第11話 脱皮

定期券を呑み干す


石化した蜂蜜を焼いて

満月を隠す

血管は金箔の渦

まるで北極点みたいな重さ


田舎に帰った時

乾かし忘れた折り畳み傘の匂いがしたから

ちょっと嫌な顔をした


しかし帰らなければ


今月の家賃が

絆創膏が

私を埋め立てていく


足元に転がる石ころが

全部隕石だったら

毎日が少しは特別だったかな


聞こえなくなった

燕の声が

海の匂いが

満月の味が


私を埋め立てていく


白骨化した胴体が

蜜になって溶ける

そうやって月まで帰る


科学者だけが

私に名前をつけて

焚きしめる香で酔った

ただの金曜日だった

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