第24話 手口

紙袋に入りたい

君が提げているその

正方形の袋の中に

年老いていくにつれて

できた皺の数だけ川の名前があり

辞書のめくられる音の端々から

放流される余裕の数々

擦り切れていく厚みが

地べたにこぼれた時には

鼈甲色の鏡になり

ここは金星くらいの反射率を誇る

とてもよく温度の保たれた僕の自我です


自我ですか

自我です

きっと、

おそらく、

君の、

分水嶺に最初に口付けをして

全ての川を汚染した人間の

最初のアルファベットは

正方形だった

たくさんの手口が

紙袋の中で

がさがさとロマンティシズムを語り

いつも傷だらけのまま満杯になっている

君の立ち去ったところは

どこもみずみずしいね

それだけが手掛かりの

平べったい

僕の願いが

流れている

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る