翌日、月曜日

翌日の月曜日、教室へ入るとやはり優衣は女子のクラスメイト達に話しかけられていた。


優衣は地味な印象を持つが、本来は可愛い女の子だ。目立たない女の子が髪を切って可愛くなればクラスメイトは気になるのは仕方がないことだ。


そういう訳で優依は結構目立っている。

当の優衣は表面上クールに振舞っているが、どうも落ち込んでいるようも見える。


そんな気がするだけなのか、それとも分かるようになったのか。


出来ることなら、分かるようになったと思いたいが。


男子のクラスメイトも優衣に注目している。

事前にこうなることは予想していたので、優衣と話し合って、男子から変なちょっかいをかけてこない限りは、今まで通り俺と付き合っていることは秘密にすることにした。


周りのクラスメイト達に挨拶をして俺は自分の席に座る。

少しして、七海が優衣が困っていることを察して女子のクラスメイト達を上手く引き剝がしていた。


ちょっとホッとした様子の優衣に、俺はメッセージでお疲れ様。とメッセージを入れておく。

優衣が一瞬こちらを見てから、疲れた。と短くメッセージがきた。


普段なら、もう少し話が続くが今日はそこまでだった。


そして、放課後まで優衣とは一言二言くらいしか、メッセージがこなかった。



――優衣、文芸部に行こう

――分かった


幸いなことに優衣はこちらのメッセージに返事してくれる。

落ち込んでいる優衣の気持ちを少しでも上げないとな。




結局、初体験の失敗は俺が原因だ。電気を消すか? と聞けばよかっただけだ。

それに優衣が焦っていることに気づかなかったことも悪いだろう。


まあ、激しいスキンシップをあれだけしているのだから、俺が優衣と最後までしたいと思われても仕方がない。

もちろん、俺も優衣と濃厚接触したいけどな!


