第36話 お慈悲をくださぃいいいいいいい!


 広場へ行くと、そこは地獄絵図だった。


 木の十字架が立てられ、その下に積み上げられた焚火が、地獄の業火のように燃え盛っていた。


 キャンプファイヤーよろしく、その周りを取り囲む村人たちは呪詛と怨嗟を唱え、まるで邪教集団による魔王召喚の儀式だった。


 生贄たる少女の悲鳴が、村中に響き渡る。


「ひぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいい! げぶぉっ! げぶぉっ!」


 灼熱の熱気に肌を焼かれ、黒煙にまかれ咳き込みながらもがき苦しむのは、この国の姫、ミイネだった。


 村人に紛れて、カナが叫んだ。


「喰らうであります! 正義の鉄槌という名の泥団子を!」

 ひゅば ドブシャ!

「ぎぇえええええ! お助けおぉおお! どうか命ばかりはぁ! お慈悲おぉ! お慈悲をくださいぃ!」


 ミイネは村人から罵詈雑言を浴びせられ、涙ながらに命乞いをしていた。


 そこに、一国の姫たるプライドはない。


「何してんだよカナ!? 何があったんだ!?」

「あ、これはショウタ殿! あのメスブタめが、ショウタ殿の慈悲を賜っておきながら村の子供を殴り飛ばしたのです!」


「だってガキ共がこのワタシにむ、虫なんて食べさせるからぁ!」

 イナゴの佃煮とセミの唐揚げだそれぇぇええええええ!

「ぎゃあああ、熱いー熱いー! 火が、火がすぐそこまでぇえええええ!」


 紅蓮の業火は、木の十字架を浸食するように、徐々に登っていく。もう、ミイネの足先に届きそうだ。膝を曲げて、なんとか凌いでいる。


 村人たちは般若の形相で、バーサーカーとなりながら国王の犯してきた罪と恨みを吐きつけ、ミイネは声が裏返る程に絶叫しながらもがき苦しんだ。


「ちょっ、みんなっ、あいつは新産業に必要だから! ああもう!」


 集団ヒステリーと言っても過言ではない村人の興奮状態に、俺は説得を諦めた。


 そして、全力疾走からのジャンプで、木の十字架に、ロケットキックを放った。


 もともと、根本は燃えて炭化していただけに、十字架はぽっきりと折れた。


 ミイネは炎の外に脱出して、九死に一生を得た。


「大丈夫かミイネ!?」


 いくらこいつが極悪人の娘で、こいつ自身もとんだワガママ姫で民衆を苦しめていたとしても、流石に日炙りはやり過ぎだ。


 生まれてきてゴメンナサイと連呼するミイネを縛るロープを解いた。


 途端に、ミイネが抱き着いてくる。


「うぇええん! ありがとうございますぅ! このご恩は一生忘れませんん!」


 涙と鼻水とススだらけの顔を俺の肩にうずめて、ミイネは泣きじゃくった。


「あーうんうん、怖かったな。じゃあミイネ、俺らの改革に協力してくれないかな? そうしたら、俺もみんなを説得して絶対ミイネのこと守るから」


「ほんと!? 本当にワタシのこと守ってくれる!? だって貴方、父様を殺した一味の仲間なんじゃ……」


「だから俺は拉致された日本人だって。この国の人間じゃないからお前に恨みはないんだよ」


「うえぇえん、よかったぁ! ありがとうございますショウタさまぁ!」


 ——様って、取り入るどころのレベルじゃねぇな。


 こうして、超協力的になったミイネのおかげで、俺らは高品質なカカオやコーヒー、果物などの種、苗、木が手に入った。それはいいのだが、一つ疑問が。





 宮廷の執務室で、俺はオウカたちに聞いた。


「なぁ、今回あらためて国王の悪政ぶりがわかったんだけど、みんな貧しくて食うや食わずの生活だったんだよな?」

「その通りだ」


 オウカやナナミ、カナや、他の隊長たちが頷く。


「でも、ナナミって、子供の頃から巨乳だったんだよな?」

「大きくないです! ちょっと大き目なだけです!」


 見事な巨乳を抱き隠し、抗議をするナナミを無視して、オウカに視線を投げる。


「なんでみんな、そんなバインバインなんだよ?」


 すると、オウカは豊乳を張りながら答えた。


「パシク人の女は胸、尻、ふとももの順に太り、ウエスト、腕、脚の順に痩せる体質なのだ。それに、胸は乳腺が多いから、他国民ほど脂肪の塊ではない。故にこの張りと弾力だ」


 エロ雑学で、乳腺が少ない胸ほど垂れやすく、乳腺が多い胸ほど張りと弾力があり垂れにくい。そう聞いたことがある。


 パシク人てチートだなぁ、と呆れる今日この頃である。


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tamine-TAさん

レビューを書いてくれてありがとうございます。


コメ返しならぬ、レビュー返しを。


しかしここに至ってまだストックホルム症候群の兆しすら無いのは実生活を上回るほどの妄想でタカハシの脳内は埋まっているからなのか?

 まぁナナミはピストルで脅しますからねww

 みんながデレまくりだったら篭絡されてますよww


ところで乗って来た飛行機は帰らせたのだろうか?そのパイロットさんも閑話のネタになりそう。

 機長は40話に登場予定です。楽しみにしてください。



>蛇籠導入者には合掌であるが作中の彼にもその心配は?

 あ、すいません。これはどういう意味ですか?

 蛇篭って、川沿いのアレですよね。


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 50000PV達成アンド★200達成です。

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