第24話 母の都合が正義

 某ネットの記事で、傘の危ない持ち方というものを見て思い出した。

 母は、あの危ない持ち方を私に推奨したのだ。


 理由は私が背が極端に低いために、普通に持つと傘が地面に引きずられるからだ。


 だったら柄の部分ではなく、もう少し下を持たせるように教えればいいものを母はあの例の『危ない傘の持ち方』こそが良い持ち方のように教えた。


 母にとっては、私の後ろを歩く人の危険より傘を引きずって痛める事の方が問題だったのだ。


 そういった事のように、母は自分の都合が一番の正義というところが多々あった。


 なのでパートに行くようになっていた頃に、パチンコで調子がいいと、パートを休むというのが普通だった。


 母が一番長く務めたパートは繁華街にあるお寿司屋さんだ。

 勤務は夕方から夜9時くらいまで。


 なので朝からは普通にパチンコに行って、そのパチンコの当たり具合によってパートの出勤を行ったり、行かなかったりする。


 たまには大当たりしていても、そうそう毎日ではマズイと思ったのだろう、家に帰っていた私を呼び出して変わりにパチンコを打つように言われた事もあった。


 なのにこのお寿司屋さんで長く働けたのは、ここの店長さんもパチンカーで母の弟子みたいになっていたからだ。


 傘の危ない持ち方をさせた母は、原付に無免許で乗ろうというたくらみをし始めた。

 パパと離婚してから、車が無い生活の我が家。

 自転車だけでは不便だからと原付を買って乗ろうと母は計画しだしたのだ。


 けれど母は自分がバカだから免許を取るための勉強をしたって、受からないと。

 だからきっとバレないから、原付を買って無免許で乗ろうと考えたのだ。


 さすがにそれは私は必死で止めた。

 理不尽に怒られたがそれでも止めないわけにいかない。


 渋々母は、免許を取りに行く事にしたのだ。


 けれど試験に落ちた。

 一回であっさり諦めて、面倒くさくなったのか原付を買うというのも諦めた。



 私は母にあまり関わりたく無いし、母の法律で支配されるのなんてうんざりなのに、この頃はまだまだ被害を被ったり、嫌なことでも従ったりして生活を何とか続けていたのだった。

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