6-5 学校に同居人が身バレしたw

 生徒指導室で俺と向き合うと、美咲先生がお茶のペットボトルをどんと置いた。


「それで?」


 キャップを開けてさっさとひとくち飲むと、促すように俺を見た。


「はい。最近はもう、それはそれはマジメに過ごしてまして」


 美咲先生は、手元のファイルをチラ見した。


「そうね。そうみたいね。ここひと月で、十日しか休んでないし」


 睨まれた。


「じ、実はプライベートでいろいろ忙しくて」

「はあ? 先生だって忙しいけど、毎日仕事してるけどね。高校生なんて、働いてる人の一万倍は楽でしょ」


 ファイルで頭をはたかれた。


「め、面目ない」

「面目ないんなら、ちゃんと来なさいよ。四月からのペース、確実に留年コースだよ」

「これからはきちんと来ます」

「約束よ」

「た、多分」

「たぶんんんーっ?」


 美咲先生の瞳がすっと細くなった。やばい、本気で怒ってる。


「すみませんでしたー」


 手を机に着けて、頭を深く下げる。机に当たって、ごちんと音がした。


「……」


 そのまま十秒、ふたりとも動かなかった。窓の外からは、放課後の練習に励む運動部のかけ声が漏れ伝わってくる。


「……あんたのことだから、ギリギリでは対応すると思うけどさ」


 ほっと息を吐くと、美咲先生が、抑えた声で話しかけてきた。


「でも突然病気になったりしたら、それで終わりだよ。ギリギリにしちゃってるんだから。先生だって、そこまでフォローできないからね。ただでさえ海士くんばかり甘やかしてるとか、吊るし上げ食らってるのに」


 俺は黙っていた。申し訳ないわマジで。


 でもこっちはこっちで死んじゃったりw ネクロマンサーにストーカーされたり、なんらや知らん謎のガキと猫が居着いちゃったりとかさあ人生大変なんだよ。


 まあもう死んでるんだけどw


「ほら、頭上げてお茶飲みなさい」

「……はい」


 頭を上げたけどもさ、さすがに先生の目は見られない。机の上、美咲先生の組んだ手を見つめていた。その向こうのかわいらしい胸の膨らみも、ついでに鑑賞する。


 転んでもタダでは起きないw


「海士くん、中間テストの勉強してる? きちんと。もうすぐよ」

「はい、なんとか。ただ範囲がよくわからなくて……」

「わかるわけないじゃないの。その出席態度で」

「なんともはや」

「なに爺さんみたいなこと言ってるのよ。クラスに友達いないわけ?」

「いるんだけど、あきれてあんまり教えてくれないというか」

「バカねえ、本当に」


 溜息混じりに椅子に寄りかかった。


「なら明日委員長の蜷川むつみに言っとくから、彼女に聞いときなよ」


 俺は、メガネ姿の委員長を思い浮かべた。


「あいつ苦手なんだけど。真面目だし」(巨乳はいいんだけどな)

「真面目だからいいんじゃない。説教食らうといいわ」

「……はい」(くそっ)


 お茶を飲むよう美咲先生に促され、俺はようやく先生の胸から視線を外した。もう少し鑑賞していたかったが、仕方ない。説教されながら妄想に耽ってたとか気づかれたら殺されるw


「それより海士くん、あんた、なんか噂になってるよ」

「噂?」


 美咲先生は、直哉の瞳を覗き込んだ。


「なんかド派手な金髪の娘と歩いてたとか」

「えと……」


 やばいw


「女子中学生に街角でどつかれてたとか」

「……」(古海の野郎。あんなことするから……)

「女子小学生をアパートに招き入れてたとか。ねえあんた、なにやってんの。事と次第によっては、どえらいことになるよ」


 睨まれた。やばいぞ>俺w

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