猿って知ってる?

千島令法

A「ねえ猿って知ってる?」

B「いいや、知らねぇな」

A「そうなんだ。さっき隣の人から『猿って知ってる?』って聞かれたんだけど僕も知らなくてね。僕頭悪いから、あんまり知らないんだ。もし君が知っていたら教えて欲しいなと思ってたんだけど……」

B「そうか、知っていたら良かったんだが。悪いな」

A「ううん、謝ることないよ。気にしないで」

B「そうだ! じゃあ、詫びに隣のやつに聞いてみてやるよ」

A「え、いいの? じゃ猿が何かわかったら教えて」

B「ああ、ちょっと待ってろ」



――



B「なぁ猿って知ってるか?」

A「ううん、知らない」

B「そうか、お前も知らねぇのか。隣のやつから『猿って知ってるか?』って聞かれたんだけどな。俺頭わりぃから知らなくてな。もしお前が知っていたら良かったんだけどな」

A「役に立てなくてごめんね」

B「なあにいいさ。いつか分かる日が来るかも知れねぇからな。それまで気長に待つだけだ」

A「ちょっと待ってて。僕も隣の人に聞いてみるから」

B「おお、いいのか?」

A「うん、僕も猿が何か気になるし」

B「わりぃな、じゃあ宜しく頼む。分かったら教えてくれ」

A「うん、ちょっと待ってて」



――



A「ねえねえ、猿って知ってる?」

B「あ? 知らねぇな」

A「そう、いつだったか忘れたけど隣にいた人から『猿って知ってる?』って聞かれたんだけど、何なのか僕も知らなくて。僕頭悪いから。君が知っていてくれたら教えて欲しいなと思って」

B「悪いな、俺も知らねぇから教えてやることは出来ねえわ」

A「そっか、でも気にしないで」

B「ちょっと待ってろ。隣のやつに猿を知ってるか聞いてくる」

A「ほんと? ありがとう。分かったら教えて」

B「ああ」



――



B「なぁ猿って知ってるか?」

A「知らない」

B「前に猿に聞かれたんだけどな。あれ? 誰から聞かれったけな。俺頭わりぃから覚えてねぇや。ま、お前が猿を知っていたら良かったんだけどな」

A「ごめんね」

B「なあにいいさ。分かるまで人に聞いてみればいいだけよ」

A「ちょっと待ってて。僕も隣の人に聞いてみる」

B「おぉ、わりぃな。分かったら教えてくれや」



――



A「猿知ってる?」

B「知らねぇ」

A「そう、頭悪いから僕も知らない」

B「そうか」

A「うん」

B「俺も猿が何か聞いてやる」

A「お願い」

B「待ってろ」



――



B「猿って知ってるか?」

A「ううん」

B「そうか」

A「聞いてくる」

B「ああ」



――



A「猿?」

B「あぁ」

A「そっか……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猿って知ってる? 千島令法 @RyobuChijima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