4日目お題 『紙とペンと⚪⚪』

紙とペンと⚪⚪


―――


 わたしは今、スマホを睨んで固まっていた。


 画面には『カクヨム3周年記念選手権』という文字が踊っている。その内容は、お題に沿って小説を投稿するというものだ。


 1日目はお題がわたしには難しくてスルーする事にして、後はお題を見てアイディアが降りてきたら書く事にした。

 すると早くも2日目の『二番目』というお題に、自分としてはまぁまぁのものが降ってきたから取り敢えず公開。たくさんの方に応援、コメント、レビューを頂いた。


 3日目は『シチュエーションラブコメ』

 シチュエーションラブコメって何!?わかんないからいいや。はい、スルーしました。


 という事で今回は4日目。


 ちなみにお題は『紙とペンと⚪⚪』


 わたしはもう一度画面を見て腕を組む。

 その時唐突にある記憶が脳裡に蘇った。



 それは十何年も前の事――


 わたしが初めて小説を書いたのは高校生の頃だった。誰が言い出したか定かではないが、友達数人で小説を書いて読み合おうという事になり、書き始めたのがきっかけだった。

 自分も書くし他の人の小説を読むタイプもいれば、読み専という人もいた。


 想像力豊かな若き頭脳は留まる事を知らず、毎日誰かしら小説を持ってきてはそれを回し読みした。

 その経験は今だから言えるが貴重だったと思う。友達が書いた小説の良いところを参考にしたり、或いは文章の上手さに悔しく思ったり。

 ライバル意識が芽生えた瞬間でもあった。


 今思えば小規模なカクヨム集会みたいな事をしていたな、と懐かしく思う。

 そして不真面目なわたし達はあろう事か、小説を書いたり読んだりするのを授業中にしていた。先生ごめんなさい……


 今はスマホでポチポチと小説を書いているが、その頃はルーズリーフに手書きだった。


 そんな中、悲劇が起きた。



 ある日の夜。わたしは翌日友達に見せる予定の小説をせっせと書いていた。二時間程集中して書いた後、休憩タイムにコーヒーを淹れた。

 ちなみにわたしはコーヒーを飲んでも寝れるという特技を持っていたりする。関係ないか。

 で、やらかしました。


 手がカップに当たって中身がさっき書いたばかりのルーズリーフに零れたのだ。


 それはもう絶叫です。


 ティッシュで素早く拭いたけれど、茶色くシミになってしまったルーズリーフは元の白には戻らなかった。念のため匂いを嗅いだら当たり前だがコーヒー臭い。

 数分悩んだ末、新しいルーズリーフとシャーペンを持って書き直しした。


 結局無事に書き終えて翌日意気揚々と友達に新作を見せる事が出来たが、振り返ってみると紙で良かったと一安心している。



 もし今、同じように手が当たったり滑ったりしてスマホが壊れたら……

 データが全部飛んでしまう。


 だからわたしは昔の二の舞にならないように、スマホを使う時はカップを遠く離れた所に置く事を教訓にしている。


 でも……



 たまには初心に返って紙とペンで書いてみるのも悪くはないかな。


 その時はもちろん、コーヒーに気をつけて。



 紙とペンとコーヒー



 皆さんも注意して下さいね。



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