映画1

「それでいいの見つかった?」


「見つかった。今使ってるのよりも随分と軽いんだ。でも反発もあるしクッション性能もいい。その分高いけど、たまにはさ」


 三浦は終始嬉しそうに話している。その気持ち俺にもわかるぞ。すごくいい靴を見つけたときは気分が高揚するのはさ。


「なら会計を済ませてしまおうか。まとめて買ったほうが面倒くさくないだろう」


「じゃ、これあたしの靴とお金な。あたしは先二人のところ行ってるから」


 三浦は俺にかごと靴の代金を渡して消えた。鳥がごとく早い動きだ。さすがテニス選手とでも言えばいいのか。


「結構高いな」


 サンダルのほうは前もって値札も見ていたから値段もわかっていたし、何よりそこまで高い代物ではなかったが、ランシューに関しては新作だからかいつもり高い気がした。それでも買うことには変わりないが。

 サンダルについては今履いている靴のこともあるから、履いて帰るということはしなかった。


「お待たせ~、まった?」


「いや私たちはそんなに待ってないよ。それよりも次はあっち!」


 美海は俺を無理やり引っ張っていく。アクセサリー、靴ときて次はどこにいくのか。ふくかな。服なら母さんと買い物に行ったときに随分と色々買ったし、あのバカ姉にも今後着ることもないであろうフリフリの服ももらった。つまり、服に関しては困っていない。


「おいもし服を買いに行くならそれは不要だぞ」


「いや次は何かを買いに行くわけじゃないの。映画を見たいなって思うの。これについては映画館で見る作品を決めようって前から話してたじゃん!」


 美海は嬉々として言う。確かにそんなことかなり前に言ったきがするけど、そんなことよく覚えていたなと言いたい。


「今日は美海たちに好きにされる約束をしたからどこにでもついていくさ」


「あたしは花崎がどんな映画に興味があるのか気になるんだよな。普段からドラマとかの話はしてたけど映画の話はなったく出さなかったからさ」


「あ、確かにそうかも。でも別にみていないというわけでもなさそうだよね。どんな映画を見るのかな。すごく楽しみ」


 俺の後ろで三浦と荒川が俺への期待とでもいうのか、あるいは興味を増幅させているようだ。物騒以外の何物でもない。わずかに冷汗を流しながらもどうにか映画館にたどり着いた。


「今、やっている映画で面白そうなものか」


 シリーズ物は避けたほうがいいだろうし、さてどうしたものかな。


「急に言われると迷っちゃうな。何がいいんだろ」


「君の好きな映画を選んでね」


 それが逆に怖んだよ。下手につまらない映画を選んだ日には今日、これから三人の目を見ることができないよ。それだけは絶対にないようにしないといけない。


「じゃチケット買ってくるよ」


 俺は三人にチケットを渡すまでのお楽しみと言って、お金を預かり、チケットを購入した。


「へえ、花崎君こういうジャンルもみるんだ。少し以外」


「そうでもないだろう。だれだって見るジャンルだしさ。でも、これを10分くらい頭を抱えて選んだと思うと面白く感じるからな」


 おい三浦そんな悲しいことをいわないでおくれ。これでも必死に考えたんだからさ。

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