第14話 子猫の進化

ツドイ帝国軍がキムラサ町で、ドーマンの妖怪達に蹂躙されている頃、ハルトはダンジョンを進んでいた。


ハルトの懐の子猫が急に騒ぎ出す。


ミィ、ミィ、ミィ、ミィ、ミィ……。


「ん? どうした?」


どうも後ろが気になる様子に子猫を見て、慌てて振り返ると、3人のコボルト兵達が追ってきていた。


ハルトは、槍を構えて迎え撃つ。


「やっと追い付い──」


コボルト兵達もショートソードを抜きながら構えようとした。その時、ハルトは無言で先頭のコボルト兵の喉に槍を突き刺していた。


ドビュシュ!

「んぐっ」


ハルトは素速く槍を抜くと、直ぐ後ろのコボルト兵に槍を突き立てるが、2人のコボルト兵は飛び退き、距離をとった。


「ちっ、敗残兵がぁ!」


コボルト兵はショートソードを抜いて左右に分かれる。


ハルトは2人を視界に入る様に間合いを調整しながら動く。


複数の敵と戦う時はその場で迎え撃つのは下策だ。同時に敵の攻撃に対応する必要があり、どちらかに気を取られると、もう片方の動きが見えなくなる。


従って、左右の敵との間合いを同じにしてはいけない。どちらかとの間合いを詰める必要がある。ハルトは右のコボルトの更に右側に動く事で、右のコボルトの距離を詰めて、左のコボルトのとの距離をとる。


戦場で培った経験から、ハルトは同時に飛び込んで来た2人のコボルト兵に対して、間合いが近く若干速い右のコボルト兵に、カウンターで槍の突きを出した。


一番躱し難い腹を狙う。


それをコボルトは、ショートソードで、右から左に受け流そうとする。


通常真っ直ぐ突く突きは、横からの攻撃に弱い、先端に軽く当てられただけで方向を変えてしまう。


しかしコボルトの受け流しが、コボルトから向かって、槍の右側に当てられるのが分かったハルトは、ショートソードが槍に当たる瞬間、その逆にショートソードを横に払う様に槍に力を入れて突く。


槍を横薙ぎに振りショートソードで受け止めた時に、力が拮抗し槍とショートソードが止まる時の様に、槍は横に払われず、そのまま止まった。


槍の前に進む勢いは無くなったが、ハルトの突きは10cmの距離があれば、充分に相手を突き刺す様に、そこから捻りを加えたモノに変わる。


そうすることで、受け流す事が出来ずコボルト兵の腹に槍が突き刺さった。


ドシュッ!

「ぐふっ!」


ハルトは、槍で刺したコボルト兵をそのまま左に振り回して、左側から迫ってきた、コボルト兵にぶつける。


「うおっ!」

ドガッ!


ハルトは槍を捻りながら抜くと、ぶつかって体勢を崩したコボルト兵の喉に神速で槍を突き刺した。


「ありがとう。気付かなかったら危なかったよ。」


撫でながら子猫に礼を言うハルト。


猫は犬より嗅覚で劣るが、聴覚は優る。子猫がコボルト兵の忍び足を探知して、ハルトに教えてくれたのだ。


その後もハルトはダンジョンの奥に進んでいく。


ダンジョンはモンスターも現れる。子猫はモンスターも探知してもハルトに教えてくれたので、常にん先手をとって、戦いを優位に進める事が出来たハルトは、比較的楽に進む事が出来た。


いつの間にか眷族化したのか、パーティーを組んでたのか、分からないが子猫は明らかレベルアップしている様で、懐から出て来てハルトの足元を歩いており、歩く速さも速くなっていた。


そして、蜘蛛のモンスターを倒して子猫を振り向いた時……。


子猫が飛んでいた!


子猫の背中に鳥の羽が生えていた。


「えええええ!お前モンスターだったのぉ?」

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