Side Story〈Yuuki〉EpisodeXIV
本話は、本編59話の話になります。
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「私、ですか?」
ずっとゼロさんを観察していた私ですが、さすがに今は私に話が振られたので、観察は一時中断です。
とはいえジャックさんみたいな、恋愛の話など私からすればそれ以前の問題ですので「何もありません、恋愛って何なのですか」そう尋ねようと思ったのですが。
「な――」
「そだよ~。ちなみに争奪戦参加者は全員いませ~ん」
私が話そうと思った矢先、ぴょんさん同様少し顔を赤くしたゆめさんが、可愛らしい笑顔を浮かべながら私の言葉を遮るように発言すると。
「私がいつエントリーしたっていうのよ!」
争奪戦の参加者にエントリーしてるのかいないのか、よく分からないだいさんがゆめさんに反発しました。
だいさんも、少し顔が赤いかな?
「うるせえ巨乳、黙ってろ!」
「ちょっと!」
ですがエントリーに参加を表明しないだいさんに対して何故かぴょんさんがさらに反発。
これはあれですかね、酔っぱらいというやつですかね?
あ、でもゼロさん今だいさんの胸辺り見ましたね。
恋愛マスターも、やはり女性は巨乳の方が良いということでしょうか……ふむ。
「ま、実際だいが一番有力候補だよね~」
「はぁ!?」
そしてゆめさんもぴょんさん同様だいさんのエントリーを肯定し、有力との発言が出ますが、やはり、巨乳強し……?
でも、ゆめさんに対してもだいさんは怒り気味。
喧嘩はよくないと思いますけど……。
でも、せっかくのお話を聞くチャンスと思ってましたが、完全にタイミングを逸しましたね……。
「だいじゃなかったら、セシルが次点かー?」
……ん?
ぴょんさんが口にした名前は、LAプレイヤーならば聞き馴染みのあるお名前でした。
でもなんで今?
「なんでだよ!」
とはいえ、その言葉にゼロさんが何故か焦った様子を見せるので、余計私は混乱です。
「セシルさん……?」
思わずその名を口にしてみましたが、セシルさんって、『月間MMO』にコラムを連載している、猫耳獣人の〈Cecil〉さんのことですかね?
ゼロさんとセシルさんに、何か関係が?
よく分からないので、とりあえず私はゼロさんの観察を再開することに。
うん、今ばかりは少しゼロさんも困り顔ですね。
「あ、ゆっきーはゼロやんとセシルの話知らないんだっけ~?」
「ほら話してやれよイケメン」
って、あれ?
他の方々はゼロさんとセシルさんのお話を知っている?
むむ、なぜ私は知らないのでしょうか……。
「ゆきむらの話聞くとこじゃなかったのかよ!」
「仲間外れは~」「よくないしー?」
あ、すごい。仲良しさんっぽい。
でもさすがゼロさん、私に話す機会を与えてくれようとしてますね。
私の方に目配せしてくださいましたし、ならば期待には応えねば。
「ゼロさんは、セシルさんと色々お話されてましたよね」
ということで、私はタイミングを見計らって皆さんの会話に加わります。
私が口を開くと、ゼロさんだけでなく、ぴょんさんもゆめさん含めた皆さんが私の方を向いて話を聞いてくれるご様子。
うん、今なら話せそうです。
とはいえまずは、疑問の解消ですね。
疑問はすぐ解決するに限りますから。
「あ、ああ。まぁ」
「この前の動画が荒れた時も何か対応したみたいなこと仰ってましたし」
「そ、そうだったねー」
ゼロさんの目を真っ直ぐ見ながら問いかけると、何故か少し焦っているようなそんなご様子が。
これはもしや、私にだけ話していなかった罪悪感、ですか?
むむ、優しい……。
「セシルさんとは、どういうご関係なんですか?」
ならば話しやすくしてあげるべきですよね。
なので、私は今抱えている疑問をゼロさんに尋ねました。
きっとこれで、話しやすいはずですね。
「おお、ドストレート!」
「いいぞいいぞ~」
「若いってすごいね~~」
そう思ったんですけど、ゼロさんは少し顔を赤くし、他の皆さんが大きな盛り上がりを見せます。
むむ、どうして……?
「え、えーと……」
「今さら隠してもしょうがないでしょ。ジャックを見習ってさっさと言いなさいよ、男らしくない」
「そーだそーだ!」
「言っちゃえ言っちゃえ~」
私が不思議そうにゼロさんを見ていると、皆さん囃し立てるようにゼロさんに話すように急かします。
罪悪感に
私がそう思って「大丈夫ですよ」と気持ちを込めゼロさんの目をじっと見つめると、気持ちが伝わったのか、ゼロさんの表情が少し落ち着いたものに変わりました。
「昔だよ? 俺が大学生の頃って言う昔に、俺セシルと付き合って、たん、だ」
「お、今日は亜衣菜って言わなかったな!」
「おい!?!?!?」
セシルさんと、付き合っていた?
亜衣菜さんという名前は知りませんけど、なるほど……。
さすが恋愛マスター、あのセシルさんと、リアルでもお知り合いどころか……。
「ほほう。ゼロさんは、セシルさんの元カレというやつなんですか」
これ以上ない恋愛マスターの恋愛トークを聞くチャンスです。
これは、積極的にお話を聞きにいかねば……!
