幕間 忘れえぬ記憶
「ねぇ、何してるの?」
その少年に声をかけられた時、慶太は散らばったプリントを集めているところだった。中には踏み潰されたのか、黒く
その少年には見覚えがあった。隣のクラスの
「えっと……こ、転んでプリントばらまいちゃって……」
苦し紛れの言葉にも、彼は
「キミ、小杉慶太くん?」
「え、あ……そうだけど」
「やっぱりね」と
「い、いいよ! おれ一人で出来るから!」
「俺がやりたいからやってるだけ。だから気にしないで」
気にしないでと言われても、とても気になる。もしこの場面を『彼ら』に見つかってしまったら、次のターゲットは彼かもしれない。
「あ、あの、」
「俺がイジメの
「じゃあ、俺がいじめられたら、いじめられっ子同盟でも作ろっか」
「え?」
「ほら、同じいじめられっ子同士、話盛り上がりそーじゃん」
とんでもない提案だ。
だが、そのとんでもない提案に、
話をする分には、ただなのだから。
*
「……ただいま」
「おかえり、慶太。今日は随分と遅かったな」
「散策してた」
「そうか。楽しかったか?」
「……まぁまぁ」
祖父は必ず、慶太のことを聞く。それは仕方のないことなので、特別不満はない。祖父がどう考えているのかは知らないけれど。こんな子供をよこして、とでも思っているのだろうか。他人の心を読むことなんて出来ない慶太は、他人の考えそうな内容を想像することくらいが
ふと、今日行った空想博物館のことを思う。祖父母に言っていいのかどうか分からない。主は「久方ぶりのお客人」と言っていた。と、言うことは、普段は人が入らない場所なのだろう。それを考えると、二人に話す気にもなれず、夕飯を食べて自室とあてがわれた部屋に入った。
空想博物館、ピクシー、シルフィード、ノーム、サラマンダー、アルラウネ、雪虫にスネグーラチカ。知らない生き物ばかりだった。でも、ドキドキとした気持ちは今なお慶太の心に熱く残っている。
また来ていいと主は言った。では、明日行っても問題はないだろうか。今度はどんな幻想生物が見れるのだろうか。
空想博物館 月野 白蝶 @Saiga_Kouren000
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