前のエピソード――3.ちょっと悔しい

　なになに、「メールをくれてありがとう！　そうね、じゃあ美味しい日本食が食べたいわ！」だって。相手があなたの意図を汲んでくれてよかったわね。これは救われたわよ。少なくとも、彼女もあなたに好意があるんじゃないかしら。

　それにしても今時『日本食』だなんて言われてもねぇ。お寿司も懐石料理もいいけど、ラーメンだってカレーだってスパゲッティだって日本人好みの味付けだもの、本場のものとは違うのよね。ま、あたしは食べたことないけど！　なんてったって翻訳ソフトだもの！

　さぁこの子は一体なんて返すつもりなのかしら。これだけ分かりやすいキーワードを入れてくれたんだから、いいお店を紹介しないと男が廃るわよ。

　……………。

　あたしも先が気になるから、早く文字を打ってくれないかしら。この待っている時間っていうのは本当に焦れったいわね。メールをやりとりする人間たちもこんな気持ちで返信を待ち望んでいるの？　あたしは求められた時だけ能力を発揮するタイプのオンナだから、待つのには慣れているけれど、それでも焦がれちゃうわよね～。

　相手の気持ちや感情なんかも、人間は気にするでしょう？　シンプルに書かれた文字だけに一喜一憂した後に、それが書かれた裏側まで想像したりしてさ。人の気持ちって、一筋縄ではいかないのね。

「ここなんてどうですか？　日本っぽいかなと思うんですけど」

　やっと来たわね。まったくもう、消極的なんだから。あなたがどれだけ調べたかはポップアップで出てくる広告の多さでお見通しよ！　めちゃくちゃがんばって調べたんじゃないの！　努力が必ずしも報われるとは限らないけど、やった努力は決して無駄じゃないわ。あなたの持てる時間を使って一生懸命調べた結果のお店なんだから、もっと自信持ちなさいよ！