要素・証明 8

 雪もそろと消えてしまう。南の日に記憶を照らして、水の印刷は昔の部屋で済んでいた。

 鉄の網は大きな骨を掛けたまま、それがクジラの骨と伝えながら残される。海の底の生き物に、クジラは含まれていたから。

 博物学者の人がいた。近づくと薬品の匂いがして、心をくすぐられた。その想いをとっておけばよかったのに。

 彼は大洋の人と言いながら、昔はどこかで旅に出た。さようならは言わないで、名前だけが今も図鑑の上に遺されて。

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