第17話 台風(たいふう)

今朝のテレビのニュースで台風が発生したと言っている。ひとつならずとも2つもである。連続して日本に接近する進路(しんろ)予想(よそう)だそうだ。これは子供(こども)達(たち)が喜ぶ。

高知(こうち)は台風(たいふう)銀座(ぎんざ)と言われる地域で年間多くの台風が上陸(じょうりく)する。かすめていくものを含めれば他の地方の比(ひ)ではない。台風の怖(こわ)さを嫌(いや)というほどよく知っている。

他(た)府県(ふけん)の人は台風の本当の怖さを良く知らないようだ。テレビで見て「ヒエー!すごい波!すごいすごい風がすごい!」等と言っているだけである。

「台風が来る」というと、窓に『ベニヤ板』板を打ちつけたりするらしいのだが、それは風の力を知らない人たちが犯(おか)す間違(まちが)いで、かえって危険である。

「マ~大丈夫、たいしたことはない。」と自転車や屋外に置いてある強風で飛んでいきそうなものだけでなく、植木(うえき)鉢(ばち)すら片づけない人も多いらしい。

そんな人たちは台風の怖さと楽しみ方を知らないようだ。

台風は確かに怖いが、又、ほんのちょっとの楽しみをもたらしてくれることもある。被害(ひがい)が出なかった場合にかぎられるが、楽しみようによっては……ではあるが……

九州(きゅうしゅう)や近畿(きんき)南部(なんぶ)の多くの地域でも高知と同じだろうが海から上陸してくる台風は強烈(きょうれつ)である。

風は強烈で立ってはいられない。傘(かさ)など差しても『メリーポピンズ』状態(じょうたい)で何の役にも立たない。

車も大きく揺(ゆ)れるだけでなく勝手(かって)に動いてしまう。

もし迂闊(うかつ)にドアを開閉(かいへい)などして指など挟(はさ)まれた時には指が千切(ちぎ)れ飛んで行く。

看板(かんばん)は飛ぶし電線(でんせん)は切れて地面でバチバチ火花を散らしていて近くに行くと感電(かんでん)することもある。

雨粒(あまつぶ)が顔に当たると小石(こいし)が当たっているほど痛く、血が出るのではないかと思われるほど痛い。

小枝(こえだ)が飛んで来ようものなら体に刺さることもある。小枝ですら危険なのだ。

だから風で飛びそうなものはすべて片づけ、移動できないものは縛(しば)り付けるのである・

こんな危険があるから「台風が接近」ということになれば、学校も休み、会社も休み、商店も休みとなり、ほとんどの人間が家にこもっている。

子供は「やった‼ 台風だ‼ 学校が休みだ‼」と大喜びである。できれば台風が真上(まうえ)を通過(つうか)することを望んでいる。

台風の進路(しんろ)の右は風が強く、左は大雨になる。しかし真上(まうえ)を通過すればどちらも真ん中であるから両方。しかしそれとは引き換えに、大きな楽しみがある。台風の目である。

台風が近づき風雨(ふうう)がどんどん強くなりそのピークに達したと思われるその時、突然(とつぜん)雨と風が止(や)み、さっきまでの轟音(ごうおん)が聞こえなくなる。

『ん?台風もう終わり?』と外に出てみると、地面は木の枝や葉っぱだらけで、あちこちにものが散乱(さんらん)しているのだが、空には一面(いちめん)の青空(あおぞら)が広がり、風も全くない無風(むふう)状態(じょうたい)である。動いているのは、どういう訳(わけ)か不運(ふうん)にも台風で地面に落とされたとみられる小鳥(ことり)だけである。

そんな屋外(おくがい)の風景(ふうけい)に感心していると、再び突然(とつぜん)風が吹き始め雨も降り始める。そしてすぐに台風の猛烈(もうれつ)な風雨(ふうう)と轟音(ごうおん)が始まり、台風が始まる。急いで家の中に駆け込み、再開(さいかい)された台風の風雨の轟音(ごうおん)と家の揺(ゆ)れを感じながら台風が通過(つうか)するのを待つ。

「こんな台風の中で勉強など気が散って出来ない。宿題があるわけでもないし、みんなで何かして遊ぼう‼」子供たちは台風が過ぎ去るまで、平気(へいき)で家の中で遊んでいる。

台風が去ったら去ったで、外に出てどんなものが散乱(さんらん)しているかとか見て回る、その楽しみが来るまで……。

台風の本当の怖さと、してはいけない事をしっかり理解していれば、楽しむことができることもある。


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