ヴラド公が滞在した城 フネドワラ城

 15世紀のハンガリー総督フニャディ・ヤノシュが居城としたフネドワラ城は荘厳なゴシック様式の城だ。

 ヤノシュはヴラド公が師事した人物であり、ヴラド公はここに一時滞在していたことがあるとされている。


 城の外観はまさに我々日本人がイメージするヨーロッパのお城、といった姿で映画のロケにも使われている。入り口へ伸びる橋、オレンジ色の尖塔が並ぶバルコニー、堅牢な石造りの城壁が織りなす重厚な美しさはルーマニア随一。

 ゲーム「悪魔城ドラキュラ」はドラキュラ城への跳ね橋を渡るところがスタートラインだ。ゲームのイメージにも合うこの城は心底憧れだった。


 ここはやや西よりの僻地になるため、日本の団体ツアーではまずコースに入らない場所だ。ヴラド公に縁のある場所でもあり、写真を見てはその姿に憧れていた私は三度目のルーマニア旅行でようやく訪問を実現することができた。

 ちなみに、フネドワラは鉄の生産拠点として知られており、現地ガイドによれば公害がひどく、見るべき場所は乏しいということだった(英語ガイドなので訳は雰囲気)


 城を実際に目にしたときの感想、想像以上に素晴らしい。

 目の前に写真で見て憧れた城の姿がある、これはテンションが爆上がりだった。城は断崖の上、橋の下には小川が流れており、まさにファンタジー世界に登場する城そのもののイメージだ。


 橋を渡って塔をくぐると、中庭に出る。石造りのアーチの渡り廊下が続く中庭は、古めかしさと厳めしい雰囲気が相まって質実剛健な印象が良い。

 城内は石と漆喰で作られた部屋が連なっている。飾り気の無い中世の実用的な城という雰囲気だ。これだけの巨大な城を造るのに一体どれだけの煉瓦をくみ上げたのだろう、途方も無い話だ。


 地下通路や塔への渡り廊下は冒険心をくすぐられた。ヴラド公はここでどのように過ごしたのだろう、と想いを馳せた。

 しかし、がらんとした城内には暮らしを感じさせる調度品などはほとんどなく、ここで一体どんな暮らしをしていたのか想像するのは難しい。建物は保存状態良好に残されているが、廃墟という言葉が脳裏を過ぎった。






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