「まぁ、そうなるね。もうだいぶ前だけど」
だいぶ前、という部分を少し強調されていたので、大学生の前半の頃ということですかね? となると、たしかにけっこう前ではありそうかな?
あ、でもそんな期間が空いても、この前お話しているご様子でしたし。
「でも、今でも連絡取れるんですね」
「え、あ、うーん。まぁ、うん」
なんだかはっきりしない感じですが、やはり恋愛マスターでも一度別れた方と連絡を取るのは気が引けるのでしょうか?
あれ、でもそもそも恋愛マスターでもお別れはする?
マスターとなるからには、経験を積む必要があるとは思いますが、経験があるというのは、それだけお別れの数を重ねなければならないのでは……。
あれ、ずっと上手くいく恋愛をされているわけではない……?
むむ、混乱してきました……。
「はっきりしゃべりなさいよ。この前だって会ってたじゃない」
密かに混乱する私をよそに、隣に座るだいさんが新たな情報をくださいました。
なるほど、別れてなお会いになる……。
これがいわゆる、キープ、というやつですか?
なるほど、それもテクニックの一つ?
「だいさん!?!?!?」
「あ」
そのだいさんにゼロさんは顔を赤くして驚いているご様子ですが、その驚きに驚いたのか、だいさんも顔を赤くしつつ、口に手を当てて「しまった」というような仕草を見せます。
表情豊かな他の方々に比べると、珍しいですね。
「待て、その話は」
「まだ聞いてないよ~?」
「興味あるね~~」
「元カノなのに、会ってたんですか」
やはりキープ……あれ、でも。
なんでだいさんは、ぴょんさんもゆめさんもジャックさんも知らないことを知ってるんでしょうか?
たしかにゼロさんとだいさんはLAの中でも一際仲良しという様子ではありましたけど……オフ会以降は、あまり話してるログを見てないような。
でもだいさんだけは知っている。
むむむむむむ……?
「い、いやー……この話はしてもいいのかなー、なんて。ほら、亜衣菜の個人情報もあるしさ?」
あ、先ほどのお名前、それがセシルさんの本名ということですか。
あれ、でも紗彩ちゃんから借りた漫画では、別れた後は「名字+さん」呼びに変わるみたいなことを読んだ気がしますが……。
「元カノなのに、今でも下の名前呼び捨て……」
これは、やはりキープ説濃厚……?
私が少し顔に手を当て考え込もうとすると。
「なんだなんだー? 火消しのために連絡したのに逆にゼロやんのゼロやんが再燃か!?」
「ぴょんさんそれはどういう意味ですか?」
ゼロさんのゼロさん?
ぴょんさんが不思議なことを言い出します。
「え、そんなもん決まってんだろー? ゼロやんの極悪なアレがセシルと夜のバトルをだな――」
ゼロさんの極悪なアレ……?
ゼロさんの強そうなものと言えば、最近手に入れた銃、ですか……?
夜のバトル……たしかにログイン時間はいつも夜ですけど。
「やめんかい!」
「ガンナーだし早撃ちとかしてないよね~~?」
「ジャックものっかんじゃねぇ!!」
え、もしやゼロさんは現実でもガンナー、なのですか?
むむ、教員免許だけでなく、狩猟免許をお持ち……?
でも早撃ち、となるともっと小さなピストルとかの技術ですよね。
しかもバトルですし、え、まさか?
「バトル……早撃ち……? 西部劇のようなものですか……?」
銃刀法違反がある日本で、教員であるゼロさんがそんなことを……?
……え、どうしよう、通報したほうがいいのですか……?
「西部というか、実際は愛撫じゃないですかねー」
「じゃないですかねー、じゃねー!!!」
愛撫……?
え、そこまで銃を愛しているのですか?
恋愛マスター……まさか無機物へも愛を……?
「まさかゼロやんこの前の日曜日……?」
そしてこの会話にだいさんも加わり、新たな日曜日という言葉を伝えてきます。
日曜日に、銃で早撃ちバトル……?
「おお、新しい情報~?」
「日曜いなかったと思ったら、お盛んだなぁゼロやんは~~」
「ゼロさんは日曜日にセシルさんと盛んに何かを……?」
ここまでの情報を整理すると、ありそうなのは、サバイバルゲームというやつですかね。
なるほど、セシルさんもサバイバルゲームがお好きで、一緒にやられてたのかな?
でも極悪なアレってなんだろう?
「やることヤってんなぁ、さすがイケメン!」
「……そろそろ泣くぞ?」
皆さんの質問攻めに、さすがの恋愛マスターも疲弊したのかちょっとだけお疲れの様子を見せますが、私としてはセシルさんと対戦したお話より過去の恋愛のお話を聞きたいです。
でも皆さんは、だいさんが言った日曜日という言葉が気になるようで、まずは多数派であるそちらの疑問を解消するのが民主的ですかね。
だいさんは何か知ってる様子ですから、もしかしたらだいさんも一緒にサバイバルゲームをやったのでしょうか?
面白いのかなぁ……。
そんな疑問を抱きつつ、私は恋愛マスターが何をお話してくれるのか、じっとゼロさんの顔を見ながら、皆さんとともにゼロさんの言葉を待つのでした。
オフ会って、楽しいですね。
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以下
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前Episodeに続き、の回です。
書き直していて、懐かしい気持ちでいっぱいです。笑
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