5杯目 冒険者ギルドにも酒場はあるんです!

 勇者召喚暦二〇二〇年・六月一〇日・ウンディーネ・天気:晴れ


 イェイ! 今夜も飲んでますよ、シオーネさんは!

 で、ほろ酔い加減で向かっているのは冒険者ギルドに併設された酒場! そう、本日二軒目! つまりは梯子酒ってヤツですね!


 数分後、到着しました冒険者ギルド! 中に入るとお仕事が終わった冒険者たちが賑やかにお酒を酌み交わしています! ヒュ~♪ 私も混ぜてくださいな!


 って、いやいやいや……酔った思考で目的を忘れてはいけません。

 確かこの時間は酒場のカウンターにいるはずなんですよ、彼女が……。

 

 そうして周囲を見回していると……見つけました! カウンター席の端で気配を殺し、ちびちびと寂しくひとり酒をしているその背中!

 アハーッ、エルフィーナ氏ぃ~! ちょっと一緒に飲みましょうよ~♪


 なんて笑顔で近づくと不敵な笑みを浮かべ、


「案外早かったじゃない、シオーネ。ふふっ貴女、妙に律儀なところあるわよね」


 呟き、お酒の入った木杯を傾ける紅眼鏡の金髪美人エルフ……。

 別に~。ただ借りは早く返しておきたいだけです。特にエルフィーナ氏からのは!

 

 隣の席に腰を下ろすと、勝手に運ばれてくるお酒とおつまみ……奢りよ? って、珍しく気前がいいじゃないですか……いや、もしかしてなにかの罠?

 まぁ、飲みますけど……あ、なんかスッキリして飲みやすいですね、このお酒。


 どこの銘柄か尋ねると、さぁ? 商会に安くしておくから気に入ったら仕入れてくれって頼まれた純米吟醸なんだけど……口に合ったのなら良かったわって……。

 なるほど……つまり試供品。奢りとかおかしいと思ったんです……。


 などと考えていると、エルフィーナ氏から渡される一枚の紙切れ。

 はぁ……依頼書ですかぁ。私、もうただの吟遊詩人なんですけどねぇ……。


 愚痴りつつ内容を確認すると、とある商会の護衛依頼でした。さっきのお酒はここ経由ですか。

 けど、これ……数日拘束されますよね? 私、大工の親方のお手伝いがあるんですけど?


 無駄と知りつつ些細な抵抗を試みると、明日からしばらく雨でしょう? その間、作業は中止って聞いたわよ、と微笑むエルフィーナ氏。

 なるほど全て織り込み済みなわけですね……。


「あと、シオーネ? 流石に連日飲み過ぎよ。そろそろ身体を休めなさい。お酒も過ぎると毒になるわよ」


 わぁ~、そちらもお見通し。なるほど、だからこその護衛依頼ですか。この距離だと野営とかもありますからね……。お仕事中に飲むわけにはいけませんし……。


 う~ん……でも、しかたありませんね。借りがあるわけですか。

 分かりました。この依頼、手伝おうじゃないですか。


 色々諦めて引き受けると、シオーネならそう言ってくれると思ってたわ。あぁ、今夜は好きなだけ飲んでくれていいわよ、とニッコリ笑うエルフィーナ氏……狸め。

 私がすでにそこそこ酔っていて、もうあまり飲めないことも見透かしてますね?!


 けど、甘いですよ! 数日飲めない分を飲み溜めするんですから!

 給仕のお姉さん! さっきのお酒とおつまみ追加で! さぁー、飲みますよ! 二次会です!

 


 今夜のお酒

 ユウヒ超ドライ(麦酒)(度数5):一杯

 キックスイの純米酒(度数15):二本と少々

 北に松 純米吟醸(度数14以上15未満):一本と少々


 おつまみ

 卵焼き、タマネギのかき揚げ、ニンジンの金平、サラダ、ご飯、ラーメン

 

 連続飲酒日数:六日目


 うぇっぷ……少し気持ち悪いです。飲み過ぎた? いや、そんなはずは……。


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