第40話 魔法の上手なネネ

 午後からは隊列を入れ替えて先頭をミツミが歩き斥候としての経験を積み、入れ替わりで俺が最後尾に移り殿しんがりを務めている。


「ミツミ、また速くなってる」

「はいっ、すみません!」


 ミツミの斥候としての仕事振りは問題なかった。

 曲がり角では止まり、金属のナイフを映りの悪い鏡の代わりに使い先の様子を探る等の基本を押さえた行動をきちんと取っていて、本人の資質や努力だけでなくレオーナ達の指導力の高さまで見えてくる。

 このナイフはこうして使うから必要だとレオーナに言われて、今さっき即席で作った物だったりする。


 それとは引き換えに、ミツミは問題行動も取っていた。

 無意識に男から離れたいと思っているので、移動速度が徐々に増していくのである。

 今も彼女だけ駆け足気味で移動したので注意されている。

 頑張れミツミ、心の中でだけ応援してるぞ、声に出すとまた早足になるからな。


 ミツミの外見は並人と同じ耳がない肉感的なバニーガールといった感じで、ピンクのロングヘアーをポニーテールに纏めた上下が逆さな瓢箪ひょうたんボディの少女だ、多分Eくらいで下へ行くとくびれてから並サイズ。

 年齢は転職石の斎に見たはずだが覚えてない、見た目からは17・8歳だと思われ、天職等の情報も記憶にない。


 ダンジョン内なのでアマルディアによる一言注意で終わったので冒険再開。

 ミツミは努力の人で、無意識に走り出しそうになる体を意識して時々止めて、姿勢を崩したり転けそうになったりしている。

 そして俺は曲がる攻撃魔法を使える様になった。


『攻撃魔法が曲がってる!?』

『攻撃魔法が曲がっている!?』


 上がエルネシア、ネネ、、アマルディア、ミツミの4人で、下が残りの3人の声だ。

 使えるようになればやり方は簡単で、2つの方法がある。

 1つは曲げたい左右逆方向に魔力を込める。

 片側の推力が上がれば、進むにつれて推力の弱い側へと曲がるのは乗り物の常識だ。

 ただし針の穴を通す様な繊細な魔力操作技術を必要とする。

 失敗すると自分や仲間に向かって飛んで来たりするからだ。


 もう1つは発動時に攻撃魔法全体に曲がれと念じた魔力を込めるだけ、ただしかなり詳細なコースイメージと大量の魔力が必要になる。

 魔法に余分に魔力を込めると強化される性質をコントロールしただけで、どちらかと言えば前者の方法がより難しい。

 当然恋人全員が、特にネネは熱心に聞いてきたので教えた。

 ミツミも興味はあったようだが近寄れなくて、遠くから聞き耳を立てていた。


 △△▽▽◁▷◁▷


「シクシクシクシク」


 凶熊倒して帰ってくる間とかの思考がクリアな時間に、帰って来てからも魔力消費の最後の時とかにちょこちょこ思考錯誤しながら何日も練習してきたってのに、この父が天使な美女は方法を聞いてから3時間で攻撃魔法の曲射を、俺以上にマスターしてくれやがった、それも難しい省エネの方法でだ。

 やり方のコツとか教えたっていっても覚えるの速すぎだろう。

 これだから凡人の努力は虚しくなるんだ、才能ある奴に軽々追い抜かれた瞬間に。

 まあでも、だからといってこいつ等食わせてくためにも止まれないんだけどな。


「シバさん勇者の効果で、怒りや悲しみの暗い感情にならないんじゃなかったんですか? 演技なんじゃないんですか?」

「ギクッ」

「自分でギクなんて言う人、始めて見ましたよ」

「2人共遊ぶのはその辺りにしておけ、先へ進むぞ」

「応」

「はーい」


 戦闘終了後に行う武具の簡易的な手入れ点検の間に、警戒は怠らずに泣きまねして遊んでたらエルネシアが付き合ってくれてレオーナに注意された。

 エルネシアは前線に着き、俺は殿を歩いた。


 そしてネネは緻密な魔力操作を覚えた事で、俺とは別の方法性から無詠唱による魔法使用を覚えた。

 オリジナル魔法の半数以上が生存に密着した魔法な俺に対して、ネネは未だオリジナル魔法ゼロ。

 今後全てを攻撃性能のある魔法にした場合、役割が完全に分かれる事になるだろう。

 魔法の同時発動数と魔力量による力押しの俺と、繊細な技術で魔法を行使するネネといった具合に。


 モンスターのグループが最大3体同時になった事で連携の確認と習熟優先になり、14階の獅子唐というライオン型のモンスターを相手に戦い続けた。

 曲がり角の先に向かってロックピラー魔力増し増しで使えば、迫る壁になって押し潰せて楽勝じゃねと思い付き実験してみるも、発動した瞬間に全体が同時に出現するので迫る壁にはならず、モンスターの手前までにロックピラーの出現する範囲は限定させられた。


