「これを焼いて食べてみよう」

 姉は手で丸めた白いものを、ひばちに鉄網を据えて三つ並べ、焼いた。それは本当におもちのようだ。ぷくりとふくれてはじけてしぼむ。その時は、姉の好奇心に乗せられて自分の好奇心こそがそれを求めていたかのようだった。姉の考えはそのままぼくの考えだ。何でも口に入れてしまう三歳児のころのように食べて、味は卵の白身のようだった。

「塩味が足らない」「塩を足してみよう」

姉弟は塩をつまんで白いものを丸めたものにまぶしてみる。のそりと網に乗せる。白いものを丸めたものは炭火に焼かれて背中をきつね色に変色させる。色が濃くならないうちにひっくり返す。おさらにとってしばしさます。おもちのようにのびたりしない。前歯でさくりとかめるのである。何を食べているんだろう。二人でもぐもぐとやる。親指なぶってティッシュで拭く。

 ぼくは姉の方を見ないようにしている。姉は炭火を用意するのが大得意である。なんでも炭火で焼きたがる。海鮮、牛、豚、鶏、羊、なんでもござれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る