飽きる

 子供の頃、某作家H.Tさんのシリーズ作品(仮に『A』としましょうか)が大好きで、本屋に行くたびに「新刊出てないかな?」と本棚を覗いていました。


 その作家さんは比較的遅筆な方で、『A』の発行ペースは2年に1巻出ればいい方でした。


 それでも足繁く本屋に通って、その作家さんの名前の新刊を見つけて歓喜に震えながらその本を手に取ると、『A』とは全く関係ない新しいタイトルだったりするんですよ。


「なんで『A』を書かないで新作なんて書いてんだよ? せめて『A 』を完結させてから新作に手をつけろよな。こちとら『A』の新作を年単位で心待ちにしてるんだからよぉ!!」


 と思って一人で憤っていました。

 読者の視点からしたら物凄く真っ当な意見だと思います。あの時の怒りは今でも正当な物だと考えています。



 でも、いざ自分で書く側になってみて、数万字を超える長編を書いていると、とても実感できる事があるんです。


「同じキャラと設定で似た様な話をずっと書いていると『飽きる』よね」


 という事を。

 もちろん作家本人の、キャラクターや世界設定への愛情の深さにもよるでしょうが、私の場合はまず「キャラクター同士の掛け合いの引き出しが無くなってくる」のがあります。


 私の作品の場合、アンジェラとシナモン、アンジェラとヘレン、71ナナヒトと鈴代、の会話パターンが多いのですが、執筆中に『この切り返し前にも使ったな』とか『言わせてみたけど、このキャラはこんなことを言う子じゃないな』とか思う事しきりです。


 そうなると文章のこじつけが増えて雑な文になってしまうんですね。それを自分で読み返して、面白くなくて作品に対するモチベーションが下がってしまう。


 そこで気晴らしに別の舞台で、別のキャラクターを設定して遊んでみると結構楽しいんですよね。


 んでその『結構楽しい』が長じて1冊分くらい書いてしまう、と。そして動機が『気晴らし』なので大した構成もせずにぶつ切りの1巻だけ、とか2巻組前後編とかで満足して終わってしまうというパターンですね。


 ここにきてようやく作家さんの気持ちが分かりました。『A』を書いていた作家先生も飽きちゃったんですよね、きっと…。



 念の為に書いておきますが、私自身が「ロボ電」に飽きてしまった、という事ではありませんからね? 楽しんで執筆してますよ?


 多分…。


 あ、現在『気晴らし』で学園ギャグ物をちょこちょこ書いてます。少し書き溜めたら改めて発表しますね。

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