第20話 廊下

掠れていくね

居場所を訪ねているだけなのに

どの扉からも

音楽室に残った合唱のような

扇状的な祈りが

聞こえてくるね

何もかも

喪ってしまうのは

本当はとても穏やかなことでしょう

胸がすくとき

洗い流されたもので言葉を研く

時相理論のかけ違い

意味のなくなってしまった

ケロイドのようなフラワーホールを

中指で撫でる

この廊下に

住所という概念が育って

どこかの戸に絡みつき

二度と開けなくなるまで

私はただ

なす術もなく

あたりを彷徨っている

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