第4話 とある家族のお話

 宮虎 カナデ17歳

割斗高校に通う高校生二年生、我が家の娘。父は宮虎 ユースケ、軒並不動産勤務の会社員。

旦那は明るく娘は静かで冷たいが、性格はどちらかといえば母似である。


 宮虎 ルリ。

カナデの母でユースケの妻

彼女は口数少なく、全てを把握する。


「洗濯物取り込んで正解だったわね、じゃないと..全部食べ尽くされてた」

 カサカサとベランダに群がり牙でガラスを鳴らしているが、中へ入る事は出来ない。

「窓、替えておいて良かったわ..。」

こうなる事がわかっていたのか、そういえばガラスを先週突然張り替えてたっけ、狂言回し替わりましたカナデ。


「困り物よ。

〝こいつら〟は硬さに牙の鋭さを合わせてくる。岩なら岩の、人なら人の、だけどそれは想定の硬さ。ガラスを普通より硬くしておけば想定を凌駕して歯は通らなくなる。」

 引くほど詳しいよね、一体何者なのよ母さん。私どっちかって言うとあなたに似てるんだよね?

今のとこミステリアス&ダークよ。


「武器も無い今の状況じゃ護りに徹するのみ、ここは耐えるのよ」

「かーさ〜ん!!」 「え?」

 現れました世界と感覚の違う男、何を隠そう私の父で御座います。

「あなた!

ダメよ近付いちゃ、ベランダには沢山あいつらが..」


『ガブガブ』「ん?」

家の中の母さんを狙っていた牙虫達が一斉に父の方を向く。歯の硬さは人の硬度へ、光る眼はおじさんの顔へ。


「どけお前ら!

そんなとこで暴れたら庭が荒れるだろ手入れ大変なんだから、やめてよ。」

 ねぇ教えて母さん。なんでこの男と結婚したの?


「早く離れて..」「大丈夫だ。」

『ガブガブ』「お掃除の時間だぞ?」

肘がポテチの袋に手を入れるように牙虫をヒョイヒョイ口に入れる。

「そんな事をしても、同族同士は」


『ガ〜...ぺッ!』

「庭に吐くなってお前!」

知能は余り無いみたい、吐き出すのわかってて口に入れるんだから。わかってないんだろうけど。でも結果的に皆腹を噛まれて息耐えたよ。


「母さん無事か!?

ごめん庭は後で掃除するよ。」

「いいのよ。それよりあなたも部屋に入って、外は危険だから。」

「いや!

まだ会社にユキノちゃんを残してる、急いで様子見に行かないと。外の景色見てショック受けてるかも!」

身の危険とかじゃないの?

鈍感ていうかバカだよね、それもう。


「わかった、気を付けて。

私はここで身を護っているから」

 わかっちゃってるじゃん母さん、いいんだよちゃんと貶してもさ。


「ここから絶対出ないでね?

それじゃ行ってきます母さん!」

『ガブガブ!』

「怪我しないでね、ユースケさん。」

 ねぇ母さん、あなたはなんでこの男と結婚したの?


「不動産屋に急ぐんだ、今頃中で怯えて仕事が中々捗らない筈!」

『ガブガブ』

化け物のウロつく街道を平気で走ってられるのなんてこの人くらいだよね。

警察は何やってるんだろ?


「一体警察は何してるんだ!

これだけ町が荒れてるっていうのに」

 あ、おんなじ事考えてた。

ていうか町の異常には気付いてたんだ


「ユキノちゃん無事か!」

はいもう到着。

早いよね、地鎮祭のときもだけど。基本父さんは距離で決めるから、面接のときも言ったらしいよ志望動機で。

「家から近いので決めました」ってさ


「.....いない。」

ガラスは破られ、部下の姿は無い。受付窓口付近には脱ぎ捨てられた服が無造作に置かれている。

「ユキノちゃん、もしかして...」

痛々しい惨状は事態の深刻さを物語る


「風呂か?」

ちげぇよ、くだらねぇよマジで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る