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「……終わったぜ」


 縫合を終え、ようよう一言だけ告げるや否や、ジークは長時間の集中による極度の疲労に耐えかねて、その場にしゃがみ込んだ。どうやらすでに作業を終えていたらしいムジカとロウニに、左右からぽん、と労うように背を叩かれる。


「よくやったな、ジーク」

「歴史的な快挙だな、よくやり遂げた! ……そういやずっと気になってたんだが、お前さん、前から黒髪だったか?」


 囁きかけてくる二人を見上げ、ジークはゆるくかぶりを振って苦笑を浮かべる。


「――いや、まだ起動してないだろ。問題はこれからだ。あと、髪は噴霧器で染めた」


 そう。傷ついた箇所の修繕こそ終えたものの、未だ少女は意識を取り戻していない。これから実行されるであろう最後の一手を終えるまで、成否は誰にもわからないという次第だ。


「――それではこれより、第二段階に移行する。個体名〝星災〟を、起動開始。総員、厳戒態勢で備えよ」


 はっ、という応えが室内にこだまし、やがて重い静寂が場に満ちる。と、うぉん、という鈍い音とともに、地下空間全体が、わずかに揺れた。


「……始まったな」


 師とロウニに手を借り、どうにか立ち上がったジークは、固唾を呑んで目の前の光景を見守った。


 無数の金属管パイプと導線を伝い、少女を目覚めさせるための動力が、華奢な身体に流し込まれていく。次いで、全員が下がるように告げられた後、さながら落雷のごとき電流が、ばち、と少女の身体を揺らした。

 二度、三度、と凄まじい電撃に晒された後も、少女の身体はぴくりとも動かなかった。


 そのまま身動ぎ一つせず、五分が、十分が、経過して。


「――失敗、したのか?」


 取締官の一人がぽつりと呟き、周囲にさざめくように動揺と失意が広がっていった、その時。



『――――アーキェルは、どこだ?』



 凛とした声が、無機質な空間に、冴え冴えと響き渡った。



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