第3話 冬眠

街灯が濁って滴る。


既に六角形と化した地表には鏡貼りのため池ができて、そこからまだ冬眠真っ只中の冷蔵庫の、寝息が聴こえる。


こちらはもう梅雨入りしたというのに、いつまで寝ているのだろう。


君が沸騰した両手で遠慮なく鏡をかき回すから、白いワンピースがほどけて、宙吊りの月に容赦無く犬歯を突き立てた。


血漿が割れる。六角形になる。目の淵も凍る。畳は咽せる。小指が怒鳴る。世界が六角形になる。


通り過ぎたバスが地表を揺らしていた。

だから街灯がまた、滴った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る