「今日は頼むな。小夜」

「うん、任せて!」

「……なぜ、ここに小夜さんが?」


放課後の文芸部に集まったのは、俺と優衣と冨澤小夜の三人だ。


今日は優衣の落ち込んだ精神を上げるために小夜にも手伝ってもらうことにした。


「昨日、ちょっと失敗しただろう」

「う、うん」


気まずそうに俺から視線を逸らす優衣。


「雪美さん。ああ、雪美さんって優衣のお姉さんの名前だ」

「ふんふん」


俺は優衣と小夜に説明しながら、今日集まってもらった理由を教える。


「雪美さんが落ち込んでいるから、励ましてあげてって」


剥げますより、落ち込む暇を与えない方がいい。と言われたからな。


「失敗?」

「それは内緒だ。小夜」

「そうですか、まあ、いいですけど」


俺は優衣に視線を向けて、こう告げる。


「だから優衣、昨日の失敗を気に病むなら、今日はちょっとグラビアアイドルみたいになってくれないか?」

「え?」

「それで昨日の失敗はチャラにしよう。雪美さんが優衣は結構引きずるタイプだって聞いたからさ。今日の撮影会でチャラだ」

「う、うーん。わ、分かったわ。けど、グラビアアイドルってどういう意味で?」


優衣が不思議そうな表情をしたところで、小夜がニコニコで優衣の腕を掴んだ。


「サイズは小さいですが、私の昔の衣装をいくつか持ってきました」


小夜は自分のスクールカバンから、いくつかの衣装を取り出す。


サイズが合わないので小夜なら普通のビキニだろうが、優衣が着るとマイクロビキニと呼べそうな赤いビキニの水着。


オレンジ色のチアガール衣装と赤いブルマの体操服。ミニスカメイド服。


「こ、これ着てたの?」

「……思い出したくないですが、今にして思えば本当の自分になる切っ掛けですからね」


小夜は優衣にまずはインナー代わりの赤いビキニを手渡す。


「これ、着るの?」

「はい、ニップレスもあるので」

「下着でもいいんじゃない?」

「ブルマは下着でも良いかもしれませんがチアやメイドだと、パンチラしますから、水着の方が恥ずかしくないと思いますよ?」

「うっ、それはそうだけど」


優衣がビキニを恥ずかしく思って、俺に視線を送ってくる。俺は優依のビキニを見たいので、少し考えゆっくりとその場に両膝をついてお願いをした。


「優衣のグラビア撮影を見たいです!」

「む、睦月さん、ど、土下座しないでください」

「うっ、土下座ってこんな感じなんですね」


微妙な表情で俺の土下座を見守る小夜。ゆっくりと深呼吸をして、何かを考える優衣。

少しして、優衣は俺へ近く。


「分かりました。恥ずかしいですけどやります」

「あ、ありがとう!」

「けど、恥ずかしいので今度埋め合わせをお願いしますね!」

「分かっている。それに昨日の失敗は俺が電気を消すか。と一言聞けば回避できたかもしれないことだからな」

「え、電気を消すって何ですか?」


俺と優衣の話を聞いて、頭に?マークが飛ぶ小夜。


「まあ、それについては秘密だ」


俺の言葉で小夜は気づいたようで、まさか!? という表情になった。


「え、それは、え? もしかして」

「まあ、今日はその辺は置いておこう」

「ええ、小夜さん。撮影しましょう」

「あ、うん。分かった」


と言うわけで、優衣は小夜と共に準備室で着替えに行った。


「――デカッ!?」


少しして、着替えている優衣を手伝っていた小夜の叫びに、俺は反射的に頷いた。





「ふ、普通のビキニがマイクロビキニになるんだな」

「……衝撃が凄かったです」

「……」


まずは、赤いビキニを着た優衣が準備室から出てきたのだが、もうなんか凄かった。

恥ずかしくて、右手で胸元をしっかりと隠している。


「えーっと、優衣。それ撮影してもいい?」

「さ、流石にこれは恥ずかしい」

「そ、そうか」


顔を真っ赤にしながら俯く優衣の言葉に俺は頷いて、水着の代わりにオレンジ色のチアガールの服を着てもらう。


「イラストで見たことあったけどリアルで、乳カーテンって破壊力あるな」

「す、凄いおっぱいです!」


目を瞑って、両手を後ろに回してちょっと胸を突き出すように立ってもらっているのだが、サイズが小さいチアガールの服を盛り上げるおっぱいが服に合わず。

下乳が凄いことに。


「これは燃えてきますね!」


デジタルカメラを取り出して、燃え上がる小夜。

そこから、小夜の指示で写真を撮り始める。


最初はぎこちなかった優衣だが、小夜の話術で徐々に緊張が解れてきたのか、色々なグラビアポーズをしていく。


「意外と優衣の体って柔らかいんだな」

「うん、チアガールのように体が柔らかくないけど、お姉ちゃんと一緒に少しストレッチしている」

「ふむ、俺も少しストレッチをしようかな」

「そうですね。撮影だけじゃなくて、健康にもストレッチは良いですよ」


最初は俺のことを気にしていたが、小夜に「睦月さんも優衣さんのチア衣装可愛いですよね」と、遠回しに優衣を褒めろ。と言うアドバイスされたので、俺も優衣を褒めた。

そのおかげか、昨日の失敗を気にする間もなかったのか今の優衣の雰囲気は普段に近づいている気がする。


昨日の失敗が原因で、優衣とぎくしゃくした関係にならずに済むかもしれないな。


「ところで、睦月さんって結構ガタイがいいですけど、身体鍛えているんですか?」

「ああ、そこそこかな。運動部に比べれば全然だろうけど」

「……よかったら、今度撮影させてもらえません?」

「え?」


小夜にそんなことを言われて、俺は首を傾げた。男の裸の写真を撮りたいのか?


