神は、俺が嫌いなのか

 そして、7日後の朝。所持しているカードのリストはこうだった。


・【白カード】ファイアボルト×3、ヒール×2、ぷちラッキー、野営セット、アイスボルト×2、誰でもカリスマン、サンダーボルト×4、あっち向いてホイ、ロックシュート、木人召喚×3、ピットフォール×2、そこそこ美味しいお肉、阻む暴風×2、厳選フルーツセット、念話、見えざる拳、天の落とし物、パワースラッシュ、丈夫な服、トレジャーハンマー

・【銀カード】えっちなアメイヴァもどき、必中必撃ケツストライカー、グレートヒール、魔力補正(小)、ミスリルの長剣、達人の勘、トルネード

・【金カード】浄化聖域


「……神は、俺が嫌いなのか?」

「そ、そんな事ないと思いますよ! ほら、この【トルネード】なんか良いカードですよ!」

「竜巻魔法か……確かに良いカードだし【浄化聖域】も凄いカードではあるけど……」


【銀】トルネード……敵に向かう小規模の竜巻を作り出す。籠めた魔力によって規模・強さが増加する。

【金】浄化聖域……一定範囲内を浄化し、半永続的に聖域化する。


 トルネードは実際強力なカードだろう。今度の試合でも役に立つに違いない。しかし浄化聖域は人間相手では意味がない。


「大体【えっちなアメイヴァもどき】って……なんだよコレ……」


【銀】えっちなアメイヴァもどき……服や防具だけを溶かすドロドロの粘液。生物ではない。1時間で消滅する。


「う、うーん……」


 確かにコレに関してはレイアもフォローのしようがない。ないが……良いカードが混ざっているのも、また事実なのだ。


「とにかく、これで戦術を組み立てるしかありません。やりましょう、ヴォード様!」

「……ま、そうだな。妙なのが目立つだけで、ちゃんと使えるカードも多いんだ。やってやる……!」


 まず確実に戦力と言えるのはファイアボルト、アイスボルト、サンダーボルト、ロックシュートの4種だ。ヴォードの魔力では最低限の威力しか出せないが、【魔力補正(小)】のカードがある。


【銀】魔力補正(小)……僅かな魔力補正を永続的に得る。


 このカードがあれば、ひょっとしたら多少は威力を上げられるかもしれないし、今使わない理由がない。


「よし……【魔力補正(小)】!」


 ヴォードがカードを構え唱えると、カードは光となって解け、ヴォードの中へと入り込んでくる。それと同時に感じたのは……自分の中に感じる魔力が僅かに……しかし確かに強くなった感覚だった。


「……分かる。確かに俺の中で、何かが変わった……!」

「良かったですね、ヴォード様!」

(まあ、補正(小)で得られるのは本当に僅かなものなんですけど……それを今言う必要もないですしね)


 何しろ、ヴォードが生まれて初めて得た能力補正だ。あえて水を差す必要もないとレイアは心の中だけで頷く。

 そして同時に、こうも思っていた。確かに使えるカードは少ないように見える。しかし、それでもどうにかしなければならない。その為にはどうすればいいか……と、そう考え始めたところでヴォードが「あっ」と声をあげる。


「ど、どうしましたヴォード様?」

「レイア」

「はい。えっと……?」


 見つめたヴォードの顔は、何かを思いついたような……そんな楽しそうな表情が浮かんでいる。


「勝つ方法……思いついたぞ」

「ええっ!? ど、どうするんですか!?」

「まだ考え付いただけって段階だけどな……」


 言いながら、ヴォードが示したのは一枚のカード。それを見て、レイアは思わず目を丸くする。


「そのカードが……ですか?」

「ああ。これを起点にして、俺の勝利を組み立てる」


 白カード【あっち向いてホイ】。それをレイアに見せながら、ヴォードはニヤリと笑ってみせた。

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