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「探し物って何?」

「大人たちがこそこそと何かやっている現場を見たことがないか?」


 このキャリーという少女が、奴隷商の居場所自体を知っているかというのはグレッシオたちには分からない。



 こんなにも小さくて幼い少女が何を知っているのかまでは判断がつかないのだ。

 だからこそ、そういう聞き方をした。



 グレッシオがキャリーに話しかけている間、マドロラ、ジョエロワ、クシミールは一切口を開くことをしなかった。それでいて少女であろうともキャリーの事は警戒した様子を見せている。



 マドロラ自身が連れてきた少女であるが、キャリーを信用できるか否かはまだ判断がつかないのだ。







「ある」



 ある、と口にした少女の表情は何処か暗かった。


 これは本格的に何かをキャリーは知っているのかもしれないとグレッシオは思う。





「……それを、私が知っていたとしてどうするの」

「俺達はその大人たちに用事があるからさ」

「用事……」



 キャリーの瞳は何とも言えない表情をしていた。



 それがそのこそこそしている大人たちが何をしているか知った上で、それを嫌悪しているからなのか。

 それとも別の事を考えてその大人たちを探しているグレッシオたちに何か思う事があるのか。



 グレッシオたちには何の判断もつかなかった。



 さて、何か知っているらしいキャリーからどのように情報を聞き出そうか。などとグレッシオたちが考えている間にキャリーは口を開いた。









「――グレさんたちは、その大人たちのことを捕まえに来たの?」

「違うな。寧ろ利用しに来た」

「じゃあ、グレさんたちは悪い大人?」

「悪い大人かどうかはキャリーが判断すればいい」



 キャリーはグレッシオたちが用事があると言ったのを、彼らを粛正しにきたのではないかと思っていたらしい。

 

 キャリーはグレッシオの言葉に考え込むような仕草をする。







「キャリーはその大人たちが捕まると困るのか?」

「困る」

「それはなんでだ?」

「私たちは、その大人たちに雇われて色々もらってる。あの人たちがいなくなったら困るから。あの人たちは好きではない。だけど、あの人たちがいないと生活が成り立たない人いるから」



 このウキヤの街で貧困層が生きていくことはよっぽど難しいのだとそれがグレッシオにも理解が出来る。



 このウキヤの街は、富裕層と貧困層の差がそれだけ大きいのであった。




 捕まってもおかしくない非正規の奴隷商。正義感の強い人物であるのならば、そんなものは存在してはいけないと粛清に向かうのかもしれない。

 それでもそれがなくなれば困る人がいるというのも事実なのである。悪を粛正するというのならば、その周りの悪を粛正することにより、大変な目に遭ってしまう人々のことも考えてやらなければならないのである。





「そうなんだな。俺達は利用したいだけだ。案内してくれるか? 悪いようにはしない」

「……うん」




 グレッシオの問いかけに、キャリーは頷いてくれた。






 そしてグレッシオたちは、キャリーからこのウキヤの街の貧困層のエリアでひっそりと動いている大人たちの情報を手に入れることになった。




 その後、一通り情報を話した後、キャリーは眠たそうな仕草をしていた。そのため、マドロラと一緒に宿の部屋で休むことになった。マドロラはキャリーが眠ってからまたグレッシオたちの部屋へと戻ってくると言っていた。




 グレッシオ、ジョエロワ、クシミールはグレッシオとクシミールの泊っている部屋で会話を交わす。







「非正規の奴隷商だけではなく、この街は他にも色んな事をやっている連中がいるみたいだな」

「これだけ大きな街で、中央からも目が届きにくい場所だからな。だからこそそれだけ動いている裏の連中が多いんだろう」



 グレッシオの言葉にジョエロワはそのように答える。



 ニガレーダ王国にも裏組織というのは存在している。その裏組織といかに国にとって損害が出てこないように付き合っていくかが重要なのである。

 ニガレーダ王国は小さな国なので、裏組織に呑みこまれてしまう可能性も十分にあった。実際に聖女さまが没した後は、色々大変だったらしいとグレッシオは父に聞いていた。



 国王であるカシオが何とか裏組織たちに付け込まれることがなく、この国を回していけているが、いつそういう組織につけこまれるかどうかも分からないのである。





「ひとまず明日になったらキャリーに道案内をしてもらって、その大人たちの元へ行くか」



 キャリーはそのこそこそしていた大人たちが何をしていたのかというのを正確にわかっているわけではないらしい。

 少なくとも奴隷商らしい人々はいるらしいのだが、それが本当にグレッシオたちが探している非正規の奴隷商たちであるのかというのはまだ分からない。



 それが求めている存在であるのならばよいが、そうではない存在であるのならばややこしいことになる可能性も十分に高い。


 とはいえ、接触しない事にはどうにもならない。

 そんなわけでグレッシオたちはキャリーに案内をしてもらい、その人々に接触することを決めるのであった。




 その後はキャリーが眠ったからと合流したマドロラも踏まえて、明日の日程について話すのであった。それが終わった後は、彼らは疲れをとるために眠りにつくのであった。




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