第9話 商業エリア

ぶぅーーーーーん

小型宇宙専用の滑走路を滑るように進み。商業エリアに到着する。


ガースとムムと俺は宇宙探索船のハッチの扉をでる。目の前にはテントがけのシンプルな露店が並ぶ光景が広がっていた。色んな姿をした惑星人(ネヴィト)が行き交い賑わっていた。


「意外だなあ。もっと清潔感があって未来的だと思っていたよ。」

「はっ、荒くれ者の宇宙冒険者のギルドがある拠点の惑星に金持ちの来訪するセレブ街なんてあるかよ。大抵こんなもんよ。」


ガースは購入メニュー記した用紙をポケットから取り出す。


「今日は何を買うんだ?。」

「ネテリークからお前の宇宙冒険者として必要なものを揃えるように頼まれているからな。その買いものだ。後は食料と医療品だな。」

「俺、金持ってないぞ。ネテリークに頼まれたというけど。施しなんていらねえよ。働いた稼ぎで買うから。」


俺は驕られるのはあまり好きではなかった。なんか相手にかしをつくるようで何かいやなのだ。


「はっ、年配者の好意はちゃんと受け取るもんだ。それに前の依頼で報酬もたんまり貰っている。お前の働き分でもあるんだから問題ないだろう?。」

「まあ、そういうことなら。で、何を買うんだ。」


宇宙冒険者に必要なものと言ったらやっぱ銃かなあ。確かに今後危険な生物に遭遇したら必要になるだろうから。


「まあ、宇宙冒険者の未開惑星の探索は殆どサバイバルだからなあ。必要なものはRayザーナイフと当然銃とか。後はスキャンサー(走査機)だな。」

「スキャンサー(走査機)?」

「物質や生物、植物、鉱物の成分を解析分析検査することができる小型の調査用機器だ。植物なら毒性か食用か解るし。生物なら有害か無害か判断できる。未知の鉱物を調べるのにも役に立つ。宇宙冒険者として未開惑星を探索するのにはかかせない必需品さ。これがあれば大抵の未開惑星では生き残れる確率がぐーんと広がる。」

「ふ~ん。」


スキャンサー(走査機)という代物はどうやら未開惑星の資源を調査するのに必要らしい。まあ、確かにネテリークから植物の知識を得ているといっても。未開惑星の未知の生物や植物、鉱物など有害か無害かなど初めて調査するのだから解る筈もない。俺だって全ての生物、植物、鉱物などの知識得ている訳ではないのだ。知らない植物や生物、鉱物なども対応できるかといえばできる筈もない。


ガースは露店の一軒に立ち寄る。そこには閲覧できる土台に手が握れるほどの金属のなんというか握る箇所グリップのようなものが並ぶように置かれていた。掌サイズのグリップの形をしたものは俺には何なのか理解出来なかった。


