第45話 バカ発見機


 調査の結果、12の村で畑が焼かれ、水汲みポンプ、回転式コンポストが破壊された。


 人的被害は無く、畑も、焼かれたのは一部で、食糧難の心配は無い。


 それでも、精魂込めて育て、これから収穫を迎えるというタイミングで畑を焼き払われた人々は涙を流し、畑のそばでうずくまっていた。


 被害状況の確認に村々を尋ねて回り、悲しむ人々の姿を目にした時、俺は犯人を、泣くまで殴り飛ばしたい気分になった。


 そして、犯人はすぐにわかった。


 国王派の残党と思われる呟きで、『王殺しのテロリスト共に協力する非国民に鉄槌を下した』という投稿がいくつもあったからだ。


 オウカは、すぐさま軍隊を動かすも、全ての村をカバーすることはできない。




「役に立てなくてごめん」


 ある夜の閣議後、会議室で、俺はオウカに謝った。


 だが、オウカは俺を責めるようなことはしなかった。


「貴君が謝ることではない。これは戦争、我々の領分だ」


 それは分かっている。でも、納得はできなかった。


 最強異世界転移計画書には、大きな穴がある。


 それは、軍事方面だ。


 ファランクス陣形だの、火縄銃だのは、中世時代の戦場だからこそ、効果を発揮するものだ。


 こうした破壊工作を未然に防いだり、犯人たちを見つけるような現代知識チートは無い。


 今まで、散々異世界転移計画書で問題を解決してきたせいか、役に立てないことが、歯がゆくて仕方なかった。


 俺が会議室のテーブルの上で握り拳を震わせると、ナナミがそっと、俺の肩に手を置いてくれた。


「ショウタは防衛大臣までやる気ですか? 荒事は私たちに任せてください」


 続けて、ミイネも椅子に座ると、俺を励ましてくれた。


「そうよショウタ。一人でなんでもかんでもできたら仲間なんていらないじゃない。一人で全部やろうとして独裁政権になった父様を忘れたの?」

「ナナミ、ミイネ……うん、そうだな」


 それで俺は思い出す。


 ラノベや漫画でよくある言葉だ。俺にできないことをお前がやれ、お前にできないことを俺がやる。


 適材適所、メンバーがそれぞれの得意分野を担うことで、チームは強くなる。


 それこそ、異世界転移ラノベの冒険者モノでは、タンク、アタッカー、シューター、サポーターなどのパーティーメンバーが協力し合って敵と戦っている。


 政治も、それと同じだ。


 防衛省の人間じゃない俺が、無理に首を突っ込む必要はないんだ。


 そう思うと、ぐっと気持ちが楽になった。


「二人とも、ありがとう」


 俺が笑みを見せると、ナナミとミイネも笑ってくれた。


 オウカの視線に気づいて彼女を見やると、慈愛のこもった眼差しで俺らの様子を見つめていた。


 いつもは凛としているオウカだけど、こういう母性的な顔をされると、普段とのギャップも相まって、グッときてしまう。


 その感情を見透かされまいと、俺は先手を打つように、オウカへ話しかけた。


「そういえばオウカ、この宮廷の警備状況はどうなっているんだ?」

「それが問題でな。各地の村の警備に兵を割いている故、この宮廷の警備を強化できないのだ。連携の取りやすい、同じパシク解放軍のメンバーで警備はしているのだが、奇襲があった際に守り切れるか、気をもんでいるよ」

「そうか。待つのは精神を削るし、こっちから打って出る方法があればいいんだけど……」

「ショウタ殿、この呟きを見て頂けますか?」


 俺が頭を悩ませていると、さっきからスマホを眺めていたカナが声をかけてきた。


「この呟き、国王派の残党だと思うのですが、呟きが妙なのです」


 妙? と聞き返しながら、俺らはカナのスマホ画面に見入った。


【今夜、オレ様の銃弾で歴史が変わる。首を洗って待っていろよオウカ】

【ふと右の夜空を見上げれば、満天の星と月がある。オレ様が歴史に名を遺すにはピッタリのシチュエーションだ】

【ミニトマトのプランターを蹴飛ばした。邪魔だな】


 そして、拳銃を顔に沿え、ドヤ顔をキメている自撮り画像が投稿されていた。


【奇襲なう】


 そのバカッターぶりに、俺らは表情を失った。


 オウカは、粛々とスマホを操作した。ツイチューブのグループメッセ機能で、宮廷の警備全員に、敵の位置を伝えた。


 俺、ナナミ、カナ、ミイネは、げんなりとした顔を見合わせた。


「「「「これがバカ発見機か……」」」」

  

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【別作にて、あとがきが長く辛い、という指摘を受けましたので、やや短く】 

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