第35話 新技はまだ仮名

「このような場所にったとはな、ダンジョンの影響か探すのに少々労した。おっとすまぬ挨拶が遅れたな、ワシは精霊女王、全ての精霊を統括する精霊神の現世での使いじゃ」


 突如、テーブルに美少女いや、美女フィギュアが現れた、いや違う精霊女王だ。

 背中側が開いてスカートの裾が広がったドレスを着た20センチにも満たない成人女性は、背中から鋭く透明な羽を何枚も持っている。

 あっ、ゼオラがイスから降りて平伏してる。

 まあその辺は個人の宗教感によるものだろうからほっとこう。

 そろそろ樹皮の在庫が尽きるな、森に取りに行かないと。


「それにしても今回はすまんかった。一部の部下には狂信者みたいに精霊神を崇める者がおってのお、使いのワシに対しても気味が悪いくらいに忠誠を捧げておるのじゃ。此度こたび(今回)のメッセージはそやつ等が勝手に内容を考えたものでな、精霊の総意ではなく個人の暴走じゃ。精霊を人と表すのはおかしいが、人間の言語の中には適した言葉がないのでな」


 あ奴等は相手を思っての行動なら何をしても許されると思っておるが、それなら殺しも許される屁理屈だと気付かんのじゃ等と、精霊女王の愚痴を聞く場へといつの間にか変わっていた。


 ダンジョンドロップの徳利に芋焼酎を満たして熱操作で冷やすと、お猪口に注いで精霊女王に差し出した。


「ダンジョンの品しかありませんが、どうぞ」

「おおこれはかたじけない、ぐっ重い」


 急遽体に合わせリサイズしたお猪口を渡して、最初のお猪口から掬って飲んでもらう。


「っかー、何でできとるかわからんが素材の味と香りが全身を突き抜けていったわい、もう1杯」

「この器を使って飲む時は一献と言うらしですよ」

「ではもう一献」


 その後、昼食を挟んで15時過ぎまで精霊女王との緊急親睦会は続けられた。

 なんか俺と精霊女王が友人になり、その恋人も友人なのでトイレに発つとよいぞと言われてからはゼオラも平伏を止めた、そしてトイレに走った。

 精霊女王では長いのでスーちゃんと呼ぶ事になったのだが、ゼオラはスーちゃん様と呼んで怒られていた。

 また来るぞと言ってスーちゃんは帰っていった。


 △△▽▽◁▷◁▷


 時間が惜しいので全員立たせて収納し村へと走る。

 村で家と収納している全員を出す。


「議論の時間はなくなった、レオーナとアマルディアには村人から希望者を集めふるいにかけて、ダンジョンで冒険させられるように訓練してくれ、木製の武具はこの木の箱に詰めておいたから訓練の一環とか言って運ばせてくれ。ゼオラとヴェルカは村長を選ぶか選ぶ方法を決めて村長を選出就任させてくれ、全員分以上の服と木と石とそれらから作った道具なんかも置いていく。エルネシアとネネは好きな仕事を、俺はダンジョンで周回してアイテムを集めまくる、解散」


 スーちゃんがまた来るとか言ってたし、テンプレートだと早くて今夜か明朝には来るから、今のうちから動き出さないと村作りがどんどん遅れていく。

 最初は1周したら村まで行って木と石と食料を置いて、次からは2周ごとに置きに行く。

 食料が充実したら日に1回にした。

 5日目、資材と食料の保管庫前にアマルディアが立っていた、ここで立ってたんなら俺待ちだろう。


「どうした?」

「今後の統治や訓練生の鼻を折るのに必要、来て」

「なあ、ぜってーもっと長い内容の説明で呼ばれたはずだよな?」

「シバは私達の頼みなら無茶でも聞いてくれる」

「いや確かに、可能なら聞くけどよ……」


 レオーナ、アマルディア、ゼオラ、ヴェルカの4人が俺の恋人になった理由は、多分将来性なんだろうなって思ってたりした。

 女は天性の役者と言うけれど、この無気力美女のアマルディアだけは嘘も演技も面倒だと思ってそうで、常に本心で居るんだろう。

 なので将来性だけで好きでもない男の恋人の演技なんて続けられるとは思えない。

 だからこそ、俺を恋人に選んだ理由がわからない。

 まあ俺は気遣いのできる男チキンなんで、無理に聞きはしないけどな。

 他の3人も付き合っていくうちに見えてくるものもあるだろう。

生きるためなら打算で妻になるなんて、地球じゃどの時代でもザラだったしな。政略結婚とかもそれの一種だよな。


 ダッシュで向かった先は村から西に約5キロの位置でここが今日の訓練位置らしい。

 村の周囲の平地には何もないので場所にだけは困らない。


「愛しい人よよく来てくれた」

「ああ、落ち着いたら目茶苦茶イチャイチャしてくれるなら構わないさ」

「なんだ、体を求めてはくれないのかな?」

「そっちは昼に2人してイチャついたんなら夜には自然とな。デートは昼に1人とだが、夜は6人の相手だから6倍頑張るさ。それで、呼び出した要件は?」

「目的は色々あるが説明はなしか後にしてくれ、シバそなたにしてもらいたいのはそなたのの強さを、その凄さを我等の目の前で見せつけてもらいたいのだが、頼めるか?」


 レオーナから来た注文は随分抽象的で具体性がなく、自分で考えて俺の強さをここで披露しろという訳のわからないものだった。


「オッケーマイハニー、全く理解できんが凄いと思わせればいいとは理解できた、まあなんか適当にやってみるよ」


 俺の凄さ……まずは魔法か?


「ロックタワー、ファイアボム、ウォーターボム、エアボム、ライトボム、ダークボム、アイスボム、サンダーボム」


 100メートルほど離れた場所にロックタワーを使い、そのロックタワーに向けて他の7属性のボムを使ってみせるが……反応が悪いな、8属性持ちだって聞いてたか?

 ならばと全員に1人ずつ回復、状態回復、浄化をかけていくが、やはり反応が。

 うーむ……何か他にインパクトのあるショーのアイデアはないものか……

 ……

 ……

 ……

 おっ、あれを使ってみるか!

 魔力増し増しにして。


「ロックウォール!」


 横100メートル以上、高さ300メートル以上、奥行き500メートル以上の超巨大ロックウォールが俺達の目の前に現れた。

 さらに。


「変……身!」


 凶熊に変身して見せてかーらーのー。


「重ね、全力の一撃ブレイブストライク死力の一撃ヒーローストライク、これが俺の、今最強の攻撃だぁぁぁ、ダブルインパクト!!(技名仮)」


 6腕による同時打撃がロックウォールに放たれると奥へと向けて衝撃が走り、巨大ロックウォールは半壊した。


 今度こそ訓練生? 達は驚愕に目を見開き固まっていた。

 その顔が滑稽て満足したので、疲れたし今日は休みにしようと思った。

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