「はい、お客さん。何か物入りかい?。」


露店の店員は緑色の肌をしたスキンヘッドの惑星人(ネヴィト)だった。

緑色のスキンヘッドの店員はにこやかにむかえる。


「ああ、こいつに合うRayザーナイフを見繕って欲しい。」


どうやらこの露店はRayザーナイフの専門の店のようだ。


「ほう、そうかい。見るからに宇宙冒険者で駆け出してやつだな。ほいきた。あんたにふさわしいRayザーナイフを用意するよ。種族はどこの惑星の人だい。」

「地球のネヴィトだ。」

「地球のネヴィトか。そんじゃこいつとこいつかな。」


店員は二丁のクリップの形をした金属製を見せる。


「ガース、ナイフなのに刃がないぞ?。」


俺がふとそんな言葉を吐くと露店の店員とガースは揃って目を丸くする。

そして二人顔を見合わせ。暫くして揃ってガハハと嗤いだす。


「な、なんだよ?。」


突然二人が嗤い出したので俺は不機嫌になる。


「ハハ、そうだったな。地球では刃があるナイフが一般的だったけ。忘れてたわ。ふふふ、」


ガースはおもむろに腹を抱え笑いを堪えていた。

俺は不機嫌に眉を寄せる。


「あんちゃん、そのRayザーナイフを手にしてみな。」


露店の店員に指示され。俺は不機嫌ながらもRayザーナイフを手にとる。


「そいでそこの側面の小さなスイッチを軽く押してみな。スイッチは人の血流、体温に反応する特別製さ。」


俺はRayザーナイフのクリップの形の先に角辺りにある小さなスイッチを押してみる。

カチ ぶぁ

青い透けた刃が先端から飛び出る。

ああ、ライ○セイバーの要領か。俺は昔みたかなり古いSFを思い出す。


「んで、そのグリップの上部の角辺りにある⚙️を回すんだ。」


俺は刃がでるグリップの上部の先っちょにあるギアを回してみる。

ギギギ ギギギ

飛び出した小さな刃の色が青から赤に変わる。


「それで刀身の熱量を調節する。切るや刺すだけでなく使い方により熱することも可能だ。熱を燃えやすいものにあてて着火に使うのもありだ。」

「へえ~便利だな。」


俺は素直に感心する。

確かに原生林とかの森だらけの惑星の生活には重宝しそうだ。現に俺はそんな暮らしをしている。ネテリークのこだわりか。火を起こすのも切るのも殆ど原始的である。


「そんであんちゃんどうするんだい?。あんちゃんに合うのはこの二本だ。」


露店のスキンヘッドの店員は銀製に青と赤の線の淵に添ったクリップ型のRayザーナイフを提示する。


「じゃ、青い方で。」


俺は特に好みとかはなかったので適当に言った。


「あいよ。そんじゃ支払いは現金か?。ギルドカードのステアか?。」

「ギルドカートのステアで頼む。」

「あいよ。」


ガースはギルドカードをとりだし。露店はコンパクトなプレートのようなものを取り出しそれに当てる。

ピッ


「はい、まいどあり。袋は必要か?。」

「いいや最後にベルト式のホルスターを購入するから必要ない。」

「そうかい。弟子想いの良い師じゃないか。」


俺とガースは露店の店員と軽い挨拶をすませ。次の露店にむかう。


「次はなんだ?。」

「次は銃だな。」

「銃か······。」


俺の国では銃の規制が厳しい。一般人が入手するなどほぼ不可能だろう。だがこの銀河では銃の所持は何のお咎めもない。特に未知の銀河を渡る宇宙冒険者には銃は自分の命を守ってくれる大切な相棒だ。

次の露店というよりはちゃんとした屋根付き建物であった。看板にはここの銀河の宇宙言語で書かれている。


「ガシャイ。いるか?。」


ガースらづかづかと店内に無造作に入っていく。馴染みの店なのだろうか?。


「何だ騒々しい。て、ガースか?。一年ぶりか。あまり顔出さないからどっかでおっちんだと思ったぞ。」


店内に髭もじゃのとんがり耳したまるでドワーフのようなネヴィト(惑星人)が現れる。


「ハハ、そんな簡単に死ぬたまかよ。それより新米の宇宙冒険者を連れてきた。こいつに合う銃を見繕ってくれ。」

「あいよ。で、あんたが得意な銃は何かね?。ハンドガン?。ショットガン?。マグナム?レーザーもビームもあるよ。何なら腕にサイ○ガンをサービスにつけてやるよ!。」

「いいや、サイ○ガンはいらねえ!。」


俺はキッパリとお断りの返事をする。

て言うかこの銀河にサイ○ガンあるのかよ。漫画やアニメの世界だけだと思っていたよ。


「火力よりは実用的な銃で頼む。サバイバルに適した。なるべくかさばらないような銃が欲しい。」


ネテリークの宇宙冒険者のサバイバル訓練で解ったことだが。未開惑星で探索するときには武器の火力よりも機動性を優先したほうがよいと解った。武器の火力重視するなら怖いもの無しだろと言うものもいるだろうが。それは目的が戦闘を想定いるときである。戦争を生業とする軍人なら問題ないが。宇宙冒険者は探索を重視した職業である。戦闘よりは機動性、身軽であることが重要なのだ。確かに危険な宇宙生物に遭遇する可能性も否定できないが。しかし探索するにも重い武器を背負っていく方が未開惑星を探索するのに命取りである。ただ何でも入る未来的な収納リュックなどがあれば話は別だが。