「なるほど、そういう使い方の発想が」


 どうやらネネのヒントになってしまったらしい、今後の成長が楽しみな魔法使いである。

 夕方近くなったので冒険終了のお知らせ、ダンジョンワープで外へ。

 村で解散してミツミは女性用の家というか長屋に、俺達は自宅に帰った。


 △△▽▽◁▷◁▷


 夕食後の食休みで風呂に入る前の時間でネネに質問された。


「シバ君、もう1度シバ君のオリジナル魔法について教えてくれない?」

「ん、ああ。なら風呂を入れながら実践して教えるよ」

「お願いね」


 風呂場に移動してウォーターウォールで風呂に水を満たしてから、浴槽にアイスピラーを使い氷の柱を立てる。


「まず熱操作だが火と氷の属性を使って作られている、火の熱さと氷の冷たさを1つの魔法で自由に扱えないかと思ったからだ。だけどネネは熱操作や液体操作を覚えるくらいなら、考えてはいたけど生きるのに作っている時間のなかった大魔法を教える事もできるけど、どうする?」

「シバ君、私にその大魔法を教えてもらえないかしら。私はね村の役に立ちたいんじゃなくて、シバ君のために何かをしたいの」


 即答、ね。


「あいよ。魔法の名前は仮名だが現象操作と言う、1つの魔法のために8つの属性全てを使用するので当時の俺じゃ魔力操作が及ばなくて断念した……いや、俺の無念なんていいか」


 △△▽▽◁▷◁▷


 なぜ魔法は8属性なのか、水と氷なんて近いのに別の属性になっているものもあるのに、なぜ研究されなかったんだろうか?


 火は熱と光を生み出す。

 氷は水を冷したら固まった物で、熱くすれば水になって、更に熱くすれば霧になって風に紛れて消えていく。

 重力があるから飛び跳ねても地面に戻ってこれるし、体を動かしたり痛いと感じるのは小さな雷が体内を走り回っているから。


 文明レベル中世の生徒に小学生低学年からの理科を教えていく。

 ネネも全属性使いなだけあって魔法の効果については比較的簡単に理解し、物質の三態や神経、重力等への理解と納得も早かった。

 そして現象操作(仮名)ではこれら8つの属性それぞれが司るが、他の属性と複雑に絡み合っていたりする世界の全ての現象に干渉して意のままに操る、そんな魔法になるはずだったが完成に要求させる魔力操作技術がバカみたいに高かった。


 魔法の属性合成というのだろうか、魔法使用時に魔力が属性に変化して形を変えて発現するのだが、その属性になった段階で8属性全てをとどめたまま均一に合成して、さらに魔法の完成形もイメージしなければならなかった。

 当時は両手の先に魔力を込めるのが限界だったので、最大2属性までのオリジナル魔法しか作れなかったのだが、魔力操作が上手く攻撃魔法の曲射を3時間で覚えたネネならあるいは。


 だが流石に現象操作を風呂の支度の間に憶えられるわけもなく風呂は俺が沸かしたが、ネネは入浴前までは頭を悩ませ試行錯誤していたようだった。

 入浴のために裸になって恋人イチャラブタイムが始まったら、それどころではなくなったからだ。

 体格的に真正面にくる胸に吸い付きながら16センチになり、ネネの良い所に少し届く様になったのでヒィヒィ言わせた。

 良かったよなんて演技はさせない言わせない。

 顔も全身もグチャグチャになって気絶しても、また突いて起こして気絶して起こされてを繰り返す。

 1人目が気絶したら2人目と、全員順番に愛し合ったら気絶している1人目に戻ってきて。


 回復と状態回復を使っているので健康そのものなのだが、休日を2日にしてねる日と寝る日に分けて休む必要があるのかもしれない。

 村の生活が安定したらそうさせて貰おうかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る