追憶

なゆは朝一番の教室が好き。

朝の日の光を浴びると浄化されるって

本にかいてあったから

なゆももしかしたらきれいになれるかも

知れない。

朝は颯ちゃんと凛太郎にも会える。

二人はいつも私に優しくしてくれるから

大好き。

二人とずっと一緒にいたい。

…出来るならずっと。

ビー玉を天井に翳すと朝の光を

浴びてキラキラと光っている。

きれいだなぁ。

なゆもこんなふうにきれいに

なりたいなぁ。


―なゆ、今日から君のお母さんになる人だ。

こんな人お母さんじゃない。

私にとってお母さんは一人だけだもん。


―ほら泣かないで。よしよし。

やっぱりかわいいわね。あの子とは大違い。

私はあの子じゃない。

私にはなゆって名前があるのに。


(この子さえいなかったら幸せになれた

のかな。)

オギャアオギャア

(今なゆはなにしようとしたの?

そんなのあの汚い大人達と

同じになっちゃう。

嫌。こんな汚い気持ちなんて持ちたく

ないのに。)


「「なゆが好きだ。」」

ごめんね颯ちゃん、凛太郎。

本当は知ってたよ

二人が私のことを好きだって。

でもなゆはね自分の気持ちを一番考えたの。

二人の気持ちに気づかなかったら

ずっと一緒にいれるってそう思ったから

なゆね。このまま心がどんどん汚くなって

いくのにもう耐えられないの。

もしかしたら大人になったら

もっと汚くなっちゃうかもしれない。

だからなゆはきれいなものに囲まれて

きれいなままで死にたいの。

二人とも大好きだよ。なゆと一緒に

いてくれて笑ってくれてありがとう。

二人はなゆにとって一番きれいで

眩しいものだったから汚したくないんだ。

ごめんね。



お父さん、なんで裸なの?その横の女の人は誰?

―なゆ。今見たことはお母さんには絶対に

内緒だぞ。

内緒?

―そう内緒だ。なゆはいい子だから

できるよな?

うん。分かった。


お母さんどうして泣いてるの?

―なゆ。お父さんは今日からいないものだと思いなさい。

どうして?ねぇどうしてなの?お母さん!



お母さん!ねぇお父さん、お母さんが…

―なゆ、お前喋ったのか?

え?お父さん、喋ったってなんのこと?

―お前のせいだ。

お前のせいで母さんは死んだんだ!

私のせいなの?私のせいでお母さんは

死んだの?

―あぁ。そうだ。なゆが悪い子だから

母さんは死んだんだ。

なゆのせいなの?

―あぁ。なゆが汚い子だからいけないんだ。

なゆの心が汚れているから。


あぁ、きれい。今きっと世界中で

一番なゆがきれい。

だから生まれ変わったら今度こそきれいになれるよね。

お父さん。お母さん。

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青い果実 石田夏目 @beerbeer

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