15話 ロイの正体
15話 ロイの正体
ロイ達がまだターナの家に居た頃、ファルタ王国宮殿ではスーリによるロイの素性調査に関する報告が行われていた。
集まったのは国王ジョン=ケージー、王太子ヘンリー=ケージー、王太子家長女テミス=ケージーだ。
「それでは報告をはじめます。今回、調査を行なったのはテミスお嬢様とルナお嬢様のクラスメイトであるロイという者です。この少年は、入学試験と入学後の模擬戦において2回も冒険者学校の教官を圧倒しています。また、テミスお嬢様の証言から推測するに、氷属性の超級魔法である
超級魔法と聞いて驚いたのはヘンリーとテミス。
2人は魔法についての造詣が深いので、超級がどれほど凄いものであるのかについてすぐに考えが至ったのだ。
一方でロイの強さについてピンときていないのはジョン国王である。
彼は魔法をほとんど使えないどころか戦闘適性が皆無であり、また戦闘経験もほとんどない。
そんなジョン国王はスーリの説明を聞いて尚、少し不満げな様子だ。
「ふむ。類稀な力を持つ者が権力を嫌うというのはそう珍しいことでもあるまい。暗部の方でいつも通りに対処すれば良いだろう」
隠密機動部隊は通称暗部と呼ばれている。
ここで言ういつも通りとは、暗部の調査により危険人物だと判断した場合は暗殺してしまえというものだ。
「あの、お祖父様。ルナはロイ君とお友達になりたいそうです。もしもやむを得ないという場合は、ルナに悟らせないためにどうか極秘裏に進めていただきたいのです」
実は危険だとみなした人物や団体を処理する場合、暗部はわざと目立つ手段をとることが多い。
国に逆らうとこうなるのだ、という見せしめのためだ。
だから、テミスはルナのことを気にして表沙汰にしないでくれと、こうして頼んでいる。
(純粋で心優しいルナは、自分の所為だとまで思い込んでしまいそうだもの。私の唯一の親友にそんな悲しい思いはさせたくないわ)
当然ながら、テミスのそんな気持ちは大人達にも伝わっている。
「テミス⋯⋯。思いやりのできる子に育ってくれてパパは嬉しいよ。これでもうどこへお嫁に出しても大丈夫だ」
「うむ。さすがは我が孫だ。テミスの望み通りにしてあげなさい」
ジョン国王がそうスーリに指示をし、報告会はお開きとなった。
「陛下、一応お話しておきたいことがあります」
ヘンリー王太子がテミスを連れて部屋から出て行った後を見計らい、スーリが切り出した。
「なんだ? テミスには聞かせられない話でもあったか?」
「⋯⋯ロイとやらですが、王都随一の鍛治師であるレコルの店に出入りしているのを見たという者がおります。また、冒険者ギルドのギルドマスターと関わりがあるという疑惑が出ている様です」
今にも「だからなんなのだ」とでも言い出しそうな様子のジョン国王。
本当に要領の悪い人だなといつも頭を悩ませるスーリだが、そんなことは口が裂けても言えない。
「エリス様やウィードさんと深い関わりのあった者達です。15歳という年齢的にも、2人の息子であるという可能性はあり得ます」
ここまで告げてようやく理解できたジョン国王。
「なんだと⋯⋯? あの忌々しい奴らの息子であるならば話は別だ! すぐに始末してしまえ!」
心の中で深いため息をつくスーリ。
とある事情からこのことは黙っていようかとも考えたのだが、後々になって発覚すると暗部の隊長である自分は責任を追及され、首を切られるかもしれない。
それだけでなく、むりやり罪人として投獄されてもおかしくない。
それほどまでにこの男はエリス達のことを恨んでいるのだということを、側で仕えてきたスーリはよく知っている。
「いえ。まだ可能性があるという程度です。それに、仮にもしそうだとしたら間違いなく冒険者ギルドが匿うことでしょう。現段階では色々と情報を集めることが先決かと」
「あの憎たらしいエルフめ⋯⋯。本当に邪魔な女よ。まぁよかろう。もしそのロイとやらが奴らの息子であるとわかったならば、すぐさま始末せよ」
ファルタ王国では魔王軍が攻めてきた際に、国お抱えの騎士団のみでなく冒険者達も戦うことになる。
そのため国側としては、冒険者ギルドと敵対して冒険者達が不利益を被るような事態は避けたいと考えている。
貴重な戦力である冒険者達が他の国へと流れてしまうからだ。
「⋯⋯承知しました」
スーリは今後の方針について思考を張り巡らせながら部屋を後にした。
***
「今日は本当に楽しかったよ! 仲間に入れてくれてありがとね!」
帰り際にカヤが嬉しそうに言った。
そういえば、カヤ用にさっき作ったアイテム渡してなかったな。
「これ、カヤ用に作ったんだ。アイテムバッグと魔核を使った護身アイテムでな。我ながら良い出来だから、良かったら使ってくれ」
受け取ったカヤは少し悪戯な笑みを浮かべこう言った。
「知り合ったばかりの女性にプレゼントなんて、ロイ君ってすけこましなのね!」
そしてその隣で何故か首肯の頷きをみせるターナ。
「⋯⋯おいおい」
俺が冷やかな目を向けると、カヤの表情は元の素直な笑顔に戻った。
「冗談だって〜! まさかアイテムバッグなんてもらえるとか思わないもん! ありがとね!」
調子のいい奴だな⋯⋯。
それからカヤに護身アイテムの使い方を説明しながら寮へ帰り、風呂へ入ってから床に就いた。
今日も充実した1日だったな。
明日が来るのが楽しみだ。
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