未公開 ゴキブリ討伐クエスト

ヤツは悪魔だ。「1匹見つけたら100匹いる」と伝説が伝え続けられているほどに。そんな悪魔がついに俺の家にも…

 

夕食後、俺達はテレビを囲んでゆったりとソファに座っていた。今夜は、テレビの説明と共にリナと約束をしていたアニメを紹介しようとリモコンで操作をしている時だった。


カサカサ…


正面の真白な壁に黒い影、小さいが強い存在感を放つは姿を現した。


「おおおぉいっ!!」


ソファに沈んでいた俺は飛び上がる。


「えっ!?急に何よっ」


リナも俺の反応に驚いてしまう。


「あ、あ、あれだよ…あれ」


なるべくヤツを刺激しないために、小さな声で震えながら壁を指差す。


「な、なんなのアイツは?」


リナも顔をしかめる。そんな顔になるのも当然だ。俺の指の先には親指サイズの悪魔の姿が。

 親指ほどしかないヤツに俺らは恐怖を抱き、現場には緊張が走る。 


「あいつは『ゴキ◯リ』部屋のモンスター…」

「モンスター!?」

「そうだ。あのオーラに存在感、お前なら理解可能だろ?」


リナは察したように顔を縦に振る。


アイツは人々の日常を脅かす。アイツに何億人の人が恐怖したことか…


あっという間に部屋を沈黙に包んだアイツはゆっくりと移動を開始する。

 俺も、テーブルに置かれた雑誌を丸め、戦闘準備に入る。リナも、冒険者の面構えで、同じ武器を持つ。  

 ほとんどの家庭にはヤツを一瞬で始末するための魔道具、「ゴ◯ジェット」という武器が存在するが、生憎俺の家には存在しない。

 なぜならここに越してきて3か月で、ヤツの姿を見るとは思ってもいなかったからだ。

『お前いけっ』


俺とリナは目で会話を始める。音を立ててヤツを刺激してしまえば、ヤツは止まらない。


『あんたバカじゃない!?』


リナは必死に首を横に振る。


『お前、昆虫食ってきたんだろっ!お前が行けよっ』

『あんなの例外よっ!!』

『ふざけっんな!お前、戦うの得意分野だろ!?」

『嫌よっ!絶対に嫌!!』


リナは断固として首を横に振り続ける。


俺が行かなきゃダメなのか!?

 俺はもう一度だけヤツを見る。しっかりと壁に付いている。その小ささなのにその存在は魔王とも言えるだろう。

 いやいやっ、無理無理、むりだってぇえええ!


『リナっ、やっぱりお前が行っ…』


ドタドタドタッ   バタンッ


「おい」


リナは音速の速さで部屋に逃げ込んだ。

 しかもご丁寧に大きな物音を立てながら。


「ふ、ふざけんじゃねぇぞ。そんな音立てたら…」


俺はゆっくりと壁の方向に振り向く。



カサカサカサカサカサカサ


 

ヤツは壁を高速で駆け回り、床へと降りてくる。


【目の前にGが現れた】


 【逃げる】  →【戦う】



こうして部屋は戦場と化した。


「◯ねーッ」


[成の叩きつける攻撃]


カサカサ


[ミス][攻撃はスルリと避けられた]


「早く◯ねっていってんだろッ」


[ミス][攻撃はスルリと避けられた]


「逃げんなっ」


[ミス][攻撃はスルリと避けられた]

 ・

 ・

 ・

「◯ね◯ね◯ね◯ねぇぇぇえええええッ」



[ミス][攻撃はスルリと避けられた]


「なんで当たらないんだよぉおおおおお」



ヤツは攻撃を加えて来なくても俺の精神を蝕んでいく。そして、ヤツは俺を振り切って逃走する。


[Gに逃げられた]


ヤツは忍者の様に走り去って行く。


が、ヤツの向かった先はだった。


小さな体を生かして和室へと侵入していく。


「ぎゃぁぁあああッ!!」


和室が騒がしくなる。


バタンッ ドタンッ バシンッ


「ちょっと何とりに探してんのよーっ!」


和室からはリナの声と激しい戦闘音が聞こえてくる。


「流石のGでも、元冒険者のリナには敵わないだろう」


俺はソファに腰を下ろした。


逃げる場所を間違えたGは、すぐにリナによって排除されてしまった。

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俺の家の前に美少女が転移してきたんだが〜家に居たい美少女と社会に巣立ってほしい俺 面長さん @gorimuchu

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