謎の少女

 ところで胡嬢さんなんだけど金髪ロングにキツネ耳、同じ色の尻尾

 ちょっと吊り目に少し幼さが残る顔。それなのに素晴らしいボディ

 カワイさと妖艶さが合わさって卑怯なりよ。それがスリット入ったチャイナドレス着てんだぜ

 対抗できんの、なぎちゃんくらいじゃね? ゲームじゃなければ落ち込んどるよ、ホンマ


 あ! なぎちゃんで思い出した

「すいません。ちょっと時間ください」

「ん、構わんよ」

 お爺ちゃんとの約束を果たさなきゃ


 プルルルル、ガチャ

『はーい、じじいじゃよ』

 浮かれてやがる。テレフォン画面の映像をONにして覗き込む、わたし

『ぶはっ! 知り合いにカメレオンは、おらんはずじゃが……』

「わーたーしーだーよー。これから電話するから、もうちょい待ってて」

『面白い事になっとるのう。それで、わしはどうすればええんじゃ?』

「イベントやってると思う。会場に行ってみれば?」

 アップデート後のイベント情報を見てたからね

「違ったら、また連絡するよ」

『おう、分かった。じゃあの』


 ガチャ


 ふう。次は、なぎちゃんか


『もしもし。美咲ちゃん?』

「やっほー。準備できたよー」

『え! もう届いたの!?』

 じい様から譲ってもらった事を説明し、直ぐには合流出来ない事を詫びる。あとは、お爺ちゃんが挨拶に行く事を伝えていると電話越しに、バカ笑いが聞こえた

 間違いなく、お爺ちゃんだ

「来たみたいね、それじゃまたねー」


 さてと

「お待たせしました」

「……電話をするカメレオン。シュールな絵面だったぞ」

 うるさいやい。ところで、この後は何するんだろ

「実はアジトというか隠れ家が在ってな。そこに向かっている」

 

 しばらくすると竹林があり、そこを通る細い道を行く。しんと静まり返っていて、わたしたちの足音しかしない

 やがて茅葺き屋根の建物が見えてきた。玄関から入ってすぐに違和感がする

「気づいたかい?外からの見た目と中の広さが違うのさ」

 外からは小さい庵にしか見えないが、中は朱塗りの柱に畳敷きになっており装飾は中華風と和風が上手く混ざった造りだ

 障子に仕切られた部屋も多数あり、そのひとつへ招かれた


「ようこそ、我らがアジトへ。実を言うと私達は少数派でね、コソコソ活動してるのさ」

 うーむ、弱小勢力の頭領って感じかな。それより今後の行動方針なんだけど……

「まあ、焦らないで。ひとつ私が出すクエストでも受けてくれないかい?」


 カメレオン、冒険者デビュー! とはいきませんよね。この姿で何やっていいのかも分からんですから


 ポーン!

 クエストが提示されました


 ~初級クエスト~

 【アジト内の虫を一掃せよ】

 期限:無期限

 報酬:???


 このクエストを受けますか?

   はい/いいえ


……なるほど食いまくれと。報酬は、まあ初級だしくれるだけマシだよね

 はい、受けます


「よし、じゃあ頼むよ。そうだ案内を付けよう、胡小嬢ここじょういるかい?」


「あい、あねさま」

 ポンッと煙と共に現れたのは……ふおおおお! かわいいいい!!

 ちっちゃな胡嬢さんだ。小学校の低学年くらいの身長で巫女服を着ている


「この子に案内してもらうといい。ほら挨拶しなさい」

「あい、あねさまの妹で胡小嬢といいます。よろしくです」

 ペコッと頭をさげるココジョーちゃん。いいね! いいね! 頭の上の耳と耳の間によじ登ろう

 よいしょっと。おー、フワッフワである


「よし、じゃあココちゃんGo!」

「ココ? あい! ゴーです」

 バタバタ走りながら、進むココちゃん。おおう、振動ががガガガ

 思ったより、かなり広い建物だなあ。一階の中心が中庭になってて、それを囲むように建ってる

 回の字みたいな感じで、上に高い。こりゃ時間かかりますわ

 ココちゃんの案内は明快で障子をバンバン開けながら

「食堂です!」

「だんわ室です!」

「あ、ごめんなさいです」

といった具合だ。虫取はどうするのかと思ったら中庭でココちゃんが何やら始めた。なーにそれ?

「これはシューチュー菊を乾燥させた物です。これで、いちもうだじんです」

 えーと、集虫菊かな。除虫菊の反対か?

