第14話 ゲーセン
数時間後。
しばらくの間、深夜にゾンビ殺しまくっていた奴とは思えないほどの元気っぷりで服屋を見て回る七奈についてショッピングモールをうろついた。
途中昼食休憩があったものの、ほぼぶっ続け。
普段は少し運動するだけで「無理ぃ……」とうなだれているのに、女子というのはこういう時は体力が無限になる。とんだチートだよ全く。
もちろん俺はそんなチートはないのでへとへと。
まもなく五時に差し掛かるというところで、七奈は最後に行く場所を決めたようだ。
「ゲームセンター?」
「えぇそうよ。昔よく来たじゃない?」
「確かにそうだな」
「童心に帰るってことで、ここで心を清らかにして素直になりましょ」
「ゲーセンにそんなデトックス効果期待すんなよ」
確かにストレス発散にはなるが、そんな宗教染みたものではない。
第一ゲーセンは素行不良な奴でもくる。というかそういう奴ほど来るというイメージがある。(※あくまでも個人的な意見です)
ゲーセンに来て心清らかになるなら、不良少年たちはゲーセンに入って出てくるころにはデ●ズニーの帽子でもかぶって好青年に生まれ変わっているはずだ。
そんなマジレスを脳内で語りつつも、『ゲーセンで心清らかになる不良少年』を想像しては心の内で自分で笑った。
ほんと、世界がそんな風に単純であればよかったのだが……現実はそうではないのだ。
「さてさてまずは何をしようかしら。クレーンゲーム? それとも対戦系?」
「うーん……まぁ七奈のやりたいやつでいいぞ」
「そうね……じゃあとりあえずはクレーンゲームでもしましょう」
「おう」
こう見えて七奈は大のゲーム好き。
でも引きこもり体質なためゲーセンにはあまり来ない。
——さては今日町に出たのはゲーセンが目的だな?
シメがゲーセンとは……ほんと体力お化けかよ。
「とりあえずあのお菓子を取るわよ」
「ラジャーです」
ビシッと敬礼。
しかし俺は特に何もすることなく、ただただ正確にアームを動かす七奈を見るのみ。
なんともまぁゲームをする美少女というのはミスマッチに見えて実はめちゃくちゃいいんだよなぁ……。
そう感慨にふけっていると、いつの間にか先ほどまであったお菓子のバケツが「ガタン」と音を立てて取り出し口に落ちた。
「まずは一個……ふふっ」
「ゲーセン荒らし降臨してる……」
「まだまだ取っていくわよ」
「お、おう」
俺は準備よく大きめの袋を用意しており、袋を広げて七奈が獲得したお菓子をその中に入れる。
なんか俺、やっぱり手懐けられてるなぁ……。
俺、案外後輩気質なのかもしれない……なんか納得できないけど。
その後、七奈は容赦なくお菓子を取りまくり、ゲーセンにあるお菓子は大体全種類獲得した。
もうこの店が可哀そうで仕方がないです。
それに取りすぎてこれ以上持てないので、対戦系にシフトした。
バスケやダーツなどのゲームをやってみたのだが、結果七奈に惨敗。
俺、いいとこなしじゃねーか。
勝ち誇る七奈。
敗北者の俺。
ここで明確に力量の差が出てしまった俺は、余計に下っ端雑魚キャラ感が増してしまった。
誰か俺に才能を……。
「慶ってほんとゲーム弱いわね」
「…………」
「ふっ」
「鼻で笑うな! 割と本気でショックなんだぞ!」
「日々の鍛錬を怠るからよ」
「ゲームに本気すぎるんですけど⁈ ってか、鍛錬とかあんのかよ!」
「毎日イメトレをね」
「ガチすぎてもう何も言えん……」
いつから幼馴染がこんなにもガチゲーマーになってしまったのだろうか。
知らないところで人成長しすぎだろ……。
「時間もそろそろだし、最後はぱーっと二人で協力プレーしましょ!」
「それはいい提案だ。俺、元気出てきた」
「そうと決まればすぐに行きましょう!」
楽しくて仕方がないのか、待ちきれんと言わんばかりに七奈は俺の手をさりげなくつかんで、協力プレーができるコーナーへと駆けだした。
「ちょ、おい!」
「お、遅いのよ! 全く……」
繋がれた手に、わずかな熱がこもる。
無意識に繋いだのか、今つないだことに気づいたようで、七奈は心底恥ずかしそうにしていた。もちろん俺も恥ずかしい。
しかし一度繋がれた手はほどくタイミングを失い、プレーするゲームが見つかるまでは繋がれたままだった。
なんだかんだで自然と手は離れたものの、少しぎこちない雰囲気で、シメのゲームが行われたのだった。
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