

 それならこのまま好感度を上げたらテイムできるのかな?

 ……って、人はできないよね。



 苦笑をしながら魔王に対して言う。



「またお菓子を準備して待ってるね」

「わ、妾はそなたの菓子が食いたくてくるんじゃないからな! それだけは勘違いするなよ!」

「うんうん、わかってるよ。またねー」



 手を振って魔王を見送る。

 すると、魔王は転移魔法で一瞬のうちにその姿を消していた。

 魔王が消えたことで、完全に固まっていた町の人たちから歓声が上がる。



「お、俺たちは助かったのか?」

「あの子が魔王を追い払ってくれたんだ!」

「俺、見たぞ! あの子の率いた魔物達が魔王と対等に渡り合うのを――」

「伝説の魔物使いテイマーと言っていたな。とにかく俺たちは助かったんだー!」



 大喜びする人たちによって、花や紙吹雪が投げられる。

 そんな中、私はドラゴンに近づいていく。



「これで用は終わったよね? 今度こそ仲間になってくれる?」



 そっと手を差し出す。

 すると、ドラゴンはため息を吐きながら答える。



『全く、お前には勝てんな。良いだろう、私が仲間になってやる。喜ぶといい』



 ドラゴンが私の手に前足を乗せてくる。

 その瞬間にとんでもない負荷が手にかかり、あらぬ方向に手が曲がってしまう。


 一瞬何が起きたかわからなかったが、次第にその痛みを感じてくる。そして――。



「い、痛っ!!」

『か、カエデ……、大丈夫か!? 医者、医者……』

「念話で探しても誰にも聞こえないよ……」



 手を押さえながら脂汗を滲ませつつ、ドラゴンに言う。



『そ、そうであった。ならば、これなら問題ないだろう』



 一瞬ドラゴンが光に包まれたかと思うと、目の前には綺麗な青みがかった銀髪をした女性が現れる。



「早くお医者さんを!!」

「は、はいっ!!」



 突然現れた女性に凄まれて、近くにいた男は慌てて医者を呼びに行った。

 ただ、私はそのまま痛みのあまり意識を失っていた。




◇◇◇




 目を覚ましたとき、私は全く知らない家にいた。



「やっと目が覚めたんですね? お医者さんにはきっちり治療していただきましたけど、中々目覚められなくて心配でした」



 ……?? 誰だろう。この人……。

 目覚めたときには少し年上の女性が看病してくれていた。

 ――そういえば、あのドラゴン、私が意識を失う前に人に姿を変えていたような……。



「……もしかして、私の仲間になってくれたドラゴンさん?」

「はいっ、そうですよ。カエデ様に助けられたラティナでございます」

「……なんかずいぶんしゃべり方が変わったね。ほらっ、ドラゴンのときはもっと威厳があるような、尊大な感じだったけど――」

「あ、あれはドラゴンらしさを出すために無理して作っていたんですよ。こっちが自然のしゃべり方なんです」



 満面の笑みをみせてくる。

 とてもじゃないけど、その表情に嘘偽りがあるとは思えない。

 ただ、私が悩まなくても簡単に調べる方法があることを思い出す。



【白龍王、ラティナ】

好感度:♥♥♥♥♥(MAX)

好きなもの:カエデ

嫌いなもの:魔王



 本当にあのときのドラゴンだった。



「それでここは? ラティナが宿でも借りてくれたの?」

「いえ、ここはカエデ様が町の危機を救ったお礼に、と町長が譲ってくれた家になります」

「えっ!? ここって私の家なの?」



 ついさっきまで宿すら取れずに困っていたのに、いきなり家を手に入れてしまったようだ。しかも――。



「結構大きな部屋だよね?」

「そうですね。町外れにある分、家自体は結構広いですね。元の姿に戻っても大丈夫そうです」

「ははっ……、壊さないでね」



 元のドラゴン姿のラティナを思い出して苦笑を浮かべる。



「そういえば、ラティナの他にスライムもいたよね? どこ行ったのかな?」

「カエデ様の近くをうろちょろとしていたスライムですね。今はこの家の掃除をしてくれていますよ。スライムの特性上、動き回るだけで埃を取ることができますから便利ですよね」

「そ、そうなんだ……」



 戻ってきたときに埃まみれになっていないかな?

 後からきれいにしてあげないと――。


「それにしても、私の家か……。ちょっと前まで自分の能力もわからなくて、がっかりしていたとは思えないね」

「……カエデ様って自分の能力がわからなかったのですか?」

「うん、理由はわからないけど、私の鑑定だけ少しおかしくてね。好感度……が表示されてるの」

「も、もしかして、私がどのくらいカエデ様を好きなのかも表示されているのですか!? は、はずかしい……」



 ラティナは顔を真っ赤にして、頬を押さえていた。



 仲間になってもらう基準みたいなものだし、そんな恥ずかしがることなのかな?

 ラティナは既に仲間になってくれているわけだし――。



「それなら、もしかして私の能力値も見えていないのですか? 魔物使いテイマーなら本来は自分が仲間にしたものの能力値を見ることができるのですけど――」

「うーん、表示は変わらないね……」



 好感度がマックスと書かれているくらいかな。違う点は。



「わかりました。それならカエデ様に安心してもらうために私の能力値を教えておきますね」



 ラティナはテーブルに置かれた紙にいくつかの数字を書いていく。



【ラティナ】

種族:白龍

職業:王

年齢:312

筋力:568,471

体力:311,456

魔力:447,715

敏捷:356,842



 そこに書かれていた数字は桁がとんでもないことになっていた。



「えっと、これってラティナの能力値……だよね? あれっ? 普通の人の平均ってどのくらいなの?」

「そうですね。平凡な成人男性の方で大体十くらいと言われています」



 ……そう考えるとラティナって普通の人の数万倍強いの!?