「武器を多量に所持することができる収納リュックとかないのか?。」

「あるぞ!。多次元パックというやつだ。ポシェット並のサイズで何でも入る。拳銃でも色んなサイズの種類の銃も収納しほうだいだ。その分かなり値が張る。」

「どのくらいの額だ?。」


正直ここの銀河の通貨価値はまだ理解していない。


「五千万ディルだな。ギルドカードだと三千万ステアだ。一般の宇宙冒険者が普通に一年間で稼げる額だな。」


高いのか安いのかわからんな。一年間の稼ぎだから相当の額だろうが。


「まあ多次元パックなんてものは相当、S級ぐらいしか所持してないだろうな。宇宙冒険者としては多次元パックは需要あるだろうし。売りさばくことはしないだろうし。入手するにはだいたい遺跡だからなあ。」

「それもランディル文明の遺産か?。」

「ああ、よく知っているなあ。ミスティックファイブの一つであるランディル文明の遺産はどれも高価で入手困難なものが多い。発見できたら億で売買されたと噂もあるくらいだ。」

「へえ~億か。」


億と言われても実感がわかない。円でないから億と言われても価値がどれくらいか判断できないのだ。


「まあ、他の銀河のやつらはランディル文明の遺産よりも宇宙船の燃料になるエリクシル光石にご執心だけどな。うちらには関係ないことだが。」


このヘキサギャラクシー(六角銀河)では無限回路メビウスのおかげでエネルギー枯渇問題が存在しない。一般的な宇宙船の燃料であるエリクシル光石も必要としないのだ。


「にじゃおめえにはこれだな。」


ガチャ

机に二丁の拳銃が並べられる。


「一丁の拳銃は実弾式マシアル社製、マシアルナノガディックV4。銃体が特殊なナノ鉄製で傷がついても自動再生修復する優れものだ。弾薬が最大16発、マガジン弾倉で弾薬を交換。特殊なナノマガジン弾倉なら最大48発も弾薬を補給せずに撃てる。んで、こっちがアマリル電子社製、アマリルフォルッソンSAIenだ。こいつは実弾式ではなく電子射出式。主にレーザーやビーム、レールガン発射する銃だ。レーザーやビームとして発射するのもよし。鉄や鉛を仕込んでレールガンとして使用してもよし。弾薬込める必要はなく。電力源は充電パックだ。充電すればいつでも使える。もし電力切れてもソーラーシステムも採用しているから。太陽にあてて充電することも可能だ。高速充電機があれば10秒で充電完了だ。」

「おいおい、俺はそんなに金持ってないぞ。どう見てもこの二丁の銃。A級クラスの価値がある代物じゃねえか。」


ガースは銃器店の亭主ガシャイに嫌そうに顔をしかめる。


「気にすんな。これは俺の新米の餞別祝いだ。小僧はこれから宇宙冒険者として出世しそうだからなあ。出世払いということだ。」

「俺は別に出世には興味ないがなあ。」


俺は求めるものは宇宙探索のスリルであり。出世や階級などには興味はなかった。


「お前さんがそうおもわなくても否応なしに出世するさ。俺は人の見る目には自信あるだよ。」

「そうかよ。じゃ。遠慮なく貰うよ。」


俺は二丁の拳銃を手に取る。マシアルナノガディックV4は意外と重かったが。アマリルフォルッソンSAIenはプラスチック並みに軽かった。材質は特殊なのだろうか?。


「さあ、次行くぞ!。残りはスキャンサー(走査機)とホルスターだな。」

「解った。」


俺とガースは次の店にむかう。ムムもてくてくと黙ってついていく。


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二丁の拳銃を手に入れた大翔は宇宙冒険者として新たな道が開かれる。


次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第10話 『荒波の獣』


   不良少年は荒波の海に飛び込む······

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