第二話 討伐軍進発
天下に轟く
海賊を討伐するという名目には過剰な戦力であるが、
「海賊をいちいち虱潰しにするのは時間も手間も掛かる。それよりは大軍を見せつけて、さっさと降伏させてしまう方が手っ取り早い」
名目上とはいえ討伐軍の総司令官の座に就いた
「その上で賊の跋扈の元凶を取り除く。これが今回の討伐軍の目的である」
「内海最大の賊・
主立った面々の中でも最も容貌魁偉な大男、
「
彼の一言に、その場の空気は一変した。それはつまり、
「黒幕の名は?」
「
その名を耳にして色めき立つ諸将の中で、顔色を変えなかったふたりは
作戦会議のやり取りは、このふたりに
ふたりの顔を視線だけで見比べてから、
「内海の治安を乱す賊の首魁、
***
「だからってお前たちまで一緒についてくることはなかっただろう」
困り顔の
「まさかか弱い女ふたりを、見知らぬ土地に置いてけぼりにするつもりだったの?」
そう言われると
「ごめんなさい、セン。でも私もここまで来たら、最後まで見届けたいんです」
「まあ、あんたがそう言うんなら、仕方ないかな」
「ちょっと
「ついてきたもんはしょうがないけど、なるべくこの部屋からは出てくれるなよ。ここなら戦になっても、そう簡単には賊も迫ってこないだろうから」
「やっぱり戦闘になりそうなんですか?」
不安そうな表情のキムに、
「大丈夫さ。島主様の作戦は上手くいってる。この大船団が近づくだけで近隣の海賊たちは怖れを成して、こぞって頭を下げに殺到しているって話だ」
「ただ肝心の
組んだ腕から片手を持ち上げて、
彼の怪我は、キムが書いた『大洋伝』の筋書き通りなのだとは、
「
「まあな」
「関銭払う代わりに不戦の約定を結んだって、島主様にも言ってもんね」
「関銭については島主様からの支援もあったし、あいつも上手いこと中から手を回して、むしろ連中が睨みをきかせてたから内海は安全だった」
その台詞に
「それがいきなり
「――なんで?」
眉根を寄せたまま、
「なんで
「なんでって、そりゃ」
突然の
「海賊との交渉には俺も
「それにしたって海賊でしょう? いつ裏切られてもおかしくないような相手だって、普段の
さらにずいと顔を前に突き出した
「さっき、『あいつ』って言ってたよね。『あいつ』って誰よ」
思わぬ
「……俺、そんなこと言ったか?」
その目に耐えかねて
「
思いがけない名を耳にして、
「――
驚愕する
「
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