第8話 動揺症
三点倒立をした時、私には息の形が見えた。削り取られる酸素、それが通り過ぎる道すじ、消えて行く寿命、お昼の給食の跡。
それらをひとつひとつ巡っていると、ある時プツンと、角砂糖を崩すみたいに身体の緊張が解けて、気がつくと私は知らない場所にいる。真っ青なプールに浮いている。アクリルガラスに潜る。そんな音の中にいる。私以外の宇宙が溶けて、星が亡くなってしまったような音の中。
やがて遠くから外観達がやってきて、自我をふやかす。形がはっきりしてくる。アラームの内側から正回転している。そうして正気に戻る。
新聞に酔う。薄く刻印された、明朝体に浸かる。
私は二度と昔に戻れない。
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