 良く近づけたね、私。

 そこまで力の差があるとわかると戦うことなんてしないで、すぐに逃げていたよね。


 ――他の人は鑑定が使えるからラティナが町へ来たときに逃げていったんだ……。

 ここまで差があるなら近づくだけで無謀と思われても仕方ないもんね。



「ちなみに悔しいですが、魔王は私より数十万ほど数値が上になります」



 ラティナが口を噛みしめながら悔しそうに教えてくれる。

 その瞬間に部屋のドアが開く。



「なんじゃ? 妾のことを呼んだか?」

「……帰ってください!」



 ラティナが一瞬で部屋の入り口へと移動すると、思いっきり扉を閉めていた。


 すると今度は部屋にある窓から入ってくる。



「やれやれ、ドラゴンも人が悪いのじゃ。この妾が直接出向いてやってるのに」

「誰も呼んでいませんよ。何の用ですか?」



 ラティナが笑みを浮かべる。ただ、瞳の奥は笑っていなくてまるで魔王に対して火花を飛ばしているように見える。



「もちろん、カエデだったか? そなたに誘われたからじゃ」

「……私に?」



 誘った覚えなんてないんだけど……?



 思わず首をかしげると、魔王は慌てたように言ってくる。



「ほ、ほらっ、いつでも菓子を食いにこいといっておったじゃろ? わ、妾は別に食わなくても良かったんじゃが、主に必死に頼まれたからの。仕方なく来てやったのじゃ」



 そわそわした様子で、慌てふためく魔王。

 それを見て、ラティナがにやりと微笑んだ。



「私はカエデ様と一緒に住んでいますから、いつでもその手料理が食べられますけど、今食べられないと次いつ食べられるかわからない魔王は大変ですね」

「ぐっ……、ドラゴン風情が……。妾だって、妾だって……」

「もう、喧嘩しないで。魔王様も少し待っててね。今起きたところで何も準備ができてないから――」



 私が体を起こすと魔王は目を輝かせて頷いていた。



「あぁ、いつまでも待たせてもらう。い、いや、ドラゴンを服従させた主の力を見極めるのも妾の務めであるからな」

「そうだった……。魔王様も私の能力値が見えているんだよね? 私の能力ってどのくらいなの?」



 自分で見られない分、気になったので問いかけてみる。

 すると、何故かラティナが答えてくる。



「そ、その……、能力値が全てではありませんので――」

「教えて欲しいのか? 菓子の礼に教えてやろう」



 魔王はテーブルに置かれた紙にさらさらと文字を書いていく。



「ほれっ、これが主の能力じゃ」



 それを投げてよこしてくる。

 慌ててそれを受け取ろうとするが、さっとラティナに奪われてしまう。



「カエデ様はカエデ様だからいいのですよ。こんな能力値は見る必要がありません」

「でも気になるよ」



 必死にラティナから紙を取ろうとする。

 すると、魔王がそれを取ってくれる。



「少し書くのを忘れていた。ちょっと待て」



 更に魔王が追加で書いていく。

 そして、今度は手渡ししてくれたので、期待をしながらそれを見る。



【カエデ】

種族:人

職業:好かれる者テイマー

年齢:15

筋力:1

体力:1

魔力:1

敏捷:1


称号:伝説の魔物使いテイマー

   龍を従えし者

   最強の勇者



 ……ちょっと待って。この称号の部分って後から書き足した部分だよね?

 色々とおかしくない?



「そうですね。カエデ様ならこのくらいの称号を持っていてもおかしくないですよね」



 なぜかラティナが満足そうに頷いていた。



 いやいや、能力値の数字が見えないの?

 私、全部一しか書いてないよ?



「そうじゃな。このくらいの称号くらい持っていておかしくあるまい。我もカエデのことはこのように広めたからの」

「……えっ!? どうしてそんなことを?」

「当然であろう。我が直々に動くとなると龍王クラスの相手か、最強の人物……それこそ勇者でないと動けないのでな」

「えっと、それはどのくらい広まっているの?」



 魔王の側近に話したくらいならまだ――。

 そんなことを思っていたのだが、魔王は満面の笑みを浮かべながら答えてくる。



「もちろん全世界に向けて広めたに決まっておろう。……なんじゃ? 勇者より賢者とか聖女とかの方がよかったか?」



 魔王は横線で勇者の部分を消して聖女と書き加えていた。



「これでいいじゃろ。お主は名実ともに世界最強の魔物使いテイマーじゃ。ちょっと職業欄の表記はおかしいことになっておったがな」

「そんなことないよ。私は外れスキル持ちのただの魔物使いテイマーなんだから――」



 ただ、私の叫び声も空しく、ラティナや魔王の笑い声によってかき消されてしまう。


 まぁ、でもこれはこれで寂しくなくていいかな。


 私は再び喧嘩を始めていたラティナ達を見て、苦笑を浮かべていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

伝説の魔物を連れた最強テイマーは外れスキル持ち!?~私だけ好感度が表示される鑑定で、みんなから好かれてます〜 空野進 @ikadamo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