武蔵野という大地において

武蔵 ゆう

武蔵野という大地において

貴方はこの大地に生まれた。

私もこの大地に生まれた。

貴方が居て、私が居る。

私が居て、貴方が居る。

貴方が飾りを作り、私が身につける。

貴方が笛を作り、私が笛を吹く。

貴方が私を抱きしめ、私が貴方を抱きしめ返す。

お互いを思いやって、手をつなぎ互いの瞳を交わす。

言葉もなく。

静かに、ただ静かに。

抱きしめあって思いを交わす。

願いは天へと上り、私たちの骸は武蔵野の大地の下に。

貴方の創った想いの欠片も大地の下に。

歴史という時の中で、静かに今も眠る。


貴方はこの大地に生まれた。

私もこの大地に生まれた。

再び巡り合う奇跡に、ただ感謝を。

そして涙を流す。

あの時、天に向けた願いは現実となる。

再び手を取り合う喜びに、ただ涙する。

貴方が居て、私が居る。

私が居て、貴方が居る。

それに感動し、手を握り合う。

あの時のように見つめあい、瞳を交わす。

私が着物を縫い、貴方が羽織る。

貴方が勤めに出て、私は見送る。

歴史という狭間で出会えた感謝を、天に贈る。

この時代には珍しい相愛という相手。

言葉に出来ずとも、瞳に思いを乗せて。

その相手と結ばれる喜びを天と大地に感謝する。

私は眠る、貴方の横で。

貴方は眠る、私とともに骸が大地に還るまで。


貴方はこの大地に生まれた。

私もこの大地に生まれた。

三度巡り会う奇跡に、天へ唯々歓喜の想いを送る。

貴方が居て、私が居る。

私が居て、貴方が居る。

廻る輪廻の中で、三度出会う。

想いを乗せて、瞳を交わす。

互いに右手を相手の頬に寄せ、体温を確かめ合う。

その温かさに、安堵する。

貴方は絵筆を握る。

私は楽器をかまえる。

貴方は私をキャンバスに描き、私は想いを乗せて楽器を奏でる。

貴方は私を暖かく包み込み、私は貴方を柔らかく包み返す。

愛しています、の言葉とともに。

想いを言葉として語り合えることに感謝を乗せて。

想いは廻る、時の流れに乗せて。

私は静かに眠る。貴方の隣で。

ただ静かに……。


悠久の時の中に、想いは今もなお続く。

武蔵野という大地において。

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