映画2
「もう一つ迷った作品もあるんだけど、これは前にテレビでやってたCMの時点ですごくつまらなそうだったからやめた。この映画は予告も見ていないから何も知らない」
「それでこのタイトルか。しかも、PG12だもんなあ。刺激は強そうだな」
マジか、年齢規制がかかっていたことは気が付かまかった。だけどそれを気にするようなこともないし、R18というわけでもないから問題など生じるはずもない。
「私はこの映画面白そうだと思うよ。タイトルがそそるよね。この『愛と焦燥の女』。タイトルだけでぞくぞくするの」
「あ、あの荒川さん?」
荒川はなんだかあらぬ方向に行っているような気がいないでもない。これはどうするのが正解なのだろうか。
「ちょっとひーちゃん、落ち着いて。ごめん、二人とも。ひーちゃん、こういう少し危なそうな恋愛劇が大好きなの。それで琴線にかなう作品があると見境がなくなっちゃうの」
「荒川がここまで乱心するのは意外としか言えないからな、珍しいものが見られたということでいいんじゃないかな」
とりあえずそういうことにしておこう。そうじゃないと俺の身が持たない気がするんだ。ふと気になり三浦を見てみる。しかし反応は特にない。
「なんというか、意外だけど想像できた」
どうやら三浦は荒川のことをよく見ているのだろう。でも俺は荒川のおしとやかとでもいうのか、清純なイメージがかなり先行していたからそのギャップにかなり驚いている。
「さ、さてもうすぐ時間だし、何か買って、入ろうか」
「ああ、もうすぐゾクゾクできるのね。なんていう快感。想像しただけで私溶けちゃう」
「見る前から溶けるのは早いから溶けるのは見た後でたのむ」
今のところそれしか言うことができない。というか、こういう時どういうことを言えばよいのだろうか。誰か教えてほしいくらいだ。
それにしてもこの映画は俺が頑張って選んだ作品だから面白い作品であってくれよ頼むぞマジで!!
結論から言おう。この映画は当たりだった。そのおかげか、荒川は酔っぱらった人みたいになっている。顔は紅潮し、呂律が回っていない。映画一本見ただけでここまでになれるなんてすばらしい感性だと思う。俺もそのくらいの感性は欲しい。
「ああ、私はあんな作品を見てもよかったのかしら。すごく不安になってくりゅう…… 見る資格が私にはあったのかな」
「映画はお金さえ払えばだれでも見る資格が生まれるものだから! ホラ、ひーちゃんそんなところで力尽きないで」
美海が力の抜けている荒川の肩を持って、歩いていく。
「あたしもあそこまでひどくなるとはしらなかったな。何回かあいつと映画を観に行ったことはあるけど、こんなの今回が初めてだ」
三浦も半ば呆れている。そりゃそうだ。少し年齢規制の入っている恋愛映画で誰がここまでの状態になると予想できるだろうか。大多数の人は予想なんてできっこない。
どうにか移動して昼ご飯を食べるために駅近くのファミレスに入って注文をすると、荒川は落ち着いてきた。
「さてと、あの映画のどこがそんなによかったんだ。教えてほしいな」
俺は地雷ともなりかねないことを聞いている。しかし聞かずにもいられない。だって気になるから。これ以上の理由なんて必要かな。
「まず一つ目はタイトル。『愛と焦燥の女』ってもう最高。具体的には誰かに愛という感情を覚えて、それにたいして何か不都合なコト、もしくはつらいことがあってその愛がなかなかうまくいかないことがわかるの。これは憔悴となっていたらまた違った内容になって面白そうだけど」
「そ、そうなんだ」
すごい勢いで語ってくれる。
「それで、内容はその通り愛の物語。それも、かなりドロドロしていたじゃない。あれが最高なんだよね。自分と相手、そしてもう一人。関係者がこの3人だけじゃなくて親兄妹までもかかわってきて、さらに色沙汰だけのはずが、血までも出てくる。さらにそこに性別なんて関係ない。もうこれだけ要素を詰め込んだら普通は駄作になるんだけど、上手くまとめ垂れている。ここまで完成度の高い映画は久しぶりに見たわ。でも内容が内容だから見る人は選ぶかな」
「見る人を選ぶか。確かにそれはあるかもしれないな。ここにいるみんなはそうでもなさそうだけど」
刺激的な内容ではあったけど、俺も面白かったと思う。まあ、刺激的ではあったから体制のない人にはきついかもしれない。
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さて最近執筆の速度が著しく落ちております。そのため、更新頻度がまばらになっていますが、これからもよろしくお願いします。
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