「別にいいけど、男の裸撮って面白いか?」

「分かりません。個人的には女体がいいですけど。睦月さんなら」

「だ、駄目です」


小夜の言葉を優衣が止めた。優衣の顔を見るとちょっと拗ねている感じだ。


「わ、私の彼氏です。だから、睦月さんの裸はわ、私だけのものです」


優衣の言葉に俺は驚きつつ、小夜に「彼女から駄目だと言われたから」と言うと、小夜も笑いながら「ええ、分かりました」と答えてくれた。


「けど、残念ですね」

「何がだ?」

「だって、優しい彼氏じゃないですか、睦月さんって」

「優しい?」


小夜の言葉に俺はどういう意味だ? と考え、優衣はうんうん。と頷いている。


「なんとなーく、ですけど。昨日何があったのか分かりましたから」


ふふっと意味深に笑う小夜に俺は天を仰ぎ、優衣は恥ずかしくて視線をそらした。


「もし、二人の距離が開いたら、その隙にって思ったんですけどね」


と小夜が冗談めかしに笑った瞬間。




――面白いこと言うわね。




――ガシィッ!! と音がしそうなほどガッチリと優衣が小夜の頭を両手で掴みこんだ。


しかも至近距離で優衣は小夜を見つめる。


「ゆ、優衣?」

「え、あ、え?!」

「睦月さんは私の彼氏です。駄目ですよ」

「あ、はい。もちろんです!」


めっちゃ至近距離で無表情の優衣から睨み続けられる小夜は慌ててそう叫ぶ。

優衣も冗談だと分かっているので素直に手を離した。


こ、怖っ。けど、これなら、優衣から昨日の失敗が原因で俺から離れるなんてことにはならないだろう。


「優衣」

「なんですか?」


俺は優衣に近づき、しっかりと優衣を抱きしめる。右手で優衣の後頭部を優しく撫でながら、小夜に視線で大丈夫かと問いながら、優衣に語り掛ける。


「優衣が嫌なら、断るから大丈夫だよ」

「はい」


ああ、やわらけぇ。何がとは言わないけど。

軽く優衣の背中を叩きながら、落ち着かせる。


「それじゃあ、続きしようか」


俺がそういうと、優衣は頷き。小夜も少し落ち着いたのか頷いた。

この後、優衣に少しチアっぽい動きをしてもらったのだけど、凄い揺れた!

そこから、俺の要望でちょっとセクシーな踊りを踊ってもらった。


参考動画を見せたら、優衣と小夜に冷たい目で見られたけど、俺が優衣に何度もお願いしたら、踊ってくれた。

そして、小夜の写真を撮る才能が輝いていた。


いやぁ、エロいけどエロくないってこういうのを言うんだね。

これなら、芸術って言って個展開けんじゃね? って思ったよ。


一通り撮影が終わって、優衣には着替えてもらった後。

画像の確認が終わり、少し雑談をしていた時のこと。


「次は上手くいくといいですね。夏休みにそういうことをしようとするカップル多いですし」


小夜の一言で、俺達の初体験が失敗したことがバレたことが分かった。

まあ、俺達の話を聞いていれば、なんとなくわかったのかもしれないな。


「別に周りがやっているから、やるってわけじゃないぞ?」

「はい、そういう風に考えられるなら、平気だと思いますよ。焦っている男子って結構いますから」

「そうなのか?」

「はい、付き合って何カ月も立っているのにキス止まりって」


確かにそれは不安に思うな。優衣を見ると優衣も頷いていた。


「私や優衣さんみたいにエッチなことに耐性があれば、割と平気なのかもしれないですけど、初体験ってやっぱり不安が多いと思いますし」


小夜はジュニアアイドルだったらしいし、そういう性的な目で見られたことがある。

だから、そういうエロにたいする耐性があるのだろう。


優衣も変質者に狙われたことがあって、そこから俺とのスキンシップで慣れた。

いや、変に初体験を美化しなくなったのか? 昨日そんな風にとれることを言っていたし。


「少女漫画とかで夢を見ている子は大変かもね」


優衣の言葉に小夜も頷いた。


「私の場合はお姉ちゃんのエロ本で夢を見なくなったし、睦月さんが変態だからね」

「本当にすみません!」

「あははは……」


優衣の言葉に小夜は苦笑いだ。


「でも、睦月さんのお陰でこの胸も少しは平気になりましたよ」

「そ、そうか」

「昔は、胸の大きさが本当に嫌でしたけど。睦月さんが性欲だけではなく、胸を好きだと言ってくれたので」


まあ、性欲が無いのは頑張って息子を毎晩鍛錬して疲れ果てさせただけなんだけどね。

優衣と言う女の子が好きだから、頑張って優衣が嫌がる部分を見せないようにしているだけだ。


「だから、次は大丈夫ですよ」

「そ、それ私の前で言いますか。その聞いているこっちも恥ずかしいですが」

「あ、すまん」


確かに小夜の前でいうことじゃなかったな。反省しないと。


「ま、その、そういうのはまた機会があったときにな」

「はい」


俺が席を立つと優衣と小夜も立ち上がる。

そう焦る必要はない。ゆっくりやっていけばいい。


「そろそろ、帰るか」

「はい」

「分かりました。今日はありがとうございます」


小夜は「やっぱり撮影するのが楽しいですね」と、「先に帰りますね」と言って先に文芸部を出た。


「気を遣わせたな」

「次の時に、お礼をしましょう」

「ああ」


俺は優衣へ手を伸ばすと優衣も察してくれたのか、俺の胸に飛び込んできてくれた。


それから、数分の間。俺と優衣は密着して離れなかった。





――睦月の自室



「ふぅ、今日は良い日だった」


家に帰り、着替えてベッドの上に寝転ぶと雪美さんにメッセージを送った。

とりあえず、優衣とはぎくしゃくした関係にはならなかったと。


「性的なことに夢を見ないか」


初体験は、どこそこで。彼氏とこういう雰囲気でって言う話はそれなりに聞く。

俺にしても、優衣や小夜にしても、性的なことに耐性が結果的に出来たことは喜ぶべきなのかもしれないな。

友人は男だけど、変質者の被害にあったことがあるし。


「難しい話だな」


俺は小さくため息をつきながら、ベッドから降りてとりあず夕飯の支度をすることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る