暗部に立ち向かうための準備をしよう

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 あらすじ:冒険者ギルドでのお話

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 強すぎる力は忌み嫌われるという言葉がある。


 都合の良い時だけ戦力としてあてにして、必要なくなったら処分する。なんて自分勝手の言い分だろうか。



しかし、そうなると一つの疑問が湧いてくる。


「エリナは、なぜここに居るんだ?」


俺はそう聞いていた。

もし普通は王宮に招かれるはずだ!


「私の場合は、王都には………招かれなかったかったからよ」


 なるほど、そういったことか。だがしかし、招かれないということがあるのだろうか? 何か考えていたようだが。敢えて詮索するまい。


更に俺は疑問がわいてくる。


「じゃあもう一つ、なぜ俺が同じだとわかった?」


そう続けると、エリナは俺のズボンを指さし


「だってそのジーンズ、この世界にないもの」


そう答えた。




 そりゃあそうか。 上着は物々交換で渡してしまったが、ジーパンはそのままだったな。


 あの露天商はこれも欲しがったが、下半身丸出しにさせるのかと言ったら諦めてくれた。


 下着をはいてるから丸出しってわけではないが、限りなくアウトに近いアウトだろう。





エリナに投げかけた疑問。


 話の流れからして、彼女も俺と同じくどこか別の世界から来たのだろう。


――という事は同じ力を持っていても、おかしくないということに繋がる。






色々話を聞いていると、王宮には以前は異世界からの来訪者はそこそこいたらしい。


例によって救国の勇者と呼ばれる人も何人かいたが、今はほとんどいないのだと。




変な組織が暗躍して異世界人を処分していれば、いずれそうなるのは分かり切った話である。





しかし、幼女管理人様はこういっていた。



【向こうに何人か送り込んだんだけど】

【解決には至らず、状況は日々悪化するばかりなの~】

【そう、もちろん!正常化して欲しいのよ~。】



――何人も送り込んでるのになぜ問題が解決しないんだろう?



 たしかにこのアクセサリーがあれば、異世界からの来訪者には一般人を遥かに凌駕する力がある。


 それの力が男女関わらず備わっているなら、国としてその戦力を求めるのは当然と言える。




 ………まあ今考えていても答えは出ないか。



話の続きをすることにした。


 エリナたちには俺以外にも3人の来訪者が同時期に来たという話をした。


憲兵団に一部連れていかれていることも話した。





「私の場合は宮殿に召喚された側よ。私もあなたのように知人や幼なじみと、一緒に転送された口なのよ」


エリナからは意外な答えが返ってきた。





「グランドフォート王国憲兵団は表向きはスパイ容疑の人物を尋問する組織でもあるが、転生者を王宮に連れて行く役目もあるんですよ」

 そうクレスが続けた。




――それで理解したのだ。




つまりだ。



 連行したのは捕らえて拷問するためでなく、他の異世界からの来訪者を戦力として招いてるのだと。




 ならば、少なくとも皇帝や姫奈の身が急に危なくなることはなさそうだ。――と思っていたのだが……………。



 エリナはそうは思ってないようだ。




「とりあえずだ、ある程度鍛えないと戦力にならんのなら、これから鍛えればいいじゃねぇか?」


アズラックは真顔で言い出した。パンが無ければケーキを食べればいい理論ですね、わかります。


「確かにその通りだし、手伝ってもらえるなら俺は助かるんだが、エリナたちはそれで大丈夫なのか?」


正直足手まといは重々承知の上で聞いてみた。


「そうね。冒険者にとってすぐに戦力になるとわかってる逸材なら、勧誘しない理由なんてないもの」


エリナは擁護してくれる。




 実際出発するのは次の日という事に決まった。



 これから泊ってる宿に案内してくれるようだ。



 宿代は出世払いという事でエリナが貸してくれた。今日は野宿と覚悟してたから助かったぜ。



――宿は冒険者ギルドからかなり近かった。




各自部屋に戻っていく。


俺も部屋に戻るか、そう思ってた矢先にエリナから話しかけられる。


「私ね、少し気になってたんだけど、クウトと一緒に来た友達は心配?」



あいつらか。



 姫奈は、何を考えるかわからないが、あれでいて男どもがほっとかないだろうし当面は大丈夫だろう。


 皇帝は、「姫奈を助けに行く!」といってたが、エレナの話を聞く上ではまず安心だろう。変な行き違いが無ければ、今頃王宮で歓迎会だろう。悪くても牢屋で一晩過ごして翌日は歓迎会になるだろうしな。


 悠斗は情報が無いな。あのノー天気な性格を考えると3人で一番危なさそうなのは悠斗だな。



「いや、1人だけ消息不明だけど、全然心配してない」


そう答えるとエリナは悲しそうな顔をする。


「そっか。私みたいに後悔しないようにしようね」


そういうと自室に戻っていく。


 何か含みのある言葉だったが、何かあったんだろうな。


 今は考えても仕方がない。明日は明日の風が吹くというし、先のことを考えてクヨクヨしてもあんまり意味しな。




しかし、今日一日でいろんなことがあったな。



――まず出会ったエリナという美人さん。

 ぱっと見た感じ年上って感じだな。年齢を聞くのは失礼だけど、場数をかなり踏んできたって感じがする。顔に幼さが残るのに歴戦の戦士って感じだ。



 ………きっと苦労してきたんだろうな。



 ――アズラックという大男、こいつなんか曲者だな。

 

 これも勘でしかないんだが、やばい空気がビンビンする。その空気がからまだ良しとしよう。



 ――クレスという魔術師はこのパーティの良識派って感じだな。


 冷静であり、場を読んだ発言をしていた。何かあった時のストッパーだな。



 ――アリーシャは、なんかやばい。


 どちらの意味かはあえて想像にお任せするが、俺の自制心が持つかどうか。これが色んな意味で一番の心配だったりする。




――そんなわけで俺は、エリナ、アズラック、クレス、アリーシャのパーティと5人で南国へ移動して、モンスター退治に向かうのであった。


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