6-4 巨大1K、ユニットバス×2ってなんだよw

 壁をぶち破って入ってきた古海は、得意げに笑った。


「おい古海。なんだよこの騒ぎは」

「前もって言ってなかったっけ。あたし、隣に引っ越してきたから。ネクロマンサーになれる最後のチャンスだって土下座して頼んだから、父さんもシブシブ認めてくれてさ」

「……それはまあいいとして。いいとしてもだ、壁ぶち抜く奴があるかよ」

「いやー驚いたわ。このアパート、壁薄いのねえ。隣とボード一枚じゃないの。伝説のレ○パレスだって、これよりずっとましでしょ」


 埃もうもうの室内を、得意げに見回した。


「あれでしょ。『アレクサ、テレビ消して』って言うと、上下左右の部屋のテレビが全部落ちるって、伝説の部屋でしょ」


 なんだそりゃw


「ま、いずれにしろこんなに短時間で開通するとは思わなかったし」


 俺の後ろには天使服姿のティラと、全裸のミントが立っている。どちらも無言。ティラは目を白黒しているし、ミントは興味なさげにぼんやり眺めている。


「なによあんた、昨日お楽しみだったわけ? 死神に手を出すなんて、度胸あるわね」


 ニヤニヤしている。


「手なんか出すかよ。勝手にベッドに入ってくるだけさ」

「それは狭いからでしょ。ワンルームにベッドとソファーベッドなんか入れたら、いっぱいじゃない。だから……」

「……だから?」

「だからあたしがリフォームしてあげたわけよ。この匠が。『なんということでしょう。セコいお部屋が、夢の巨大ワンルームに』――」

「どこの世界に、ワンルームだけどミニキッチン×二、ユニットバス×二なんて変な部屋があるんだよ」

「いいじゃん。これで男湯女湯できたわけだし。のれん買おうよ。銭湯みたいなの。トイレも男女別になるしさ、それで。もう安心して入れるわ」


 胸を張ると、古海は舌をぺろっと出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る