 香炉から煙が昇ると、何やら爬虫類の嗅覚にビンビン反応が来ましたわ。おうおう大漁ですわこりゃ

 一匹ずつ捕ってくのは面倒と考えたわたしは、舌を荒縄のようにブンブンと振り回し片っぱしから絡め捕っていった

「はわ~、すごいです」

 はっはっは~、ハエ捕り紙も真っ青だぜ~


 おえ、調子に乗りすぎた。虫取や~チョコの嵐が口の中~

 む、一字多いか。じゃなくて、いろんな味が渾然一体ですよ

「ココちゃん~、お水ちょうだ~い」

「あいです。水よ出ろ~」

 ほほう、水魔法ですか。なかなか美味しい水ですな


 ポーン!

 クエストをクリアしました。報告が可能です


 お! クリアしたようです。戻るぞ~

「ココちゃん、終わったよ~」

「あいです。あねさまの所に戻るです」


 

「おや、早かったね」

「あいです。こう、舌がビュビューンってグルグル~です」

 ココちゃん、それは伝わるのかい?

「なるほど、そりゃ凄いね」

 伝わったよ!


「さて、ご褒美をあげる前にひとつだけ言っておこう」

 おや、胡嬢さんの目が鋭くなりましたよ

「モモ、私達の仲間にならないかい?」

「それって……」

「私達と同じ種族にならないかって事さ」

 これって進化と捉えて良いんだろうか。それともキャラ変?


「正直に言うと、試した事が無いんだよ。どんな姿になるか、能力もどうなるか分からない」

 へ?

「つまり現時点でプレイヤーには居ない種族なんだよ。もちろん現状維持でもいいさ。だけどね、プレイヤーにとって初というのは名誉な事だと思うよ」

「胡嬢さんの種族って……」


「妖怪さ」


 妖怪カメレオン女! なんだろう、すごく残念な響きだ。しかし現状では虫を食べるくらいしか出来ないんだよね

 他の動物プレイヤーはどうしてるんだろ……今考えてもどうしようも無いか。いっちょ名誉欲を満たしてもらおうかね


「受けて立つよ。妖怪上等だよ」

 

 ニヤリと笑う胡嬢さん。右手を掲げると指先から黒い煙が出てきた

 くるくると丸く回っている煙は、やがて1つの球になった


「ハイ、あーん」

 食えとおっしゃる。不安を越えて笑いが出ますわ


 パクリ


 あれ、ここどこ?


 真っ黒い空間、そこに緑色に光る線が幾つも走っている。やがて線はひとつに纏まり、ある一点に集約される

 その場所には一人の少女が居た


「あー! 来た来た。胡嬢ちゃんところの子ね♡」

「そうだけど、あなたは?」

 碧色の髪をして目の色が左右で違う。神秘さと幼さが同居してる感じがする


「統括最上位AI♡」

「はあっ!?」

 何それ! ゲームのシステムそのものって事? このゲームにも人間の運営は居るが、あらゆるシステムをAIが管理し同時多発的に処理できると聞いた事がある。その最上位ですと!


「他の名前もあるけどね。とりあえずアニーとでも呼んで♡」

「わたしは何故AIのお偉いさんの前に居るのでしょう?」

「おもしろそうだから♡」

……もう好きにして


 カメレオンになってからこれ迄、展開が急すぎないかい。面倒事は予測してたけど、ここまでとは


「それでねー、胡嬢ちゃんからの申請でプレイヤーに新しい種族を作る事になりました。その1号がモモちゃんね♡」

 ワアイ、ウレシイナー。ハハハー

「大丈夫? 付いて来てる? それでね不具合が出ると困るから、私が構成とサポートをしてあげる♡」

「アニーさん、それはつまりどういう事?」

「なーんにも心配しないで遊べば良いって事♡」

 少しは気が楽になったよ


「では、最終確認♡ プレイヤー、モモさん。あなたは妖怪になる事を受け入れますか?」


 はい/いいえ


 ここまで来たら、イエスしかないよ


「オッケー、じゃあ元の場所に戻すねー。願わくば幸福ならん事を……ね♡」

 


「お帰り~」

「胡嬢さん、なんちゅう場所に送るんですか!」

「いいじゃない。普通に遊んでたら絶対に会えない人だよ」

「はいはい。それで、もう妖怪になれたの?」

「見てごらん」

 自分の姿をプレビュー画面で確認する。身体が少し大きくなってる

 そして渦を巻く尻尾が……

「2本、生えてる!」

 どうやら無事に妖怪になれたようである。ステータスも上がってスキルも増えてた


「クックック、我ら妖怪族の仲間が増えたよ。この調子で暗黒街の覇者になるよ!」

 あー、それが本音かい。まー、がんばってね

 そんな事より、さっきから気になっているスキルがある


 【人化】


 これってあれだよね! 


 続きは次回の講釈で


 ─次回予告─

「まだまだ半人前です。人だけに」

 自分の力不足に悩むモモ

「忘れとったんかい!」


 次回【かえる師匠】

 皆様、お楽しみに~

 

 

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