第2話 幼少期 2

「……おはよう。」


「「……お、おはよう」」


 僕がした挨拶はいつもよりなんだか弱々しくて、それによってお母さんとお父さんは、遠慮したのか2人の挨拶まで少し弱々しいかった。


「ご飯、できたよ……?」


「分かっ……た。」


 そして、いつものようにイスに座る。


「「「……いただきます。」」」


 僕は、このことを言うべきなのか、言わないべきなのか迷った。でも、こんなぎこちない感じがずっと続くと考えると嫌だったので、僕は打ち明けることにした。


 ふぅ……。はぁ……ふぅ……。


「ねぇ……?」


「カエデ……なに?」


「あの、僕の職業のことなんだけど、村人だったんだ。それで、スキルも【農業】っていうスキルで……。」


「そ、そうだったんだね。」


「そうだったのか……。」


「でもね、頑張るから。勇者くらい、強くなれるように……!」


 無理だということは分かっている。勇者より強くなる前に、成長限界がきてしまうんだから。


 でも……お母さんとお父さんに悔しい思いをさせるわけにはいかない。


 そのために、僕は鍛錬を積むことに決めたのだった。


「……わかった。私も応援するわ!」


「あぁ、俺も、暇なときに手伝ってやるよ、カエデ。」


「ありがとう!」


 そして、さっきのようなぎこちない空間のときよりは、いつものような空間に近づけることができた。


 ご飯を食べ終わると、早速、外に出て木でできた剣を振り続けた。


 1……2……3……4……。


 そして、その間も、僕に何ができるのかを考え続ける。


 ……そうだっ!1つだけ、村人にも可能性があったんだ。


 その職業の成長限界に達するか、またはレベルが100の倍数になると、1つだけではあるんだけど、スキルが増えるのを忘れていた!


 これで、もしかしたらすごいスキルを神様からもらえるかもしれない。これで、喜んでもらえるかもしれない!


 それしか望みはないんだから。


 僕は、目標を決めた。


『村人の成長限界……つまり、レベルを10にして、スキルを新しく得ること』


 これで、なんとかお母さんとお父さんを喜ばせてあげたい!


 そして、まずは魔物を倒せるようになるために、ずっと木でできた剣を振り続けたのだった。


「なぁ、カエデ。俺が剣術を教えてやるよ。多分、成長限界まで上げる気なんだろ?それなら、魔物を倒さないといけない。そのために俺が鍛えてやる。」


「ありがとう。」


 そして、今までは普通に遊んで暮らしていたことに少し後悔しながらも、僕はお父さんに剣術について学んだ。


 剣術というスキルは、剣をふるときに技術だったり力だったりが上がるらしい。つまり、何年も努力すれば、自分の力でも再現しようと思えばできるということ。


 そして、技術を……スキルを自分の力で再現するために、徹底的に勉強して、いつの間にか2年のときが過ぎていた。


「父さん!今日も稽古しよう。」


「おう!ちょっと今日は模擬戦してみようと思うから、集中しておけよ。」


「うん!」


 2年のときが経って、色々と変わっているところがある。2年前は、母さんのことをお母さん、父さんのことをお父さんといっていたのだが……。


 今では、母さん、父さんという呼び方になったりしている。


 他にも、剣を扱う技術力についても、修行内容についても。


 基本のことなんだが、剣術スキルは、それを持っているだけで努力しなくとも、技術力を持つことができるものだ。


 …………まぁ、努力することで、さらにキレみたいなものが良くなり、技術力がさらに上昇したりするが。


 まぁ、そして、僕はその剣術のなかの技術を、2つだけなんだが習得することができた。


そして、今日は『それら』がきちんとできているかを確認するために、模擬戦をする。


「よしっ、じゃあ始めるぞ。」


「うん。用意はもう出来ているよ。」


「そうか?なら…………始めっ!!」


 まずは……。


「《縮地》……!」


 1つ目のスキルはコレ。《縮地》と呼ばれる剣の……というよりは体術のような気もするけど、技術。


 これは、一気に相手との距離を縮めたり離したりすることができる。


 その技術を使って、父さんの後ろへまわろうとする。


 しかし、僕がそうするのだと、予想していたのか、父さんは後ろを向いて剣を振っていた。


「ふっ……!」


「くっ……。」


 今から《縮地》をしようとしても、明らかに間に合わないな。なら、この剣を受け止めるまでだ!


「《重量操作》」


バンッ!


 これは、僕は習得することが出来ていない。この《重量操作》は、剣の重量を変えることができる。


 それによって、僕に来る圧みたいなものは、とんでもないほどだ。剣に直接当たっているわけでもないのに、腕がちぎれそうだ。


 そして、なんとか一瞬だけなのだけど、父さんの剣の動きを止めたら、もう一度縮地を使う。


「もう一度縮地だ!」


 そして……!


「《気功剣》……!」


 これが、僕が習得することが出来た、もう1つの技術だ。


 《気功剣》は、剣に『気』……魔力とはまた違う、人間なら全員に存在するものを剣に乗せて攻撃する技術。


 運がいいのか、その気の量が、普通の人に比べてかなりと言っていいほど多い量あったために、スキルを持つ父さんと、同じレベルの《気功剣》を放つことができる。


「くっ……!」


 結構、父さんもきつそうな顔をしている。まぁ、父さんの攻撃が当たったようなものなのだからね。


「そして……《縮地》《気功剣》」


「くっ……!さすがだな……!」


「これで、僕の勝ちだ……!」


「それはどうかな?《縮地》《軽身》《俊足》《重量操作》」


 その瞬間、僕の視界から父さんの身体が消えた。そして、その途端に僕の意識が刈り取られて途切れた。


 さすが、父さんだ。


 僕は、意識が途切れたのは、そう考えるのと、同時のことだった。




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